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みなさま、こんにちは。


本日は肛門腺しぼりについてのお話をしたいと思います。

肛門腺とは

ワンちゃんもネコちゃんも肛門付近(時計の4時と8時方向)に袋状の器官があります。

これを肛門腺(または肛門嚢)と呼び、内部に分泌液が溜まっています。

肛門腺に分泌液が溜まるとどうなるの?

この分泌液が排便とともに排出される子もいれば、排出されずにどんどん溜まってしまう子もいます。

そして、溜まってしまう子の場合、自分で気にして舐めたり、お尻を地面に擦るような仕草をします。

これが続いてしまうと、皮膚が欠損し穴が開いてしまいます
(とても痛いです)。

これを予防するために僕たちは診察時に必ずと言っていいほど肛門線のチェックをしています。

肛門腺はどうやってしぼるの?

肛門の4時と8時方向の部分を触ると、分泌液が溜まっている子の場合は袋状の器官があるのがよく分かります。

この袋を保持してゆっくりと圧力をかけてやることで、内部の分泌物を排出することができます。

文章を読むだけでは伝わりにくいので、ご自宅でチャレンジしたい飼い主さんには目の前でやり方をお見せしてレクチャーしています。

肛門腺に溜まる分泌液

診察時に肛門線しぼりをする際、溜まっていたら必ず排出させて観察します。

通常、溜まる分泌物は茶色の液体なのですが、ペースト状に固まったものが溜まる子もいます。

この場合、排出させるのが難しくなるので、ご自宅で実施困難な場合は無理せずに診察時におっしゃってください。

おうちでの肛門腺しぼりが難しい場合は早めの受診を

また、普段は茶色の液体が排出されるのに緑色の膿状の液体が排出されたり血液が混入しているケースがあります。

この場合、肛門嚢炎等の疾患を起こしている可能性があるので適切な治療介入が必要となります
(ご自宅で発見された場合は早めに受診してください)。

ネコちゃんの肛門腺しぼり

また、ネコちゃんの肛門腺についてですが、ワンちゃんと比べると溜まってしまうケースは少ないです。

ただし、排出できない子もいるので注意は必要です。

猫ちゃんの場合、ワンちゃんと解剖学的な位置関係は同一なのですが、肛門腺の開口部に分泌物が詰まってしまうケースが多いです。

この詰まりを解除してあげないと圧力をかけても内部の分泌液が排出されないので、無理矢理しぼると痛がり触らせてくれなくなります。

特に猫ちゃんは違和感を感じる部位に対する舐め壊しがすぐに発生します。

猫ちゃんがお尻周りを気にして舐めていたり、お尻周りに分泌物の付着を見つけた場合は早めに診察にいらしてください。

いかがでしょうか。

初めてワンちゃん・ネコちゃんを飼われる方の中には、肛門線の存在を知らない方もいらっしゃるかと思います。

また、存在は知っていても溜まったままにしておくと疾患が発生する可能性があることを知っていただけたかと思います。

ご自宅で肛門線しぼりにチャレンジしてみたい方、またはワンちゃん・ネコちゃんがお尻周りを気にしていて心配な方は診察時にお伝えください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は手術や検査などの際の、事前の絶食の重要性についてお話します。

