みなさま、こんにちは。
今回のテーマは鼻血です。
人間にとって鼻血は頻繁に遭遇するものなので、鼻血が出てもすぐに疾患の可能性を考えることは少ないかと思います。
しかし、ワンちゃん・ネコちゃんが鼻血を出した時、僕たち獣医師は必ず疾患の存在を考えながら診察します。
今回は、ワンちゃん・ネコちゃんが鼻血を出した時にどんな病気が考えられるかを中心に解説していきます。
ワンちゃん・ネコちゃんの鼻血の原因
まず、鼻血が出る原因を大きく分類すると、
- 鼻腔内に問題がある
- 口腔内に問題がある
- その他
この3つに分けられます。
1のケースが最も遭遇したくないもので、鑑別していく病気としては次のようなものが挙げられます。
鼻腔内腫瘍
犬では腺癌、猫ではリンパ腫という腫瘍がよく発生します。
進行すると顔面の外貌が変化するので気づきやすいのですが、初期病変の段階だと外から見ていても分からないケースが多いです。
鼻血が出て鼻腔内を検査してみて発見されるケースもあります。
感染症(細菌、真菌、ウイルス、クリプトコッカスetc)
感染初期はくしゃみや鼻汁の増加がみられるが、長期化するにつれて炎症が重篤になり骨や周囲組織の破壊を起こすケースがあります。
鼻腔内腫瘍と見間違うほど組織破壊を起こす場合もあるので、感染の有無をしっかり調べて鑑別します。
異物(植物片や小さなオモチャ、吐物など)
食後、おもちゃで遊んだ後、散歩後など鼻腔内に異物が侵入してくしゃみや鼻水が止まらなくなるケースがあります。
多くは、この段階で鼻腔洗浄して摘出するのですが、まれに異物が取り残されたまま症状が治まってしまうケースがあります。
こうなると、異物の周囲で炎症が進行し強い症状が再発するとともに鼻出血を起こすケースがあります。
2のケース(口腔内に問題がある)の場合は、具体的に以下のように分類されます。
重度の歯周病、歯根膿瘍の鼻腔への波及
軽度から重度まで、歯周病を抱えている子は非常に多いです。
その中でも重症化した歯周病の場合、炎症や感染が周囲組織に波及するケースがあります。
鼻腔内に炎症や感染が波及すると、膿のような鼻汁が出たりくしゃみが増えたりすると同時に鼻出血を認めるケースがあります。
(ただし、これはいきなり鮮血が出るわけではなく、血液混じりの鼻汁が増えるイメージです。)
口腔腫瘍の鼻腔への浸潤
これは鼻の周囲の腫瘍全てで起こり得ます。
特に口腔腫瘍と眼の腫瘍は鼻に広がることが多いので注意深くチェックします。
鼻血が出るその他の原因は具体的に以下の通りです。
高血圧
腎疾患や心疾患を持っている子の場合は鑑別に入れる必要大です。
とくに、進行した高血圧症の場合、鼻血だけではなく網膜剥離や出血を起こすケースもあるので速やかに降圧剤使用を検討します。
凝固機能異常
出血が止まりにくい疾患を持っていると鼻血が頻繁に出ることがあります。
このケースでは鼻血だけでなく、全身の皮下や粘膜下での出血を認めることがあるので口腔粘膜や被毛の薄い部分の皮膚を丁寧に観察していきます。
いかがでしょうか。
人間にとって鼻血は止血して止まったらオッケーという位置づけかと思われます(僕自身もそう考えています)。
もちろん、ワンちゃんやネコちゃんも鼻をぶつけて鼻血を出すこともあります。
しかし、実は疾患を抱えていることのサインであるケースが多いです。
鼻血が出ているのをみた場合、とくに繰り返す場合は一度診察を受けてください。
文責:獣医師 小川