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みなさま、こんにちは。

今回は健康診断の重要性についてお話ししたいと思います。

人間も定期的に健康診断を行ない、病気の早期発見につながっていることは言うまでもないかと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんでも全く同じことが当てはまります。

明らかな症状を引き起こす病気の場合、飼い主さんが気づいて病院に連れてきてくれます。

しかし、症状がわかりにくい場合、気づかずに病気が進行しているケースがあります。

これをできるだけ見落とさずに拾い上げるために、定期的な健康診断をおすすめします。

では、健康診断でどのような項目をチェックするのかを解説します。

①血液検査

健康診断と聞いて最初に思い浮かぶのがこの血液検査ではないでしょうか。

内容は、全血球計算と生化学検査です。

身体検査と血液検査の結果に基づいて、その他の検査を組み合わせる必要があるかを判断していきます。

人間と同じく、血液検査をする多くの場合は絶食が必要です。

②尿検査

全血球計算と並んで、全身状態の把握に役立つのがこの尿検査です。

尿路疾患や腎機能の評価を正確に行うために必須の検査です。

事前にお渡しする検査キットで採尿していただく場合や、院内にて採尿を行うパターンがあります。

③胸腹部レントゲン検査

こちらも健康診断で受けられたことがある方が多いと思います。

特に、シニア期になったワンちゃん・ネコちゃんの場合、心臓疾患や腫瘍に遭遇する機会が増えます。

健康診断時に定期的に実施することで病変の早期発見に役立ちます。

④心臓エコー検査

ワンちゃん・ネコちゃん共通して心臓疾患を抱えている子が年々増えています。

身体検査時に心雑音が聴取された場合や、飼い主さんにお話しを伺い、心臓疾患を疑う場合は積極的に検査することをオススメします。

⑤その他の特殊な血液検査

心臓、腎臓の血液バイオマーカーやホルモン検査などがあります。

前述した血液検査や画像検査の結果、あるいは身体検査で疑いがある場合に検査をおすすめします。

※検査によっては結果が出るまでに数日かかるものや、別日に改めて実施する場合があります

これらに加え、最も大事なのが稟告聴取と身体検査です。

僕たちは検査結果を見るのではなく、動物を診るのが仕事です。

この最も重要な2点から開始し、必要な検査を組み合わせることで個々の状態を詳細に把握することに繋がるのです。

今回は健康診断の重要性についてお話しました。

健康診断を受けてみたい方、いつ受診すればいいかなど質問がございましたらスタッフまでお問い合わせください。

健康診断によって病気の早期発見ができる子が増えてくれることを願います。

(本文中の写真はすべてイメージ画像です)

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はノミ・マダニ駆除薬のタイプの違いについてお話したいと思います。

