blog

みなさま、こんにちは。

今回はマラセチア皮膚炎についてお話したいと思います。

マラセチア皮膚炎ってどんな病気?

まず、マラセチアって聞いたことありますか?

過去にマラセチア皮膚炎の治療を行なったり、皮膚のケアに関心を持たれている飼い主さんはご存知かもしれません。

マラセチアは小型の出芽酵母で、ヒトや動物の皮膚・外耳道表面に生息する微生物です。

このマラセチアのうち、犬の皮膚炎に関与しているのは『M.pachydermatis』という種類で、普段は皮膚炎を誘発することはありません。

ところが、異常に増殖すると、マラセチア本体や代謝産物が皮膚炎を起こしたり、マラセチアに対するアレルギー性皮膚炎を起こすことが知られています。

身体のいろいろな部分が赤く・痒くなる病気

マラセチア皮膚炎の好発部位は、外耳、口唇、鼻、肢、趾間、頸の腹側、腋窩、内股、会陰部で、主な症状は紅斑と掻痒、つまり赤くなって痒がります。

この病変の分布と症状は非特異的で、とくにアトピー性皮膚炎と類似します。

また、マラセチア皮膚炎を起こしている子は基礎疾患としてアトピー性皮膚炎を有していることが多いので、しっかりと診断をつける必要があります。

マラセチア皮膚炎はどうやって分かるの?

続いて、診断についてです。

前述した症状を認めた場合、該当する部位の皮膚をテープで採取したり、スライドグラスを押し付けたりして細胞診を行ないます。

この標本中にマラセチアの増殖が観察できた場合、マラセチア性皮膚炎を強く疑います。

また前述したように、マラセチアが少数でも菌体に対するアレルギー反応によって皮膚炎や痒みを起こすケースもあるので、検出されるマラセチアの量にかかわらず、症状と照らし合わせて診断を進めていきます。

マラセチア皮膚炎はどうやって治療するの?

マラセチア皮膚炎を診断したら、治療方法を考えていきます。

内服薬とシャンプーでの治療が一般的

主に用いるのは抗真菌剤の内服と、抗真菌剤が含まれるシャンプー製剤です。

どちらを使用するか、あるいは併用するかは症例によって適用を考えるのですが、シャンプーの適用しにくい目の周り等に症状が出ている場合やシャンプー療法が実施困難な場合は内服から入ることが多いです。

また、マラセチア皮膚炎は単独で発生するケースよりもアトピー性皮膚炎等の基礎疾患に合併して生じることが多いので、基礎疾患の治療・コントロールを同時に行うことが重要です。

治療効果の判断は、初診時に行なった細胞診を定期的に実施し、症状とマラセチア検出の有無を評価していきます。

症状が消失し、マラセチアの量が通常に戻る、またはゼロになったら内服は休止し、シャンプーは間隔をあけるか別のシャンプーに切り替えていきます。

シャンプー切り替えに際してのポイントですが、マラセチアは皮脂を餌にしているので、元々皮脂の分泌が多い子の場合、マラセチアが増殖しやすくなります。

よって、脂を除去する能力の高いシャンプーを使用するか、複数回洗って余計な皮脂を除去できるようにします。

ただし、洗い過ぎには注意しましょう。

マラセチア皮膚炎の急性期では2-3日に1回のシャンプーを指示しますが、急性期を抜けた後は2-4週間に1回まで間隔をあけます。

ずっと高頻度でシャンプーを実施していると体にとって必要な皮脂も除去してしまい、かえって皮膚の環境を破壊してしまいます。

いかがでしょうか。

今回は、マラセチア皮膚炎のお話をしました。

本文中でも何度か触れていますが、マラセチア皮膚炎は基礎疾患に合併して発生しているケースが非常に多い病気です。

よって、マラセチア皮膚炎に対する治療だけではなく、基礎疾患の診断と治療も同時に進めていくことの重要性が分かっていただけると幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は痒みの評価の仕方について解説したいと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんに表れるかゆみ

これからの季節、痒みを訴える子たちの診察をする機会が増えてきます。

また、季節を問わず痒みに悩まされている子たちもたくさんいます。

この『痒み』という症状、頻繁に遭遇するにもかかわらず実は、評価するのがとても困難なのです。

つまり、『どれくらい痒いのか』が客観的に評価しにくい、ということです。

痒みは客観的に判断しづらい?