忘れると危険!?検査・手術前の絶食の重要性

『次回、〇〇の検査を予定していますので絶食して来院してください。』

『◯月◯日に手術を行ないますので、絶食して来院してください。』

普段、動物病院でこのようなことを伝えられたことはないでしょうか。

ワンちゃん・ネコちゃんのご飯を抜くのは人間が自ら絶食するよりも難易度が高いかと思います。

しかし、検査や手術をする上で絶食下であることはとても重要なことです。

そこで今回は、なぜ絶食する必要があるのか、絶食していないとどうなるのかについて解説していきます。

まず、絶食をする理由です。

嘔吐・誤嚥の危険性がある

これは主に全身麻酔下での手術の時に危惧される事態です。

麻酔の導入の際、鎮静薬の作用で嘔吐を誘発するケースがあります。

この時、胃が空っぽなら少量の液体を吐くだけで済みます。

しかし、胃に食べたものが入っていると大量の固形物を吐くことになります。

加えて、鎮静状態になっているので通常の姿勢を保つことができず、その結果誤嚥を起こす危険性が上昇します。

検査結果に影響が出る

これは血液検査を行う際に考えられます。

直前の食事によって数値に変動が生じる項目の場合、疾患によって数値が変動しているのか食事の影響なのか鑑別することが困難になります。

すると症例の状態を過小評価あるいは過大評価する可能性が生じてしまいます。

画像診断がやりにくい

レントゲンやエコー検査を実施する際に発生する問題です。

食物が消化管に入っていることで病変が検出できない、エコー時にガスが発生して見たい臓器が描出できないなどさまざまな問題が生じます。

(とくに腹部エコー検査の際は、食事をしていると本当に見えない部分が出てくるので苦慮するケースが多いです)

こんな感じです。

絶食に失敗した場合は検査・手術の延期がおすすめ

次に、絶食していないと何が起こるかです。

こちらは単純なのですが、検査や手術を延期する可能性があります。

前述したようなリスク、または正確な評価ができなくなる可能性があるので、日を改めて絶食の条件が整ったタイミングで再度実施をお願いします。

ワンちゃん・ネコちゃんにとっては動物病院に来るだけでストレスがかかるので、可能な限り来院の頻度を減らすためにも、指示された条件下で受診していただけるようお願いします。

いかがでしょうか。

今回は絶食をする意味と重要性についてお話しました。

朝起きて、ごはん!と要求されるとついつい忘れて食事を与えてしまいがちです。

しかし、適切な検査・処置を行うため、そして何よりリスクを回避するためにも絶食指示が出ている時は忘れずにお願いします。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)のお話をしていこうと思います。

まずはFVRとはなんでしょうか。

猫がヘルペスウイルスに感染した際に結膜炎や鼻炎を主体とする上部気道炎が典型的に認められます。

このことからヘルペスウイルス感染に起因する上部気道炎をFVRと呼んでいます。

このFVRという病気ですが、野良猫を保護した際にとても頻繁に遭遇します。

そして、このヘルペスウイルスというのはとても厄介な性質を持っています。

それは、一旦症状が治っても神経に潜伏感染し続け、生涯に渡り再発症する可能性があるのです。

ヒトでは帯状疱疹を起こすウイルスとして知られていますね。

次にこの病気の診断についてですが、確実な方法はウイルスの分離やPCR検査が挙げられます。

これは、鼻汁や口腔の拭い液を検査センターに提出し血清学的診断やPCR検査でウイルスの感染の有無を確定させるというものです。

ただし、全症例にこの検査を実施するわけではありません。

むしろ僕は滅多に行いません。

その子の飼育形態や経緯を伺い、身体検査を実施した臨床診断を元に治療を開始します。

そして、治療反応が得られない場合にはじめてウイルス検査や他の要因の鑑別を行なうことが多いです。

理由は2つあります。

・検査結果が出るまで待っていられない症例が多い
・ウイルス検査の結果が必ずしも確定診断にならない

1つ目は特に子猫でFVRを疑うケースでは呼吸器症状の悪化は全身状態の悪化に直結するので、暫定診断を元に即治療を開始します。

2つ目は、ウイルス検査の結果はあくまでもウイルスの存在を証明しているだけなので、それが症状を起こしていることを証明することはできません。

常に臨床症状とあわせて評価することが必要なので、FVRについてはウイルス検査を第一選択に考えてはいません。

最後に治療の話です。

前述したようにヘルペスウイルスは生涯に渡り潜伏感染を続けます。

よって、治療は対症療法が中心になります。

軽度の症例では結膜炎や鼻炎に対して点眼・点鼻を中心にした治療から始めます。

呼吸器症状が重度の症例では抗ウイルス薬やインターフェロン製剤の全身投与を行ない、より積極的な治療を実施します。

一旦、急性発症期を離脱した場合は治療を終了し経過観察をします。

しかし、多くのケースでストレス状態に置かれた際や他の疾患により一般状態が悪化した際に再発症を起こします。

(僕がよく経験するのは手術後の再発症です)