まず大前提として、タイプの違いによって製品の優劣があるわけではありません。

あくまでコンセプトが異なるだけで、駆除薬としての効果は同じです。

これを踏まえた上で、当院で扱っているノミ・マダニ駆除薬をタイプ別に紹介し、それぞれの特色を解説していきたいと思います。

スポットオン(滴下)タイプ

→動物が舐められない場所に薬剤を垂らし、薬剤が体表面に広がって作用するタイプ。

体表面で駆除・予防効果を発揮するので吸血というイベントを回避することが出来る

作用の持続期間はおよそ1ヶ月程度。

薬剤を滴下する日の前後1-2日はシャンプーを避ける必要がある。

まれに滴下部位を異常に気にしたり、皮膚に病変が発生するケースがある

②経口タイプ

→経口投与することで薬剤の血中濃度が上昇し、吸血されると駆除効果を発揮するタイプ。

経口投与なので、シャンプーのタイミングをずらす必要はなし

作用の持続時間は1ヶ月程度のものや3ヶ月程度のものがある。

吸血されることが必須なので節足動物咬傷性のアレルギーが発生する可能性がある

食物アレルギーの子の場合は基質にアレルゲンが含まれている場合、アレルギー症状が出る可能性がある。

現在、当院で使用している薬剤を分類するとこんな感じです。

ここからは僕の個人的な意見です。

獣医師間でも意見に差が生じるので、参考程度にしてください。

スポットオンタイプと経口タイプの両者で、当院ではスポットオンタイプを第一選択にしています。

理由は、吸血というイベントが発生することを避けたいからです。

製品のコンセプト上、スポットオンタイプは吸血させずに駆除することを狙ったもので、経口タイプは吸血させて駆除することを狙っています。

前述したように、駆除するという効果は同一なのですが、吸血されることで生じるアレルギー反応や媒介する疾患に罹患する可能性が少なからず存在します。

よって、どちらかを選択できる場面ではスポットオン製剤を使用しています。

ただし、次のようなケースでは経口薬を使用しています。

・滴下した部位をとても気にして舐めたり、擦り付けたりしてしまう。

・滴下部位の皮膚が赤くなったり、痒みが出てしまう。

・多頭飼育の場合、滴下部位を別の子が舐めてしまう。

・飼い主さんが製品の匂いを許容することができない。

実際にこれらの理由でスポットオン製剤から経口薬に変更し、現在も継続している子がいます。

今回はノミ・マダニ駆除薬のタイプとそれぞれの特色についてお話ししました。

冒頭でもお話しした通り、駆除効果に優劣はありません。

あくまで、製品のコンセプトが異なるだけです。

僕たち獣医師がコンセプトの違いを理解し、なぜその製品を使うのかを飼い主さんにきちんと伝えることが重要であると考えています。

人獣共通感染症の報告が増えているので、ノミ・マダニ駆除に関心を持たれている飼い主さんが増えています。

ノミ・マダニ予防をしたことがない方、やっているが今の方法に疑問がある方は一度獣医師に相談してみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫の乳腺腫瘍についてお話ししたいと思います。

猫の乳腺腫瘍は悪性の可能性が高い

まず第一に、猫の悪性腫瘍のうち発生率トップは乳がんです。

そして猫の乳腺部にできる腫瘍は9割以上が悪性です。

体表腫瘤についての記事でもお話ししたのですが、体の表面にできる腫瘤は飼い主さんが発見しやすいので診察する機会が多いです。

その中でも乳腺腫瘍はワンちゃん・ネコちゃんともに非常に多く遭遇します。

そんなポピュラーな腫瘍であるにもかかわらず、ネコちゃんの場合はほぼ悪性腫瘍なので悩ましい限りです。

猫の乳腺腫瘍について知っておくべきこと

猫の乳腺腫瘍と向き合う際に僕たちが重要視していること、そして飼い主さんにお伝えできることとして次のようなことが挙げられます。

①腫瘍のサイズが2cm以下で発見・治療できるかが重要
②早期の避妊手術によって乳がん発生のリスクが低下すること
③治療するのであれば片側乳腺全切除以上±抗がん剤が適用されること

①について

猫の乳腺腫瘍では、腫瘍のサイズが2cm以下と2cm以上では生存期間の中央値に大きな差があることが分かっています。

猫を触っていて乳腺部のしこりに気づいたら、なるべく早期に治療を開始することを進める理由はここにあります。

②について
避妊手術を実施するタイミングによって乳腺腫瘍発生のリスクがどれだけ軽減できるかが調べられています。

6ヶ月齡以前→91%低下
6ヶ月〜1歳齢→86%低下
1歳〜2歳→11%低下
2歳以上→避妊手術による効果なし

こんな感じです。
このデータに基づいて、僕たちは、特別な事情がなければ1歳までに避妊手術を行うことを強くおすすめしています。

③について
猫の乳腺はリンパ管ですべて繋がっているので切除する際は片側の全切除あるいは両側の全切除が必要になります。

これは、再発を防止するためにかならず必要な手技です。

切除範囲が大きくなるので飼い主さんがかわいそうと思われるケースが多いのですが、乳がんと戦うために必要な手術であることを十分に説明し治療にあたります。

また、腫瘍の広がりや病理組織検査の結果によっては術後に抗がん剤を用いた化学療法が適用されるケースもあります。

今回お話しした猫の乳腺腫瘍は僕たちも遭遇したくない疾患です。

猫の乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が大切

猫を乳がんから守るために重要なのはとにかく早期発見・早期治療です。

体表、とくに乳腺部を日頃からよく触り、しこりや違和感に気づいたら速やかに獣医師に相談してください。

乳腺部を触る時のポイントは次の通りです。

・猫を仰向けにして触る
・脇の下から脚の付け根まで広い範囲を触る
・表面を撫でるだけでなく、つまむように触る
・嫌がったら無理せずいったん休憩する

このセルフチェックを猫とのコミュニケーションにぜひ取り入れてみてください。
早期治療によって救われる猫が増えてくれることを願います。

文責 獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は腫瘍、とくに体表面にできる腫瘍のお話をしたいと思います。