実際に痒みを抱えている子の診察時に、次のような状況に陥ります。

「先生、うちの子、少し前から体が痒そうなんです。」

『特に、どこを痒がっていますか?』

「前肢の先と脇の下、内股を痒がります。」

『痒がり始める前に食事や生活環境の変化はありましたか?』

「特にないと思います。」

「分かりました。では、今どのくらい痒いですか?』

「えっと・・・」

『・・・』

こんな感じです。

途中まではスムーズに聞き取りができるのですが、痒みの評価になると急にブレーキがかかってしまいます。

これは痒みという症状が、客観的に表現するには漠然としているからなのですが、評価基準がないと飼い主さんも獣医師も困ってしまいます。

痒みの評価基準PVAS

そこで、痒みの評価基準として僕たちはPVASスコアというものを使用します。

PVAS(Pruritus Visual Analog Scale)は10cmの線を引き、痒みのスコアが何cmのところにあるかを差してもらうという評価方法です。

こんな感じです。

この評価方法のメリットは飼い主さんが直感的に決めていただけるので分かりやすい、という点です。

さらに、この方法は痒みを継続治療していく際に真価を発揮します。

すなわち、治療効果の評価が文字通り、目に見えて分かるのです。

治療開始前にPVASスコアが8だった子が、治療開始後に4になっていたら治療効果が出ていることがはっきりと認識できます。

痒みの治療については、痒みを0にすることは困難なので、治療開始前の目標設定をする際にもPVASスコアは飼い主さんの理解を深めるためにとても役立ちます。

いかがでしょうか。

今回は痒みの評価についてのお話をしました。

痒みを抱えている子は少なくありませんが、どれくらい痒いのか、また治療によってどの程度軽減されたのかを本人が話してくれないので評価するのが最も難しいのです。

今回お話ししたのは痒みについてなのですが、VASという評価方法は痛みや不快感の評価にも用いられる方法です。

言葉を話すことができない動物の置かれている状況を少しでも客観的に評価する方法があることをみなさんに知っていただけると幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は心臓の検査についてのお話をしていきます。

ワンちゃん・ネコちゃんの心臓疾患

ワンちゃん・ネコちゃんいずれにおいても心臓疾患は決してめずらしいものではありません。

とくに小型犬の中高齢以降では遭遇する機会がぐっと増えます。

一口に心臓疾患といってもさまざまな病気があるのですが、それらを発見するために僕たちが実施している検査、そして問診時に気をつけて聴取しているポイントなどを挙げて解説していきます。

心臓疾患の症状は?

まず、心臓疾患を抱えている動物はどのような症状を示すのでしょうか。

全てのケースで重度の発作やうっ血性心不全による呼吸困難がいきなり起こるわけではありません。

むしろ、気づかないうちに進行しているケースが大部分を占めている印象があります。

自宅でとくに気をつけて欲しい症状として次のようなものが挙げられます。

・運動不耐性

・咳

・食欲・活力低下

このなかで運動不耐性が最もわかりにくいのですが、これが見抜けるかどうかで早期発見ができるかどうかが左右される大事な症状です。

実はその症状、加齢だけではなく心臓疾患かも?

運動不耐性とは、以前は問題なくできていた動作(散歩、飼い主さんを出迎える、ご飯の時間になったら走ってくるなど)をしなくなる、というものです。

安静時は全く変わらず、このような動作をしなくなるだけなので、

『年を取ったからだね。』

このセリフで見過ごされていることが非常に多い印象を持っています。

確かに、加齢に伴う性格の変化や他の疾患で特定の動作を行わなくなるケースもあります。

ただし、その中には心臓疾患の症状として運動不耐性が発生している症例が少なからず存在しているはずです。

これを認識して、病気のサインであることを知っていると心臓疾患の早期発見にとても役立ちます。

心臓疾患を疑う際の診察ポイントは?

続いて、診察時に気をつけているポイントです。

まずは問診ですが、前述したような症状の有無、とくに運動不耐性については丁寧に聞き取りをします。

次に身体検査と聴診を行います。

特に、心臓疾患の中には特徴的な雑音を生じるものがあるので、これが聴取できれば診断が大きく前進します。

ここまでで心臓疾患の存在が疑われる場合、次に行うのが胸部レントゲン検査と心臓超音波検査です。

胸部レントゲン検査では、心臓の大きさや肺・気管支の状態などを評価します。

心臓超音波検査では心臓内部の構造、血流の性質や速度の評価を行ないます。

この検査の組み合わせで診断を下し、治療に進むことが多いのですが、その他にも実施する検査があります。

それは心臓バイオマーカーの測定です。

外注の検査センターに血液を提出し、その結果に応じて心臓疾患の存在を考えていきます。

この検査は特に猫の心臓病を診断またはモニタリングする際に使用することが多いです。

心臓疾患は治療できるの?