この場合も初発の時と同様に対症療法を実施し、症状が消失するまで治療します。

今回は猫のFVRのお話をしました。

子猫を保護して来院してくださった方にこのお話を毎回のようにしています。

呼吸器症状が重篤なケースだと治療が長期間に渡ることもあり、侮れない病気です。

ただし、多くの症例はご自宅での献身的なケアで状態が良くなり、現在も問題なく成長してくれています。

この病気の性質を理解し、付き合っていくためにも飼い主さんに情報共有することが重要であると考えています。

子猫を保護した際に、特徴的な結膜炎や目脂、鼻汁、くしゃみなどの症状がある場合はFVRの疑いがあります。

このような状況になった場合、一度診察を受けてみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はワンちゃん・ネコちゃんの潜在精巣についてお話します。

まず、潜在精巣とはなんでしょうか。

ワンちゃん・ネコちゃんは生まれた時、精巣が陰嚢内ではなくまだ、お腹の中にあります。

生後1〜2ヶ月で徐々に陰嚢内に降りてくるのですが、その際にうまく降りず取り残されるケースがあります。

これを潜在精巣(停留睾丸、陰睾とも呼ばれます)と言います。

取り残される場所がお腹の中だと腹腔内陰睾、鼠径部の皮下組織だと皮下陰睾など色々なパターンがあります。

では、この潜在精巣の何が問題となるのでしょうか。

それは、腫瘍化するリスクがあるということです。

精巣にできる腫瘍はセミノーマセルトリ細胞腫ライディッヒ細胞腫の3つがほとんどです。

特に、セミノーマとセルトリ細胞腫については潜在精巣での発生が数多く報告されています。

いずれの腫瘍も多くは良性なのですが、まれに転移を起こすケースもあり注意が必要です。

また、セルトリ細胞腫については良性であっても、腫瘍細胞が出すホルモンの影響で骨髄が抑制される再生不良性貧血という病気を引き起こすことがあり、深刻化するケースもあります。

次に治療方法についてです。

潜在精巣は腫瘍化の有無に関わらず、外科手術での精巣切除が第一選択となります。

(腫瘍化を疑う場合、病理検査に提出します)

生後4〜6ヶ月を過ぎても陰嚢内に精巣が下降していない場合、それ以降に降りてくることはまずありません。

精巣の場所が触診で把握しにくい場合は、超音波検査で場所を特定してから外科手術を実施するケースもあります。

また、潜在精巣の個体を交配させるかどうかですが、基本的にはオススメしません。

特にワンちゃんの場合、潜在精巣は劣勢遺伝することが報告されています。

いかがでしょうか。

今回は潜在精巣についてのお話をしました。

精巣が生後に下降することをご存知ない飼い主さんが多いので、よく質問を受けます。

それと同時に腫瘍化のリスク因子になることを含めて、お伝えする機会が設けられてよかったです。

最近、ワンちゃん・ネコちゃんを飼い始めた方で、うちの子潜在精巣かな?と疑問に思われる場合、一度診察を受けてみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は健康診断の重要性についてお話ししたいと思います。

人間も定期的に健康診断を行ない、病気の早期発見につながっていることは言うまでもないかと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんでも全く同じことが当てはまります。