体表面にできる腫瘤(しこり)は飼い主さんが最も気付きやすい病変の一つです。
実際に診察をしていても、

『少し前からしこりがあるんです。これ何ですか?』

この質問をよく耳にします。

ワンちゃん、ネコちゃんを普段からよく触り観察してらっしゃる飼い主さんは、僕たちが驚くほど小さな腫瘤もみつけて教えてくれます。

頭が下がります。

では、『これ何ですか?』についてお話ししていきます。

結論から申し上げると、その場で『これは〇〇です。』と断定することは不可能です

僕たちは飼い主さんが気づいた、もしくは診察中に体表腫瘤を見つけた場合、次のような思考回路で診断を進めていきます。

①腫瘤がいつから存在していたか

②腫瘤がどこに存在しているか

③腫瘤に気づいてから現在まででサイズや数の変化があったか

④腫瘤はどんな細胞で構成されているか

①〜③までについて飼い主さんからお話をお伺いし、どんな病変の可能性があるかを考えます。

そして、悪性の病変を疑う際に④へ進みます。

④を調べる際、『生検』という手段を用います。

生検とは、なんらかの方法で病変を構成する細胞や組織を採取し調べる方法です。

特に、体表腫瘤の場合は細い針で病変を刺し細胞を集める針生検、そして集めてきた細胞を評価する細胞診という診断方法をよく用います。

細胞診の結果を基に、悪性腫瘍の可能性が高い場合は腫瘍自体の性状、局所での広がり、遠隔転移の有無、全身状態の評価へと進み治療方法を検討します。

このお話を踏まえた上で、実際に診察室でどのような流れで進むかを記してみたいと思います。

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「うちのワンちゃんの背中にしこりがあるんです。」

『このしこり、いつ気づかれました?』

「2週間くらい前に触っていたら気付きました。」

『なるほど。では、2週間前に比べて大きくなっていたり、掻いたりなど変化はありますか?』

「とくに自分では気にしていなくて、大きさも変わっていないように思います。」

『分かりました。今のところしこりが急激に大きくなったり、本人が気にしたりという変化はなさそうですね。
このしこりがどんな細胞で出来ているかを調べるには細い針で刺して細胞を集める細胞診という検査法が必要になります。
この検査を行なって、その結果を基に今後の治療方針を検討していきましょうか。』

「お願いします。」

こんな感じです。
もちろん、この段階で細胞診を行わないケースもあれば、細胞診ではなく組織生検という手法を提示することもあります。

いずれにしても、もっとも大切なことは、しこりに気づいたらなるべく早く獣医師に相談していただきたいということです。

体表腫瘍の中には早期発見・早期治療することによって治療成績が格段に良くなるものも含まれています。

そうしたものをなるべく早く治療する、あるいは様子を見て大きくしてしまわないことが重要になってきます。

今回は腫瘍の中でも飼い主さんが気付きやすい体表腫瘤のお話をしました。

皆さんもワンちゃん、ネコちゃんを触ってしこりや病変にお気づきの方は一度ご相談してください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫の下顎に発生する痤瘡(いわゆる猫ニキビ)についてのお話をします。

猫ニキビについて

ネコちゃんの飼い主さんならご存知かと思いますが、猫は下顎を様々な場所に擦り付ける習性があります。
これは下顎の皮脂腺から出る分泌物を付着させることでマーキングを行なっていると考えられています。
猫ニキビは、この皮脂腺が詰まったり炎症を起こすことで発生します。
では、どのような症状を起こすのでしょうか。

初期の段階では、下顎に黒いツブツブが付着するようになります。
これは過剰に分泌された皮脂と毛が混じった物です。

次に脱毛や皮膚の赤みといった見た目の変化を起こします。
この段階で痒みや違和感を感じ、掻いたり擦ったりする動作が目立つようになります。
さらに進行すると細菌感染を生じ膿が出てくることもあります。

次に、猫ニキビを起こす原因はなんでしょうか。

その① グルーミング不足

猫は全身を自分で舐めて毛繕いをする動物です。しかし、顎の下は舐めることができず、十分なグルーミングが行なえていないケースがあります。


対策:コットンにお湯を染み込ませて優しく顎の下を拭いてあげましょう。ある程度拭けたら、毛に付着した水分を拭き取り終了です。

その② 食器

食器がプラスチック製の場合、表面に傷ができて凹凸が生じます。ここで細菌やカビが増殖し、接触する顎の下にニキビを発生させるケースがあります。また、食器の素材によってはアレルギー反応を起こしているケースもあります。
対策:食器をガラスや陶器製に変更し、こまめに洗浄する。