このように診断・治療を進めていく心臓疾患ですが、その多くは根治できるものではなく、薬で生涯コントロールを続けることになります

しかし、発見が遅れ治療開始時期が遅くなればなるほどコントロールが困難なケースが増えます。

早期発見・治療ができていれば長期間に渡って安定したコントロールが得られることが多いので、適切なタイミングで検査を受けることを強くお勧めします。

いかがでしょうか。

今回は心臓の検査についてお話しました。

すでに心臓疾患の治療をされている飼い主さんはこれらの検査を定期的に行い、自宅での様子を診察時に僕がとてもしつこく伺っています。

しつこく聞く理由は前述した運動不耐性をなるべく見逃さないようにするためです。

運動不耐性を疑う症状がある、または中高齢にさしかかり心臓疾患の発症が心配だという方は是非一度検査を受けられることをお勧めします。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は、サマーカットについてのお話をしたいと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんのサマーカットってなに?

みなさんはサマーカットをご存じですか?

明確な定義があるわけではなく、普段よりも被毛を短く刈り込むカットの仕方をサマーカットと呼びます。

毎年、夏場になるとサマーカットを実施されている飼い主さんがいらっしゃいます。

また、僕たちが指示して実施してもらうケースもあります。

そこで、サマーカットを行う際に知っておきたいメリットとデメリットについて解説していきます。

サマーカットのメリットは?

まずはメリットです。

・皮膚の状態が観察しやすくなる

・被毛のお手入れがしやすくなる

・毛球症の予防

・シャンプーが実施しやすくなる

・涼しく過ごせる

メリットとしてはこのようなものが挙げられます。

特に、僕たちが皮膚疾患の治療を行なう上でサマーカットをしていただく際、皮膚の状態の確認とシャンプーのしやすさが最大のメリットと考えています。

皮膚疾患を治療していく際、厄介なのは被毛があると皮膚が見えにくい、ということです。

当たり前のことを言っているように感じられるかもしれませんが、これが意外と落とし穴です。

まず、皮膚が見えにくいと、そもそも病気の発見が遅れます。

被毛の下で初期病変が発生していても見えないと認識することができず、進行して初めて飼い主さんが気づいて受診されるケースが非常に多いです。

また、治療をしていく際にシャンプーを使用する場合、被毛が短い方がシャンプー療法がやりやすくなります。

さらに、治療経過の観察も格段にやりやすくなります。

このようなメリットが得られる場合、サマーカットを実施します。

サマーカットによるデメリットは?

一方、デメリットは次のようなものが挙げられます。

・皮膚への紫外線の暴露量が増える

・バリカン後脱毛症の発生

・毛の質が変化する

・蚊に刺されやすくなる

紫外線の暴露量については、被毛を短くすると皮膚が日光に晒されやすくなるので散歩のタイミング調整などを行なう必要があります。

特に熱くなってくるこの時期は、サマーカットの有無に関わらずお散歩はできるだけ涼しい時間帯(日の出後2時間以内、日没2時間後など)に済ませることをおすすめします。

あわせておうちでの熱中症対策に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。

熱中症にご用心!

また、被毛が短くなることで蚊が吸血しやすくなり刺される頻度が増加する可能性もあります。

バリカン後脱毛症は一度バリカンで毛を刈った後、部分的に被毛が伸びないでそのままになってしまう症状です。

バリカンの刺激が原因であると考えられており、治療法はいくつか試されていますが確定的なものはなく、経過観察と対症療法をすることも多い病気です。

また、脱毛症にはならなくとも、伸びてきた被毛の質感が変化することもあります。

サマーカットにはこのようなメリット・デメリットが存在します。

僕たちが治療をする際に指示する場合も、飼い主さんの判断で実施する場合も、このメリットとデメリットを十分理解した上で行なうのが望ましいです。

今年の夏、サマーカットを検討していらっしゃる飼い主さんの参考になれば幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は強制給餌栄養管理についてのお話をしていきたいと思います。

強制給餌ってなに?

まずは強制給餌とは何でしょう?