明らかな症状を引き起こす病気の場合、飼い主さんが気づいて病院に連れてきてくれます。

しかし、症状がわかりにくい場合、気づかずに病気が進行しているケースがあります。

これをできるだけ見落とさずに拾い上げるために、定期的な健康診断をおすすめします。

では、健康診断でどのような項目をチェックするのかを解説します。

①血液検査

健康診断と聞いて最初に思い浮かぶのがこの血液検査ではないでしょうか。

内容は、全血球計算と生化学検査です。

身体検査と血液検査の結果に基づいて、その他の検査を組み合わせる必要があるかを判断していきます。

人間と同じく、血液検査をする多くの場合は絶食が必要です。

②尿検査

全血球計算と並んで、全身状態の把握に役立つのがこの尿検査です。

尿路疾患や腎機能の評価を正確に行うために必須の検査です。

事前にお渡しする検査キットで採尿していただく場合や、院内にて採尿を行うパターンがあります。

③胸腹部レントゲン検査

こちらも健康診断で受けられたことがある方が多いと思います。

特に、シニア期になったワンちゃん・ネコちゃんの場合、心臓疾患や腫瘍に遭遇する機会が増えます。

健康診断時に定期的に実施することで病変の早期発見に役立ちます。

④心臓エコー検査

ワンちゃん・ネコちゃん共通して心臓疾患を抱えている子が年々増えています。

身体検査時に心雑音が聴取された場合や、飼い主さんにお話しを伺い、心臓疾患を疑う場合は積極的に検査することをオススメします。

⑤その他の特殊な血液検査

心臓、腎臓の血液バイオマーカーやホルモン検査などがあります。

前述した血液検査や画像検査の結果、あるいは身体検査で疑いがある場合に検査をおすすめします。

※検査によっては結果が出るまでに数日かかるものや、別日に改めて実施する場合があります

これらに加え、最も大事なのが稟告聴取と身体検査です。

僕たちは検査結果を見るのではなく、動物を診るのが仕事です。

この最も重要な2点から開始し、必要な検査を組み合わせることで個々の状態を詳細に把握することに繋がるのです。

今回は健康診断の重要性についてお話しました。

健康診断を受けてみたい方、いつ受診すればいいかなど質問がございましたらスタッフまでお問い合わせください。

健康診断によって病気の早期発見ができる子が増えてくれることを願います。

(本文中の写真はすべてイメージ画像です)

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はノミ・マダニ駆除薬のタイプの違いについてお話したいと思います。

まず大前提として、タイプの違いによって製品の優劣があるわけではありません。

あくまでコンセプトが異なるだけで、駆除薬としての効果は同じです。

これを踏まえた上で、当院で扱っているノミ・マダニ駆除薬をタイプ別に紹介し、それぞれの特色を解説していきたいと思います。

スポットオン(滴下)タイプ

→動物が舐められない場所に薬剤を垂らし、薬剤が体表面に広がって作用するタイプ。

体表面で駆除・予防効果を発揮するので吸血というイベントを回避することが出来る

作用の持続期間はおよそ1ヶ月程度。

薬剤を滴下する日の前後1-2日はシャンプーを避ける必要がある。

まれに滴下部位を異常に気にしたり、皮膚に病変が発生するケースがある

②経口タイプ

→経口投与することで薬剤の血中濃度が上昇し、吸血されると駆除効果を発揮するタイプ。

経口投与なので、シャンプーのタイミングをずらす必要はなし

作用の持続時間は1ヶ月程度のものや3ヶ月程度のものがある。

吸血されることが必須なので節足動物咬傷性のアレルギーが発生する可能性がある

食物アレルギーの子の場合は基質にアレルゲンが含まれている場合、アレルギー症状が出る可能性がある。

現在、当院で使用している薬剤を分類するとこんな感じです。

ここからは僕の個人的な意見です。

獣医師間でも意見に差が生じるので、参考程度にしてください。

スポットオンタイプと経口タイプの両者で、当院ではスポットオンタイプを第一選択にしています。

理由は、吸血というイベントが発生することを避けたいからです。

製品のコンセプト上、スポットオンタイプは吸血させずに駆除することを狙ったもので、経口タイプは吸血させて駆除することを狙っています。

前述したように、駆除するという効果は同一なのですが、吸血されることで生じるアレルギー反応や媒介する疾患に罹患する可能性が少なからず存在します。

よって、どちらかを選択できる場面ではスポットオン製剤を使用しています。

ただし、次のようなケースでは経口薬を使用しています。

・滴下した部位をとても気にして舐めたり、擦り付けたりしてしまう。

・滴下部位の皮膚が赤くなったり、痒みが出てしまう。

・多頭飼育の場合、滴下部位を別の子が舐めてしまう。

・飼い主さんが製品の匂いを許容することができない。

実際にこれらの理由でスポットオン製剤から経口薬に変更し、現在も継続している子がいます。

今回はノミ・マダニ駆除薬のタイプとそれぞれの特色についてお話ししました。

冒頭でもお話しした通り、駆除効果に優劣はありません。

あくまで、製品のコンセプトが異なるだけです。

僕たち獣医師がコンセプトの違いを理解し、なぜその製品を使うのかを飼い主さんにきちんと伝えることが重要であると考えています。

人獣共通感染症の報告が増えているので、ノミ・マダニ駆除に関心を持たれている飼い主さんが増えています。

ノミ・マダニ予防をしたことがない方、やっているが今の方法に疑問がある方は一度獣医師に相談してみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫の乳腺腫瘍についてお話ししたいと思います。