その③ストレス

引っ越しや家の周りの騒音、家具の配置換え、新しい猫を迎えたなど生活環境が変わることで著しいストレスを感じる子がいます。
ストレスによって引き起こされる病気は多岐に渡りますが、猫ニキビを含む皮膚疾患も該当します。

【対策】

まずはストレスの原因となっているものを探してみましょう。そして、それが改善できるものならば可能な限り改善してストレスを減らす工夫をしてみてください。猫は自らを取り巻く環境の些細な変化も鋭敏に感じ取ってしまいます。見落としがないかゆっくり探してみてください。

その他

ニキビダニ症(毛包虫症)が原因で炎症を起こし、猫ニキビが発生するケースがあります。このニキビダニという寄生虫は健康な猫の皮膚にも存在しているのですが、免疫の低下などの条件が重なると爆発的に増殖します。よって、ニキビダニ症の発生を確認した場合はそれを引き起こす基礎疾患の存在も考える必要があります。

【対策】

ニキビダニ症に対しては駆虫薬を使用。
基礎疾患については症例ごとに適切な検査を進めます。

最後に、飼い主さんが行なえるケアについて解説します。

原因の項目でも触れたのですが、顎の下はグルーミング不足が起きやすい場所です。

この部分をお湯で濡らしたコットンで優しく拭いてあげてください。
この際、ゴシゴシ擦ったり歯ブラシを使用するのは控えましょう
また、人間用のニキビの外用薬を塗布するのもやめてください

いかがでしょうか。
僕たちが診察していて、よく相談されるのが
「顎の下に黒いブツブツがあるんだけど・・・これなに?」
です。
つまり、多くの飼い主さんは猫ニキビの初期段階で病気を見つけているのです。

素晴らしい!

下顎の痤瘡はひどくなると痛みが強くなり、治るのにも時間がかかるようになります。

早期発見に加え、日頃のケアを導入することで猫ニキビで苦しむ猫ちゃんが減ってくれることを願います。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はご自宅での写真・動画撮影を強くオススメします!というお話をします。

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気になる症状があるときは、写真・動画撮影がおすすめ

普段診察する際に僕たちは問診から行ないます。

そして、なにか症状がある場合、具体的にどんな様子だったかをお伺いします。

ワンちゃん、ネコちゃんの症状を言葉だけで表すのは難しい

その際、飼い主さんはとても頑張って説明してくださるのですが、言葉で表現するのが難しいケースが多いです。

・例
昨日、突然発作を起こしました。
→前兆はあったか、持続時間、姿勢、意識の有無、初発か再発か、終了後の様子はどうかetc…

このようにその時の状況を詳しく聴取して診断を進めていくのですが、これをすべて客観的に表現するのはとても困難です。

特に初発の場合、飼い主さんもパニックになるので余計に客観的な評価ができなくなります。

そこで、オススメするのが写真・動画の撮影です。

ご自宅では手の届く場所にスマートフォンがあるはずなので、撮影すること自体はハードルの高い行為でないと考えています。

ここで問題になるのが、冷静に撮影ができるのか、ということです。

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そもそも、気になる症状がごく短時間である場合や、いつ発生するかわからない場合は撮影すること自体が困難です。

また、目の前でワンちゃん・ネコちゃんが苦しそうにしているのに動画を撮るという行動にネガティブな印象を持たれる飼い主さんもいらっしゃいます。

ワンちゃん、ネコちゃんの症状を撮影すると、診察に役立つ

しかし、撮影ができた場合は診断を進める上で重要な情報が一気に増えるため、可能であるならば撮影していただくことを僕は飼い主さんに強くすすめています。

また、動画だけでなく写真撮影もおすすめします。

特に、皮膚疾患の症状や病変の分布下痢や嘔吐をした際の吐物や糞便の性状など、これらも写真を撮っていただけると診断を進める際にとても役立ちます。

さらに、写真を撮っておくと経時的な変化を認識しやすくなります。

僕も普段の診察の際に頻繁に病院用スマホで写真を撮っています。

カルテに病変の性状や分布を記載するのと同時に写真を撮って残しておくことで治療反応を客観的に評価できます。

今回はご自宅での写真・動画撮影についてお話ししました。

もちろん、撮影できなければ診断が不可能というわけではないので、あくまで可能ならば撮影してくださいというお願いです。

実際にここ数年で、ご自宅での様子を撮影してくださる飼い主さんが増えました。

なかには僕がお願いする前に撮影してくださる飼い主さんもいらっしゃいます。
大変助かっております。

ワンちゃん・ネコちゃんは自分の症状を訴えられないので飼い主さんにお話しを聞いて診断を進めていきます。

動画や写真撮影が診断を進める上で非常に有用であることを認識していただき、病気の早期発見や早期治療に役立ってくれることを願います。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。
本日はワンちゃんの嘔吐、とくに空腹時に見られる嘔吐についてお話ししたいと思います。