強制給餌とは、自発的に食事を取ることができないorしない子に対して人間が手を動かして食事を取らせることです。

『強制』という言葉のイメージがあまり良くないので強制給餌と言うと、無理やり口を開けて食事を食べさせるイメージを持たれる方が多いです。

しかし、人間も動物も食事を取らなければ衰弱し、死んでしまいます。

特に病気を抱えて食事が取りにくくなっているワンちゃん・ネコちゃんは自発的に食べることを促しても食べてくれません。

病気の治療をしていく上で栄養管理は重要な要素の一つです。

薬を投与して病気と闘うことも治療の側面の一つです。

しかし、それだけでは不十分です。

病気と戦っている時に適切な栄養が体に供給されなければ動物は弱っていき、病気と闘うことなどできなくなります。

自発的に食べられないのであれば飼い主さんに手を動かしてもらい食べさせていただく必要があります。

ワンちゃん・ネコちゃんの強制給餌のやり方は?

では強制給餌はどのように実施するのでしょうか。

僕たちが強制給餌を行う際に用いるのはシリンジと液体、または液状にしたフードです。

リキッド食の場合はそのままシリンジに吸ってゆっくり口に入れて食べさせます。

病気の治療のために特定のフードを使用する必要がある場合は、ドライフードもしくはウェットフードをミキサーにかけて液状にしたものをシリンジに吸って与えます。

強制給餌の際に気を付けたいポイント

いずれの場合でも注意すべきポイントがあります。

1つは口に入れる量とスピードです。

食べさせたい、という気持ちは重要ですが一度に入れる量が多すぎたり入れるのが速すぎるとうまく飲み込めず、誤嚥してしまう可能性があります。

口や喉の動きを見ながら嚥下のスピードに合わせて与えるのが重要です。

2つ目は怪我をしないように注意することです。

ワンちゃんやネコちゃんは強制給餌をする際に程度の差はあれど、抵抗感を示します。

徐々に慣れてくれる子が多いのですが、中には噛み付いたりシリンジを破壊してしまう子もいます。

また、シリンジの操作を誤ると歯肉や口腔内を傷つける場合もあります。

特に口に痛みを抱えている子に対して強制給餌をする際、痛みを与えてしまうと、それ以降給餌を非常に嫌がるケースがあるので注意すべきポイントです。

ワンちゃん・ネコちゃんの強制給餌が難しい場合の対処法は?

このように強制給餌を実施するのですが、それでも食べさせるのが困難な場合はチューブの設置を提案します。

チューブの設置には次のようなものがあります。

①経鼻チューブ

②経食道チューブ

③胃瘻チューブ

経鼻チューブ

①の経鼻チューブについては覚醒下で設置ができることが最大のメリットです。

しかし、鼻から入れられるチューブは細いため、基本的に液体しかチューブから送り込むことができません。

さらに、嘔吐やくしゃみ、チューブを嫌がるなどで比較的簡単に抜けてしまいます。

抜けてしまった場合は再設置が必要になります。

また、抜けずに扱えていても1週間ほどで交換する必要があります。

よって、経鼻チューブは短期間設置し、その後チューブを使わなくて良くなることが想定されるケースに選択されます。

経胃道チューブ

②の経胃道チューブについては、麻酔下で食道にチューブを設置し頸部から先端を出して管理する方法です。

①に比べると太いチューブを入れられるので、送り込めるもののバリエーションは広くなります。

また、頸部から先に設置しているのでくしゃみ等の呼吸器のトラブルによる影響は受けません。

しかし、嘔吐によりチューブを吐き出してしまった場合は再設置する必要があります。

経鼻チューブに比べると長く設置しておくことができるので中〜長期にチューブを使用することが想定される際に選択されます。

胃瘻チューブ

③については麻酔下で内視鏡を用いて、直接胃にチューブを設置し腹部皮膚から先端を出して管理する方法です。

最も太いチューブを設置するので、送り込めるもののバリエーションはさらに増えます。

長期使用を想定した方法なので設置部位周囲の皮膚のケアやチューブ自体のケアをすれば年単位で連続使用が可能です。

口腔腫瘍などで生涯に渡りチューブフィーディングが必要、または投薬が必須であると判断した際に選択されます。

ワンちゃん・ネコちゃんにチューブの設置はかわいそう?