猫の乳腺腫瘍は悪性の可能性が高い

まず第一に、猫の悪性腫瘍のうち発生率トップは乳がんです。

そして猫の乳腺部にできる腫瘍は9割以上が悪性です。

体表腫瘤についての記事でもお話ししたのですが、体の表面にできる腫瘤は飼い主さんが発見しやすいので診察する機会が多いです。

その中でも乳腺腫瘍はワンちゃん・ネコちゃんともに非常に多く遭遇します。

そんなポピュラーな腫瘍であるにもかかわらず、ネコちゃんの場合はほぼ悪性腫瘍なので悩ましい限りです。

猫の乳腺腫瘍について知っておくべきこと

猫の乳腺腫瘍と向き合う際に僕たちが重要視していること、そして飼い主さんにお伝えできることとして次のようなことが挙げられます。

①腫瘍のサイズが2cm以下で発見・治療できるかが重要
②早期の避妊手術によって乳がん発生のリスクが低下すること
③治療するのであれば片側乳腺全切除以上±抗がん剤が適用されること

①について

猫の乳腺腫瘍では、腫瘍のサイズが2cm以下と2cm以上では生存期間の中央値に大きな差があることが分かっています。

猫を触っていて乳腺部のしこりに気づいたら、なるべく早期に治療を開始することを進める理由はここにあります。

②について
避妊手術を実施するタイミングによって乳腺腫瘍発生のリスクがどれだけ軽減できるかが調べられています。

6ヶ月齡以前→91%低下
6ヶ月〜1歳齢→86%低下
1歳〜2歳→11%低下
2歳以上→避妊手術による効果なし

こんな感じです。
このデータに基づいて、僕たちは、特別な事情がなければ1歳までに避妊手術を行うことを強くおすすめしています。

③について
猫の乳腺はリンパ管ですべて繋がっているので切除する際は片側の全切除あるいは両側の全切除が必要になります。

これは、再発を防止するためにかならず必要な手技です。

切除範囲が大きくなるので飼い主さんがかわいそうと思われるケースが多いのですが、乳がんと戦うために必要な手術であることを十分に説明し治療にあたります。

また、腫瘍の広がりや病理組織検査の結果によっては術後に抗がん剤を用いた化学療法が適用されるケースもあります。

今回お話しした猫の乳腺腫瘍は僕たちも遭遇したくない疾患です。

猫の乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が大切

猫を乳がんから守るために重要なのはとにかく早期発見・早期治療です。

体表、とくに乳腺部を日頃からよく触り、しこりや違和感に気づいたら速やかに獣医師に相談してください。

乳腺部を触る時のポイントは次の通りです。

・猫を仰向けにして触る
・脇の下から脚の付け根まで広い範囲を触る
・表面を撫でるだけでなく、つまむように触る
・嫌がったら無理せずいったん休憩する

このセルフチェックを猫とのコミュニケーションにぜひ取り入れてみてください。
早期治療によって救われる猫が増えてくれることを願います。

文責 獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は腫瘍、とくに体表面にできる腫瘍のお話をしたいと思います。