「うちの子、たまに朝ご飯前に黄色い泡を吐くんです。でもご飯も食べるし元気なんです。」

とても頻繁に相談を受けます。

ヒトは生理現象としての嘔吐が無いので、嘔吐=病気というイメージが強いです。
しかし、ワンちゃんは嘔吐が生理現象に含まれる動物です。
とくにこの空腹時に起こる嘔吐はどんな子でも発生しうる現象です。

犬の嘔吐はなぜ起こるの?

そこで、今回は空腹時に嘔吐が起こるメカニズムと対策について、さらに嘔吐を引き起こす他の病気との鑑別について解説していきます。

犬の嘔吐の黄色い泡は胃酸と胆汁

まずは、この黄色い泡はそもそもなんでしょう。
これは胃酸と胆汁が混ざり合ったものです。

胆汁とは肝臓で生成されるアルカリ性の消化液で胆嚢という臓器に貯められます。
そして、胆嚢が収縮することで十二指腸に分泌され消化が進みます。

空腹時に胆汁が分泌されてしまうと、一部が胃に逆流し酸性の液体である胃酸と混ざってしまいます。

この刺激により嘔吐が誘発され、黄色い胆汁と無色の胃酸が混じり合った黄色い泡を吐き出します。
つまり、酸性とアルカリ性の液体が混ざってしまうために起こる反応なので、吐いた後は何事もなかったかのようにご飯を食べることができます。

空腹時間の短縮が嘔吐予防のコツ

では次に空腹時の嘔吐を予防するためのポイントを解説します。
考え方はシンプルで、空腹時間をなるべく短縮することです。

現在、1日2食で嘔吐が発生するのなら1日3食にしたり間食を挟んでみたりして嘔吐の発生頻度が減らせるか試してみます。

また、朝ご飯の直前に吐くのなら、夜寝る前に少量のご飯を与えるのも効果的です。
ただし、1日のトータル摂取カロリーをあらかじめ決め、それを分割しないと肥満になってしまうので注意してください

空腹時以外の犬の嘔吐の原因は?

次に、空腹時の嘔吐なのか他の原因で吐いているのかの鑑別についてお話しします。

嘔吐は様々なメカニズムで引き起こされます。

その中には一刻も早く治療介入をしないと命に関わる病気も含まれます。
(異物誤食、胃拡張捻転症候群など)

前述したように、空腹時に黄色い泡を吐くが元気でその後食事をとっているケースは胆汁性嘔吐を疑うので基本的に無治療で経過観察します。

放置は危険!こんな犬の嘔吐時はすぐに受診を

しかし、次のような症状の場合は治療介入が必要な病気を疑うので、必ず早めに動物病院を受診するようにしてください。

・吐いた後元気がなく食欲がない

・吐いたものに血液が混ざっている

・消化しきれていないフードを吐く

・下痢を伴っている

・何回も吐き、吐くものがなくなっても嘔吐の仕草が続く

・異物の誤食に心当たりがある

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これらに該当する場合は、嘔吐の原因を診断し適切な治療を行なう必要があります。

いかがでしょうか。
空腹時に嘔吐が発生する現象をご存知の飼い主さんは多いかと思います。
ただし、嘔吐を起こす原因は多岐に渡ります。

「この子、よく吐くしいつものやつでしょ。」

これで様子を見てしまうと、取り返しのつかないことになる場合があります。

ワンちゃんが吐いた時、判断に困るようでしたら早めの受診をおすすめします。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。
今回は老齢犬の認知機能障害についてお話ししようと思います。
みなさんは認知症と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか?