チューブの設置についてはそれぞれにメリットとデメリットがあり、どれを選択すべきかは飼い主さんと相談して決めていきます。

また、チューブを設置した姿は可哀想とおっしゃる飼い主さんもいます。

確かに自発的に食事が取れずチューブを設置した姿は、はつらつとはしていないかもしれないです。

しかし、前述したように食べてくれないのなら食べさせて栄養を供給する必要があります。

ここが僕たち獣医師と飼い主さんとで最も意識のズレを感じるポイントです。

僕は、強制給餌やチューブの設置を飼い主さんに提案する際、その必要性や実際に設置した症例の写真をお見せしてイメージしていただくことで少しでも抵抗感を減らせるようにしています。

いかがでしょうか。

今回は強制給餌と栄養管理についてのお話をしました。

病気の治療を考える際、どうしても投薬に意識が集中しがちですが、同じくらい栄養管理は重要な因子の一つです。

強制給餌やチューブ設置について不安や詳しく知りたい方がいらっしゃればいつでも質問してみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は昨年に引き続き熱中症の注意喚起をしたいと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんの熱中症は5~6月に最も発生しやすい!

まず最初にお伝えしたいのが、5-6月が一年で最も熱中症が発生しやすい時期だということです。

熱中症は真夏の炎天下で起こる病気というイメージがあるかもしれませんが、真夏にワンちゃん・ネコちゃんの熱中症にはあまり遭遇しません。

むしろ、5-6月に軽度〜中等度の熱中症を疑う症例には頻繁に遭遇します。

なぜ真夏よりもこの時期に熱中症の発生が多いの?

これには、さまざまな理由が考えられるのですが、最も重要なのはヒトと犬猫では体温調節の仕組みが異なるということです。

ヒトは高体温になった際、汗をかきます。

そして体表面から汗が気化するときに気化熱が奪われて体温が下がります。

ヒトは、体表面のほぼ全ての部位で発汗が可能なので効率よく体温を下げることができます。

一方、犬猫はごく一部の部位を除いて、体表面に汗をかくことができません。

よって、体温を下げる際は口を開けて浅く早い呼吸(パンティングと言います)をすることで唾液を気化させ、気化熱を発生させます。

しかし、これでは効率が悪く、体温を下げきれなくなってしまうと熱中症を発症してしまいます。

この仕組みの違いを理解すると、5-6月の熱中症発生のメカニズムがイメージしやすくなります。

最も多いシチュエーションは

『室温が高かったが窓を開け風通しが良かったor扇風機をつけていた』

です。

日中、室温が上昇しても、窓を開けたり扇風機の風が当たっていると人間は先述したメカニズムで体温を下げることができます。

しかし、犬猫は体表面にいくら風が当たっていても、汗をかいていないので体温を下げる効果は期待できません。

実際に診察していてお話を伺っていても

「窓を開けていたので涼しかったです。」

「うちは山の方だからそんなに暑くなりません。」

とおっしゃる飼い主さんが多いです。

ですが、これはあくまで『人間にとっては涼しい』ということです。

この認識のズレこそが5-6月に熱中症が発生する最大の原因ではないかと僕は考えています。

そして毎年このお話をしています。

ワンちゃん・ネコちゃんの熱中症を予防するには?

この時期の熱中症予防対策として有効なのは、室温が上がる時間帯だけエアコンをかけておくことです。

朝晩の気温が上がらないタイミングはエアコンの出番は無いのですが、日中は気温の上昇とともに室温も上がります。

一度室温が上がってしまうと犬猫は体温上昇が起こり、先述したようにうまく下げることができません。

よって、室温自体が上がらないようにコントロールしてやる必要があるのです。

そして、これが真夏にあまり熱中症に遭遇しない理由です。

つまり、真夏になると人間が自発的にエアコンを点けるので室温が上昇しすぎない状態が整うからです。

エアコンの設定温度は何度くらいが理想?

また、設定温度についてもよく質問を受けます。

僕の回答は

人間がじっと座っていたら肌寒い程度にしてください。』

です。

〇〇℃に設定してください、という伝え方はしません。

室内の環境やエアコンの性能にも影響されるため、あくまで体感温度を目安に調節してあげてください。

いかがでしょうか。

毎年この時期になると必ずこのお話をしています。

5-6月に向けて室温の管理の仕方のご参考になれば幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は子宮蓄膿症についてのお話をしたいと思います。

子宮蓄膿症ってどんな病気?