体表面にできる腫瘤(しこり)は飼い主さんが最も気付きやすい病変の一つです。
実際に診察をしていても、

『少し前からしこりがあるんです。これ何ですか?』

この質問をよく耳にします。

ワンちゃん、ネコちゃんを普段からよく触り観察してらっしゃる飼い主さんは、僕たちが驚くほど小さな腫瘤もみつけて教えてくれます。

頭が下がります。

では、『これ何ですか?』についてお話ししていきます。

結論から申し上げると、その場で『これは〇〇です。』と断定することは不可能です

僕たちは飼い主さんが気づいた、もしくは診察中に体表腫瘤を見つけた場合、次のような思考回路で診断を進めていきます。

①腫瘤がいつから存在していたか

②腫瘤がどこに存在しているか

③腫瘤に気づいてから現在まででサイズや数の変化があったか

④腫瘤はどんな細胞で構成されているか

①〜③までについて飼い主さんからお話をお伺いし、どんな病変の可能性があるかを考えます。

そして、悪性の病変を疑う際に④へ進みます。

④を調べる際、『生検』という手段を用います。

生検とは、なんらかの方法で病変を構成する細胞や組織を採取し調べる方法です。

特に、体表腫瘤の場合は細い針で病変を刺し細胞を集める針生検、そして集めてきた細胞を評価する細胞診という診断方法をよく用います。

細胞診の結果を基に、悪性腫瘍の可能性が高い場合は腫瘍自体の性状、局所での広がり、遠隔転移の有無、全身状態の評価へと進み治療方法を検討します。

このお話を踏まえた上で、実際に診察室でどのような流れで進むかを記してみたいと思います。

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「うちのワンちゃんの背中にしこりがあるんです。」

『このしこり、いつ気づかれました?』

「2週間くらい前に触っていたら気付きました。」

『なるほど。では、2週間前に比べて大きくなっていたり、掻いたりなど変化はありますか?』

「とくに自分では気にしていなくて、大きさも変わっていないように思います。」

『分かりました。今のところしこりが急激に大きくなったり、本人が気にしたりという変化はなさそうですね。
このしこりがどんな細胞で出来ているかを調べるには細い針で刺して細胞を集める細胞診という検査法が必要になります。
この検査を行なって、その結果を基に今後の治療方針を検討していきましょうか。』

「お願いします。」

こんな感じです。
もちろん、この段階で細胞診を行わないケースもあれば、細胞診ではなく組織生検という手法を提示することもあります。

いずれにしても、もっとも大切なことは、しこりに気づいたらなるべく早く獣医師に相談していただきたいということです。

体表腫瘍の中には早期発見・早期治療することによって治療成績が格段に良くなるものも含まれています。

そうしたものをなるべく早く治療する、あるいは様子を見て大きくしてしまわないことが重要になってきます。

今回は腫瘍の中でも飼い主さんが気付きやすい体表腫瘤のお話をしました。

皆さんもワンちゃん、ネコちゃんを触ってしこりや病変にお気づきの方は一度ご相談してください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫の下顎に発生する痤瘡(いわゆる猫ニキビ)についてのお話をします。

猫ニキビについて

ネコちゃんの飼い主さんならご存知かと思いますが、猫は下顎を様々な場所に擦り付ける習性があります。
これは下顎の皮脂腺から出る分泌物を付着させることでマーキングを行なっていると考えられています。
猫ニキビは、この皮脂腺が詰まったり炎症を起こすことで発生します。
では、どのような症状を起こすのでしょうか。

初期の段階では、下顎に黒いツブツブが付着するようになります。
これは過剰に分泌された皮脂と毛が混じった物です。

次に脱毛や皮膚の赤みといった見た目の変化を起こします。
この段階で痒みや違和感を感じ、掻いたり擦ったりする動作が目立つようになります。
さらに進行すると細菌感染を生じ膿が出てくることもあります。

次に、猫ニキビを起こす原因はなんでしょうか。

その① グルーミング不足

猫は全身を自分で舐めて毛繕いをする動物です。しかし、顎の下は舐めることができず、十分なグルーミングが行なえていないケースがあります。


対策:コットンにお湯を染み込ませて優しく顎の下を拭いてあげましょう。ある程度拭けたら、毛に付着した水分を拭き取り終了です。

その② 食器

食器がプラスチック製の場合、表面に傷ができて凹凸が生じます。ここで細菌やカビが増殖し、接触する顎の下にニキビを発生させるケースがあります。また、食器の素材によってはアレルギー反応を起こしているケースもあります。
対策:食器をガラスや陶器製に変更し、こまめに洗浄する。

その③ストレス

引っ越しや家の周りの騒音、家具の配置換え、新しい猫を迎えたなど生活環境が変わることで著しいストレスを感じる子がいます。
ストレスによって引き起こされる病気は多岐に渡りますが、猫ニキビを含む皮膚疾患も該当します。

【対策】

まずはストレスの原因となっているものを探してみましょう。そして、それが改善できるものならば可能な限り改善してストレスを減らす工夫をしてみてください。猫は自らを取り巻く環境の些細な変化も鋭敏に感じ取ってしまいます。見落としがないかゆっくり探してみてください。