・徘徊して迷子になる
・食事をした直後なのに食事を要求する
・粗相をしてしまう
・よく知っている人を認識できない

などが挙がるかと思います。

実は、ワンちゃんも認知機能障害を発症し上記のような症状を引き起こすことがあります。
しかし、老齢犬は認知機能障害以外にもさまざまな疾患を引き起こす可能性があるため、ご自宅で見ているだけでは判断に困るケースが多いかと思います。
そこで、認知機能障害を診断するポイント、さらに治療する際に僕が重要視しているポイントを挙げて解説していきます。

僕たちが認知機能障害を診断する際は、前述の臨床症状や行動の変化を聴取しその他の疾患との鑑別を行なっていきます。
その際に、次のような診断基準方法を用いることが多いです。

犬痴呆の診断基準法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※犬痴呆の診断基準 内野式100点法

この診断基準を元に認知機能障害が疑わしいのか、他の疾患の鑑別を進めるべきなのか判断していきます。

次に、治療についてです。
現在のところ、残念ながら認知機能障害に対する決定的な治療法はありません。
よって、治療の目的は病態の進行をなるべく遅らせることと、ワンちゃんと飼い主さんのQOLを維持・向上させることになります。
そのために、以下のような方法を組み合わせ、何を行なっていくかを飼い主さんと相談して決定していきます。

①行動療法
僕はこれが最も重要だと考えており、飼い主さんに最も取り組んで欲しい項目です。
実際に行うことは次の3つから始めます。

⑴叱責しない
前述したように、認知機能障害のワンちゃんは徘徊したり、不適切な排尿をしてしまいます。
ただし、これはわざと行なっているわけではありません。
つまり、それに対し叱責しても行動が改善されることはなく逆にストレスを与えることで認知機能障害の症状がより強く現れる悪循環に陥ります。
まずは、決して叱責しないことが重要です。

⑵生活環境の改善
認知機能障害のワンちゃんは徘徊したり、同じところをぐるぐる旋回したりという行動を示す場合があります。
その際に、転んだり目線の高さにあるものにぶつかるようならば滑り止めや緩衝材を使ってあげてください。
また、頻繁に家具の配置移動を行うとワンちゃんが混乱し不安が増える可能性があるため、模様替えやトイレの位置移動はなるべく控えてあげてください。
最後に、きちんとトイレができた時などは目一杯褒めてあげてください
同時にご褒美としてオヤツを与えるのも効果的です。

⑶心身への刺激を与える
体も精神も使わないと、ますます動かなくなってしまいます
体への刺激は、お散歩にいくのが好きな子ならば無理のない範囲でお散歩をさせてあげてください。
頭(脳)への刺激はパズルフィーダーや知育トイなどのツールを利用すると良いです。
特にオヤツを用いたパズルフィーダーは自作することも可能で、飼い主さんと触れ合う機会にもなるので積極的に導入を勧めています。

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KONG®︎

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Busy Buddy®︎のTwist’n Treat™️およびDumbbell

 

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ペットボトルを利用したパズルフィーダー

 

※緑書房『犬と猫の神経病学各論編』より引用

 

②栄養療法
認知機能障害のわんちゃんに対して次のような栄養素を取り入れることが重要視されています。
・ビタミンE
・ビタミンC
・セレニウム
・L-カルニチン
・ω3不飽和脂肪酸(DHAやEPA)
これらが組み込まれたフードやサプリメントの使用を組み合わせてコントロールする場合も多いです。
フードやサプリメント使用に関しては獣医師とご相談ください。

③薬剤療法
繰り返しになりますが、認知機能障害の根本的な治療方法は未だに確立されていません。
よって、薬物療法の目的は問題行動によって飼い主さんとワンちゃんのQOLが低下すると判断した際に、それを維持・向上することに限定されます。
こちらに関しては、行動療法や栄養療法をすでに実施しているが改善が認められない時に考慮する方法です。
僕は、初めから薬物療法のみを行うのではなく、前述した2つを先に実施あるいは同時に行なうことを飼い主さんにお話ししています。

いかがでしょうか。
認知機能障害は治療という側面とケアという側面を併せ持った病気です。
時に根気よく行動療法や環境の改善を続け、ゆっくりワンちゃんと向き合う必要があります。
認知機能障害の治療では、飼い主さんとチームになり、飼い主さんが治療を担う一員であることを認識していただくのがとても重要だと考えています。

今回のお話が、認知機能障害のワンちゃんとすでに向き合っている飼い主さんや、将来的にケアが必要となる方々にとって参考になれば幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。
今回はダニが媒介する病気のうちヒトにもうつる病気について解説したいと思います。