子宮蓄膿症は子宮内で細菌が増殖することで膿が溜まってしまう病気です。

未経産の若い子や老齢の子で発生が多い印象ですが、避妊手術を受けていない場合はどの子も発生する可能性があります

子宮蓄膿症には開放型閉鎖型の2種類があります。

開放型は子宮に溜まった膿が陰部から排出されるタイプで、多量のオリモノ(実際は膿汁です)が出るので飼い主さんが比較的気付きやすいため、早めに発見される傾向があります。

一方、閉鎖型は子宮に溜まった膿が排出されないタイプです。

こちらはオリモノが出ないため、飼い主さんも気付きにくく発見が遅れることがあります。

子宮蓄膿症になるとどんな症状が出るの?

次に、子宮蓄膿症ではどのような症状が出るのでしょうか。

陰部から膿汁排出が最大の特徴ですが、それ以外には次のようなものが挙げられます。

・元気・食欲消失

・飲水量増加

・嘔吐

・腹囲膨満

・発情周期のズレ

・発情終了の遅延

発情に関連したものもあるのですが、多くは非特異的(=子宮蓄膿症だけでみられる症状ではない)で鑑別をしっかり実施する必要があります。

よって、僕たちが日頃診察している際に、未避妊の子が上記のような症状を主訴に来院された場合は子宮蓄膿症を常に鑑別診断に入れて考えています。

子宮蓄膿症はどうやって分かるの?

では、子宮蓄膿症はどのように診断するのでしょう。

前述したような子が来院され、子宮蓄膿症を疑った場合、僕たちは初めに腹部超音波検査を実施します。

実際に子宮に膿が貯留しているのか、卵巣の状態はどうか、子宮はどの部位が拡張しているのか、破裂はないか、腹膜炎を疑う所見は無いか、などさまざまな情報が得られます。

また、同時に血液検査も実施します。

炎症の程度や、合併症の有無、一般状態をチェックすることで、この後記載する外科手術に伴うリスクの評価を行ないます。

子宮蓄膿症はどうやって治療するの?

次に治療方法です。

基本は外科手術で治療を行う

第一選択は外科手術で、子宮と卵巣を切除します。

ただし、前述した血液検査の結果により術前に抗生剤の先行投与を行なったり、入院して静脈点滴を行なったのちに手術計画を立てます。

これは、子宮蓄膿症を含む重度の全身性疾患を抱える症例に麻酔・手術というダメージを与えると全身性炎症反応症候群や敗血症という合併症が発生することがあるからです。

同じ理由で、術後も静脈点滴と抗生剤の投与を継続し、合併症発生の可能性が下がるまでは慎重に治療を継続します。

投与する抗生剤については、作用範囲が広いものを先行投与し、手術時に膿を培養検査し、その結果に基づいて変更の必要があれば適宜変更します。

例外的に内科的療法を行う場合もある

その他の治療方法として、抗生剤の投与のみ行う内科的治療があります。

基本的に選択しないのですが、超高齢で麻酔のリスクが高い場合や、併発疾患により麻酔がかけられない場合は選択肢に入れます。

この場合、一旦は症状が改善するケースがありますが高確率で再発を繰り返すことを飼い主さんにお伝えした上で慎重に検討します。

子宮蓄膿症を放っておくとどうなるの?

子宮蓄膿症を治療しないとどうなるでしょうか。

この病気は残念ながら様子を見ていても治ることはありません

それどころか、時間が経つにつれて状態は悪くなるので発見したら即治療を進めます。

仮に、治療しなかった場合は子宮内での炎症と細菌の増殖が進み、腹腔内や全身に波及します。

それに伴い、全身状態が悪化し亡くなる可能性が高いです。

子宮蓄膿症を疑う症状がみられる場合は、早めの受診をおすすめします。

いかがでしょうか。

今回は子宮蓄膿症のお話をしました。

早期に避妊手術をされる飼い主さんが増えてきたので、発生件数が減少しているとはいえ、まだまだよく遭遇する病気の一つです。

この病気の発生を予防するためにも、子供を産ませる予定がない場合は、早期に避妊手術を実施することをお勧めします。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はネコちゃんの毛玉についてのお話をしたいと思います。

ネコちゃんはどうして毛玉を吐くの?