その他

ニキビダニ症(毛包虫症)が原因で炎症を起こし、猫ニキビが発生するケースがあります。このニキビダニという寄生虫は健康な猫の皮膚にも存在しているのですが、免疫の低下などの条件が重なると爆発的に増殖します。よって、ニキビダニ症の発生を確認した場合はそれを引き起こす基礎疾患の存在も考える必要があります。

【対策】

ニキビダニ症に対しては駆虫薬を使用。
基礎疾患については症例ごとに適切な検査を進めます。

最後に、飼い主さんが行なえるケアについて解説します。

原因の項目でも触れたのですが、顎の下はグルーミング不足が起きやすい場所です。

この部分をお湯で濡らしたコットンで優しく拭いてあげてください。
この際、ゴシゴシ擦ったり歯ブラシを使用するのは控えましょう
また、人間用のニキビの外用薬を塗布するのもやめてください

いかがでしょうか。
僕たちが診察していて、よく相談されるのが
「顎の下に黒いブツブツがあるんだけど・・・これなに?」
です。
つまり、多くの飼い主さんは猫ニキビの初期段階で病気を見つけているのです。

素晴らしい!

下顎の痤瘡はひどくなると痛みが強くなり、治るのにも時間がかかるようになります。

早期発見に加え、日頃のケアを導入することで猫ニキビで苦しむ猫ちゃんが減ってくれることを願います。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はご自宅での写真・動画撮影を強くオススメします!というお話をします。

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気になる症状があるときは、写真・動画撮影がおすすめ

普段診察する際に僕たちは問診から行ないます。

そして、なにか症状がある場合、具体的にどんな様子だったかをお伺いします。

ワンちゃん、ネコちゃんの症状を言葉だけで表すのは難しい

その際、飼い主さんはとても頑張って説明してくださるのですが、言葉で表現するのが難しいケースが多いです。

・例
昨日、突然発作を起こしました。
→前兆はあったか、持続時間、姿勢、意識の有無、初発か再発か、終了後の様子はどうかetc…

このようにその時の状況を詳しく聴取して診断を進めていくのですが、これをすべて客観的に表現するのはとても困難です。

特に初発の場合、飼い主さんもパニックになるので余計に客観的な評価ができなくなります。

そこで、オススメするのが写真・動画の撮影です。

ご自宅では手の届く場所にスマートフォンがあるはずなので、撮影すること自体はハードルの高い行為でないと考えています。

ここで問題になるのが、冷静に撮影ができるのか、ということです。

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そもそも、気になる症状がごく短時間である場合や、いつ発生するかわからない場合は撮影すること自体が困難です。

また、目の前でワンちゃん・ネコちゃんが苦しそうにしているのに動画を撮るという行動にネガティブな印象を持たれる飼い主さんもいらっしゃいます。

ワンちゃん、ネコちゃんの症状を撮影すると、診察に役立つ

しかし、撮影ができた場合は診断を進める上で重要な情報が一気に増えるため、可能であるならば撮影していただくことを僕は飼い主さんに強くすすめています。

また、動画だけでなく写真撮影もおすすめします。

特に、皮膚疾患の症状や病変の分布下痢や嘔吐をした際の吐物や糞便の性状など、これらも写真を撮っていただけると診断を進める際にとても役立ちます。

さらに、写真を撮っておくと経時的な変化を認識しやすくなります。

僕も普段の診察の際に頻繁に病院用スマホで写真を撮っています。

カルテに病変の性状や分布を記載するのと同時に写真を撮って残しておくことで治療反応を客観的に評価できます。

今回はご自宅での写真・動画撮影についてお話ししました。

もちろん、撮影できなければ診断が不可能というわけではないので、あくまで可能ならば撮影してくださいというお願いです。

実際にここ数年で、ご自宅での様子を撮影してくださる飼い主さんが増えました。

なかには僕がお願いする前に撮影してくださる飼い主さんもいらっしゃいます。
大変助かっております。

ワンちゃん・ネコちゃんは自分の症状を訴えられないので飼い主さんにお話しを聞いて診断を進めていきます。

動画や写真撮影が診断を進める上で非常に有用であることを認識していただき、病気の早期発見や早期治療に役立ってくれることを願います。

文責:獣医師 小川