ダニは何処にでも生息しており、とくにお散歩で草むらや茂みの中に入るワンちゃんは付着・吸血されるリスクが非常に高いです
ダニに吸血されると、ワンちゃん自体が被害を受けるだけでなく、ヒトの生活環境にダニが入り込むことでヒトの健康被害が発生する可能性があるのです。
最近、ニュースなどでSFTSの話題がたびたび取り上げられ、質問を頂く機会が増えました。
そこで、SFTSも含めてダニが媒介する病気を紹介し、ダニ予防の重要性を改めてお伝えできれば、と考えています。
なお、今回のお話をするにあたり、厚生労働省および国立感染症研究所のホームページを参考にさせていただきましたので、興味がおありの方はそちらも併せてチェックしてみてください。

厚生労働省ホームページ

国立感染症研究所ホームページ

 

①重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
ブニヤウイルス科フレボウイルス属の重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)ウイルスによる感染症である。
主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。
潜伏期間は6~14日。
発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主徴とし、時に、頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴う。
血液所見では、血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少(4000/mm3未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。
致死率は10~30%程度である。

②日本紅斑熱
日本紅斑熱リケッチアを保有するマダニ(キチマダニ、フタトゲチマダニなど)に刺されることで感染する。
刺されてから2~8日頃から頭痛、全身倦怠感、高熱などを伴って発症する。
刺し口を見つけることは診断の助けとなる。
高熱とほぼ同時に紅色の斑丘疹が手足など末梢部から求心性に多発する。
リンパ節腫脹はあまりみられない。
CRP陽性、白血球減少、血小板減少、肝機能異常などはつつが虫病と同様であるが、つつが虫病に比べDICなど重症化しやすい。

③ツツガムシ病
つつが虫病リケッチアを保有するツツガムシに刺されて5~14日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。
体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達する。
刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多い。
刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹する。
第3~4病日より不定型の発疹が出現するが、発疹は顔面、体幹に多く四肢には少ない。テトラサイクリン系の有効な抗菌薬による治療が適切に行われると劇的に症状の改善がみられる。
重症になると肺炎や脳炎症状を来す。北海道、沖縄など一部の地域を除いて全国で発生がみられる。
発生時期は春~初夏及び晩秋から冬であるが、媒介ツツガムシの生息地域によって異なる。

④ダニ媒介脳炎
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するダニ媒介脳炎ウイルスによる感染症であり、中央ヨーロッパダニ媒介脳炎とロシア春夏脳炎の2型に分けられる。
自然界ではマダニとげっ歯類との間に感染環が維持されているが、マダニでは経卵伝播もありうる。
ヒトへの感染は主にマダニの刺咬によるが、ヤギの乳の飲用によることもある。
潜伏期間は通常7~14日である。
中央ヨーロッパ型では、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状が出現し、2~4日間続く。
症例の三分の一では、その後数日経って第II期に入り、髄膜脳炎を生じて痙攣、眩暈、知覚異常などを呈する。
致死率は1~2%であるが、神経学的後遺症が10~20%にみられる。
ロシア春夏脳炎では、突然に高度の頭痛、発熱、悪心、羞明などで発症し、その後順調に回復する例もあるが、他では髄膜脳炎に進展し、項部硬直、痙攣、精神症状、頚部や上肢の弛緩性麻痺などがみられる。
致死率は20%に上り、生残者の30~40%では神経学的後遺症を来たす。

⑤ライム病
マダニ(Ixodes属)刺咬により媒介されるスピロヘータ(ライム病ボレリア;Borrelia burgdorferi sensu lato)感染症である。
感染初期(stageI)には、マダニ刺咬部を中心として限局性に特徴的な遊走性紅斑を呈することが多い。
随伴症状として、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、全身倦怠感などのインフルエンザ様症状を伴うこともある。
紅斑の出現期間は数日から数週間といわれ、形状は環状紅斑又は均一性紅斑がほとんどである。
播種期(stageII)には、体内循環を介して病原体が全身性に拡散する。
これに伴い、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られる。
感染から数か月ないし数年を経て、慢性期(stageIII)に移行する。
患者は播種期の症状に加えて、重度の皮膚症状、関節炎などを示すといわれる。
本邦では、慢性期に移行したとみられる症例は現在のところ報告されていない。
症状としては、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎などがあげられる。

⑥ロッキー山紅斑熱
紅斑熱群リケッチアに属するロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)による感染症である。
自然界ではダニ、げっ歯類、大動物(イヌなど)の間で感染環が維持されている。
ヒトへの感染はダニの刺咬による。
潜伏期間は3~12日であり、頭痛、全身倦怠感、高熱などで発症する。
通常、つつが虫病などでみられるような刺し口は生じない。
高熱とほぼ同時に、紅色の斑丘疹が手足などの末梢部から求心性に多発し、部位によっては点状出血を伴う。
ときにリンパ節腫脹がみられる。
その後、中枢神経系症状、不整脈、乏尿、ショックなどの合併症を呈する。
診断・治療の遅れ、高齢者、発疹がみられない、ダニの刺咬歴がある、冬季の発症などでは、致死率が高い。

恐ろしいですね。
太字の病気は国内での発生が報告されているものです。
特にSFTSと日本紅斑熱は近年、報告件数が増加しています

冒頭でもお話しした通り、ダニ予防を行なうことで、これらの病気に罹患するリスクを軽減することができます。
予防薬には様々なタイプがあるので、一度獣医師に相談してみてください。

今回のお話が、病気の理解と予防の重要性を認識する助けになれば幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。
今回は犬アトピー性皮膚炎についての解説を行なっていきます。
そもそも、犬アトピー性皮膚炎とはどんな病気でしょう?

犬アトピー性皮膚炎は室内生息のダニや花粉などの環境中のアレルゲン(これを抗原と呼びます)に対して過剰に免疫反応が起こることで引き起こされる病気です。
また、遺伝子が関与していることも明らかになってきており、発症しやすい犬種も知られています。
日本では、柴犬・フレンチブルドッグ・シーズー・トイプードル・ウエストハイランドホワイトテリアなどが好発犬種です。
比較的若いうちから発症し、年齢を重ねるごとに一年中症状が続くようになるケースが多いです。
症状はズバリ『痒み』です。

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※痒みが出やすい部位

犬のかゆみ.comより引用

それに続いて皮膚炎や2次的な感染症を引き起こし良くなったり悪くなったりを繰り返します。
つまり、治る病気ではなくコントロールして上手に付き合っていく体質と捉えていただくと良いかもしれません。

では、どのようにコントロールをしていけば良いのでしょうか?
ポイントは2つです。
1つは適切なかゆみ止めの選択
もう一つはスキンケアの併用です。

まず、かゆみ止めの選択ですが、これが正解!というものではなく現在の状態に応じて選択していき、状況に応じて変えていく必要があると考えています。
また、内服薬以外にも外用剤や注射薬もあるので薬を飲ませるのが大変な子や、患部を触らせてくれない子に対する治療の選択肢も用意することができます。
(実際に注射薬が日本で発売になってとても助かっています)

つぎにスキンケアの重要性です。

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犬のかゆみ.comより引用

僕は飼い主さんに皮膚の役割をお話しするときに、皮膚は水分を保持するためのラップみたいなものです、という例えを用います。
このラップがきれいに張られていると水分が保持される、表面からの感染が抑えられるといった働きがきちんと行われます。
では、アトピー性皮膚炎の子の皮膚はどのような状況かというと、このラップに穴が空いている状態です。
そうすると、水分の保持が出来ない、感染症を引き起こしやすくなる、痒いので掻いて更に穴が広がっていくという悪循環が続きます。
つまり、かゆみ止めでかゆみだけ止めても、皮膚の環境が悪いままだとコントロールがうまくいかないケースが多いのです。
これがスキンケアが重要である理由です。
スキンケアの方法はシャンプーや保湿剤、脂肪酸の塗布やサプリメントなどさまざまなものがあり、これもその子の状態に応じて必要なものを組み合わせていきます。

いかがでしょうか。
冒頭でもお話しした通り、アトピー性皮膚炎は上手に付き合っていく体質です。
ですので、治療は生涯にわたって必要になるケースが多いです。
よって、治療に携わるチームのメインとなるのはその子と過ごす時間が最も長い方、つまり飼い主さんなのです。
僕たち獣医師は病院に来てもらった際に診察して、コントロールが取れているかチェックする役割に過ぎません。
あくまで、実際に手を動かして頑張ってもらっているのは飼い主さんです。
飼い主さんのモチベーションを保つためにも、犬アトピー性皮膚炎という病気について、またそのコントロールに重要なポイントについてお話しさせていただきました。

痒みを抱えている子の飼い主さん、またはすでに治療を行なっているけれどコントロールが困難な子の飼い主さんは一度診察に来ていただきお話しを聞かせていただければ幸いです。

文責:獣医師 小川