ネコちゃんの飼い主さんの多くは毛玉を吐いているところを一度は見たことがあるのではないでしょうか。

まずは、なぜ毛玉が作られるかを解説していきます。

猫は1日のうち多くの時間をグルーミング(毛繕い)に費やす動物です。

猫のザラザラした舌でグルーミングをすると毛が切れ、その大半を飲み込んでしまいます。

毛は消化されないため、通常はそのまま胃・腸を通過し便とともに排出されます。

しかし、飲み込んだ毛の量が多い場合やうまく通過できない場合は毛玉が胃にとどまり、猫はそれを吐き出そうとして、毛玉を吐くというイベントが発生します。

毛玉を吐く頻度はどれくらいなら正常?

次に、このイベントの頻度についてのお話をします。

毛玉を吐くという行為自体は前述したメカニズムで生じる、猫にとっては生理的な行動です。

しかし、あまりにもしょっちゅう嘔吐を起こしているのであれば何らかの対策を講じていく必要があります。

その線引きとして、僕は1ヶ月に2回以上毛玉を吐く子の場合、治療介入を勧めます

ネコちゃんが毛玉を吐くことは予防できるの?

では、実際に毛玉を予防するケアを紹介していきます。

①ブラッシング

まずは丹念なブラッシングが基本です。

特に長毛種の子はこまめなブラッシングが必要となりますが、ブラシの選択も重要です。

短毛の子であれば一般的な猫用のコームで良いのですが、長毛の子はしっかり梳かすためにスリッカーや先の長いコームがおすすめです。

毛にしっかりとブラシの先端を入れて梳かしてやる必要があるのですが、この際皮膚を強く擦りすぎないように注意してください。

特にスリッカーは先が金属で固いので、皮膚に強く当てて使うと皮膚障害を起こす可能性が高いです。

②サプリメント

ブラッシングをこまめに実施しても毛玉を吐くイベントに改善が見られない場合、サプリメントの導入を行ないます。

僕が主に使用するのは流動パラフィンとワセリンが含まれている製品で、投与することで毛玉の形成を予防する+通過を促し便とともに排出させる効果を狙っています。

また、便とともに排出させることを目的に膨張性下剤であるサイリウムを使用することもあります。

毛玉予防を標榜しているフードにもこのサイリウムが含まれているケースが多いです。

③外科手術

これは予防ではなく、大量の毛玉が消化管で閉塞を起こしてしまった場合に実施します。

毛玉で腸閉塞を引き起こすケースは稀ではあるものの、可能性はあります。

このリスクを軽減させるために①②で予防を徹底します。

猫草は毛玉予防に効果あるの?

また、猫草を食べさせることについてもよく質問を受けます。

猫草は食べることによって消化管が刺激され、毛玉の排出を促すというコンセプトです。

なので、猫草を与えることで毛玉を吐く頻度が減少するようなら継続使用していただいています。

ただし、消化管に刺激を与えるため、下痢を引き起こす子もいます

猫草を与えてから下痢が始まった場合は、使用を中止するようにお話しています。

いかがでしょうか。

今回はネコちゃんの毛玉についてお話ししました。

毛玉を吐くというイベントもさることながら、長毛種の場合、こまめにブラッシングを実施しないと体表にも毛玉が出来てしまいます。

体表の毛玉を放っておくとその部位のグルーミングが出来なくなり、皮膚疾患が発生しやすくなってしまいます。

これを予防するためにもブラッシングは基本ながら最も重要なケアです。

ネコちゃんが毛玉を吐いてお悩みの方は、一度ご相談ください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はワンちゃん・ネコちゃんの体温測定についてのお話をしたいと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんの体温測定について

前回に引き続き、動物のスタンダードな状態を知るためのトピックです。

ワンちゃん・ネコちゃんの平熱(基準値)ってどれくらい?

まずは、ワンちゃん・ネコちゃんの体温の基準値は以下の通りです。

・小型犬:38.6℃〜39.2℃

・大型犬:37.5℃〜38.6℃

・猫:38.0〜39.0℃

病院で測定すると緊張や興奮から、もう少し高くなる傾向がありますが自宅で安静時に測ると大半の子はこの範囲に収まります。

ヒトよりも2℃ほど高いイメージですね。

ワンちゃん・ネコちゃんの体温測定はどうやるの?

では、実際の測定方法を解説していきます。

動物の体温を測定する部位は直腸です。

手順は以下の通りです。

①可能であれば2人で実施。

一人が体の前の方を押さえながら抱っこし、もう一人が測定を行なう。

②尻尾を上に持ち上げ肛門に体温計を挿入する。

→3-5cmくらい、ゆっくり挿入し測定できるまで留めます。

体温計の先にラップを巻き少量のオリーブオイルを塗ると痛がらずに測定することができます。

③測定が終了したらゆっくり体温計を抜く。

ポイントとしては、運動後や排便しそうなタイミングは避けて測定するようにしてください。

基準値よりやや高い場合は2-3時間後に再度測定し、基準値内に収まっているか確認してみてください。

ワンちゃん・ネコちゃんは直腸以外でも体温測定できるの?

ここで、よく聞かれる質問を一つ紹介します。

それは、

『体温測定は直腸でしか測定できないの?』

です。

これに関してはさまざまな報告や製品が発表されているのですが、今のところ再現性が乏しく安定しない印象を持っているので基本的に体温測定は直腸で実施することをお伝えしています。

将来的に、ヒトと同じようにもっと簡便で迅速に体温が測定できれば動物に対するストレスも軽減できるので、僕自身もそうなることを待ち望んでいます。

いかがでしょうか?

今回は体温測定についてのお話をしました。

前回ご紹介した安静時呼吸数と同様に、健康な子の場合、毎日体温測定をする必要はありません。

あくまで、その子のスタンダードを把握しておくためのものだとイメージしていただければ良いです。

その子の普段の体温を把握しておけば、抱っこして普段よりも熱いと感じた時に本当に体温が上昇しているかを客観的に評価することができます。

実際に測定してみて、

・体温が基準値を超えて元気がない

・元気そうだが40℃を超えている

などは明らかに正常ではないので早急に受診するようにしてください。

今回のお話で、試しにやってみようと思っていただけると幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は安静時呼吸数についてのお話と実際の測定方法について解説していきます。

安静時呼吸数ってなに?

まずは安静時呼吸数とは何でしょうか?

これは文字通り、動物が安静にしている時の1分間あたりの呼吸数を表したものです。

飼い主さんが

「自宅で息が荒かったんです。」

とおっしゃって来院されても診察室では呼吸数に異常がない場合や、診察室に入ると緊張して呼吸数が増えてしまうケースが非常に多いです(ほぼ毎日遭遇します)

こんな時に、その子の安静時呼吸数を把握しておくと、呼吸数の変動があった時にそれが病気なのか生理的な現象なのかの鑑別にとても役立ちます。

どうやって安静時呼吸数を測定するの?

では実際にどのように測定するかについてお話していきます。

とは言っても、特別なことをするわけではなく、寝ている時のワンちゃん・ネコちゃんが1分間で何回呼吸しているかカウントするだけです。

落ち着いて寝ている時に胸の部分を観察すると呼吸に合わせて動くのがわかると思います。

その状態で1分間呼吸数を数えます。

その数字がその子の安静時呼吸数です。

ワンちゃん・ネコちゃんの安定時呼吸数の目安

一般的に安静時呼吸数の基準値は次のように考えられています。

・小型犬:20-30回/分

・大型犬:15回/分

・猫:20-30回/分(ただし睡眠時はもう少し少なくなる可能性あり)

個体差はありますが、この数字を大きく超える呼吸数の増加がある場合は体に何らかの異常を起こしている可能性を常に考慮する必要があります(もちろん興奮時や運動後の一過性の呼吸数増加は除きます)。

安定時呼吸数を知ることで体調の変化を把握しよう

僕は普段診察していて、心臓疾患や呼吸器疾患を治療している子の飼い主さんにはこのお話をする機会がとても多いです。

そして、安静時呼吸数を必ずメモしてもらっているのが、抗がん剤治療をしている子達です。

抗がん剤を使用すると必ず副作用が発生します。

そして、それを早期に発見する上で安静時呼吸数の把握と毎日の呼吸数のチェックは非常に重要になります。

抗がん剤の副作用は発生することを想定した上でいかに早く対処できるかが非常に重要な課題です。

ご自宅での飼い主さんの観察が治療を成立させる重要な因子になるので、治療をしていない子でも普段から測定してみることを強くオススメします。

いかがでしょうか?

今回は安静時呼吸数のお話をしました。

この数字を把握しておくと

「呼吸が早い気がする」

という表現から

「普段の呼吸数は〇〇回ですが、それよりも増えています」

というように、具体的に病態の有無を鑑別することができるようになります。

ワンちゃん・ネコちゃんは自分達のスタンダードを把握することができないので、飼い主さんが普段から把握できる情報量を増やすことができると病気の早期発見に繋げることができます。

今回のお話で早速、ご自宅での呼吸数の測定を行なってみてください。

文責:獣医師 小川