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みなさま、こんにちは。

今回は動物の痛みについてお話をしたいと思います。

動物も当然痛みを感じる

まずは、動物にもヒトと同じように痛みがあります

当たり前のことなのですが、診察時に

「犬や猫も痛いんですか?」

とたまに聞かれることがあるので最初に明言しておきます。

動物はヒトのように痛みを言葉で伝えられない

ここでやっかいなのが、動物は例え痛みを抱えていても、〇〇が痛いと伝えることができないという点です。

つまり、動物が痛みのサインを出していることに飼い主さんが気づく必要があります。

動物が痛みを訴える10のサイン

そこで、動物が痛み、特に慢性痛を訴えている時のサインを10個示します。

普段動物と接していて次の項目に該当するものがないか意識しながら見てみましょう。

①散歩に行きたがらなくなった。行っても走らず、ゆっくり歩くようになった。

②階段や段差の登り降りを嫌がる、または動作がゆっくりになった。

③家の中や外であまり動かなくなった。

④ソファー、イス、ベッドなど高い所への上り下りをしなくなった。

⑤立ち上がるのが辛そうに見える。

⑥元気がなくなったように見える。

⑦飼い主や他の犬と、またはオモチャなどで遊びたがらなくなった。

⑧尾を下げていることが多くなった。

⑨跛行(足を引きずる、ケンケンする、着かないように歩くなど)がある。

⑩寝ている時間が長くなった、または短くなった。

これらのうち、1つでも当てはまる場合は慢性痛、とくに運動器疾患による慢性痛を抱えている可能性があります。

気を付けてあげたいのが、これらの変化は加齢によって頻繁に遭遇するということです。

つまり、「年とってきたし、こうなるよね」と思ってしまいがちなのです。

動物の痛みの原因は必ずしも加齢だけのせいではない

もちろん加齢に伴って上記の症状が認められることは事実です。

ただし、動物が慢性痛を訴えていることを認識せずに接していると、痛みをピックアップできていないケースが実に多いです。

僕たちも診察時にお話を聞いたり、触診して痛みを発見するケースはあるのですが、多くの場合で飼い主さんが痛みを認識していません。

動物と一番長い時間を過ごしているのは飼い主さんなので、日頃の様子を観察する際にこれらの項目を意識してもらえると幸いです。

動物が痛がっている様子に気づいたら?

では、動物が訴える痛みに気づいた際、どうすればよいでしょう?

まずは動物病院を受診してください

その際、どんな様子が気になって痛みがあると思ったのかを詳しくお伺いします。

その後、触診や歩様検査を進めていき、痛みの場所を特定します。

動物の痛みに対処する方法は?

痛みの部位や程度によって、消炎鎮痛剤やサプリメントを使用するケースもありますが、僕が最も指摘するのが肥満による体重過多です。

運動器の慢性痛は徐々に進行していくので、痛みがあることがわかった時点で肥満であるならば、最初にダイエットを強く勧めます

早い段階で体重を適正なところまで落としておかないと、いざ痛みがひどくなってきた時に薬やサプリを飲んでも、体重過多のせいで疼痛管理がうまくいかなくなってしまいます。

いかがでしょうか。

今回は動物の痛み、とくに慢性痛についてのお話をしました。

多くの動物が慢性的な痛みを抱えていながら、気づいてあげられていないというジレンマを抱え続けています。

動物が痛みを抱えていることを認識することで、少しでも痛みをピックアップすることができれば幸いです。

※また、今回のお話は動物のいたみ研究会(https://dourinken.com/forum/itamiken/?fbclid=IwAR1hto9eDObdbXFjVyASZjokwfWt0vwAIPt0ySwvILfOFyRymYi88UHNJ1g)が作成した評価項目を引用しています。

イラスト付きのチェックリストがダウンロードできますので参考にしてください。

文責:獣医師 小川

みなさまこんにちは。

今回は、ワンちゃん・ネコちゃんのご自宅での耳ケアの方法について解説したいと思います。

みなさんは、ご自宅でワンちゃん・ネコちゃんの耳を観察していますか?

特に耳が垂れている子の場合、めくって見ないと内部の観察はできません。

実際に、耳が炎症を起こしているにもかかわらず飼い主さんが気づいておらず、ひどくなってから受診されるケースにも数多く遭遇します。

病気の早期発見のためにも日常的な耳の観察とケアは重要です。

耳のどこを見れば良いのか、耳のケアは何を行えば良いのかについて順番に解説していきます。

耳を観察する際のポイント

まずは、耳の外と内を観察する習慣をつけましょう。

前述したように、耳の外側の皮膚や耳介部は普段のスキンシップを行なっていれば観察しやすい部位なのでしっかり見ている飼い主さんが多いかと思います。

耳の中を覗いてみよう

そこでもう一歩踏み込んで耳の中を覗いてみましょう。

耳が垂れている子なら耳を持ち上げて耳の穴の中を見る。

耳が立っている子なら耳を少し後ろに引っ張って耳の穴の中を覗いてみてください。

観察すべきポイントは次のような点です。

・掻いた跡や赤くなっている場所がないか

・探さなくても分かるほどの大量の耳垢(ミミアカ)が付着していないか

・普段とは異なる臭いがないか
→正常な耳でも無臭ではありません。あくまで、普段と違う臭いがしないかを意識してください

・触った時に嫌がる場所がないか

・左右で差がないか

これらのポイントに該当する場合、耳になんらかのトラブルが生じているケースが考えられるので早めに受診してください。

おうちで耳のケアをしてみよう

次に、日頃のケアについてお話します。

診察時にどんなケアを実施されているか質問するのですが、みなさん様々な方法をとっていらっしゃいます。

綿棒を使ってケアをする際は注意が必要

その中で僕が注意した方が良いと指摘するのが綿棒を用いたケア方法です。

綿棒はヒトが耳掃除をする時に頻繁に用いるので、耳ケアの代名詞のようなイメージがあります。

しかし、これを動物に適用するにはかなりハードルが高いです。

なぜなら、綿棒を操作している時に先端が目視できていないからです。

ヒトが自分の耳を綿棒で掃除する際は痛みが無いように調節して行うので大きな損傷につながるケースは少ないです。

しかし、動物の場合はこうはいきません。

耳に綿棒を入れるのをそもそも嫌がったり、入れている途中に急に暴れ出したりします。

そうなると、外耳道内で綿棒の先端が強く擦れて損傷させてしまう可能性があります。

では、どのような方法が良いのでしょうか。

コットンとお湯を使った耳のケアがおすすめ

僕が飼い主さんに耳のケアを指導する際に最も勧めるのがコットンとお湯を用いる方法です。

①化粧用のコットンを指に巻き、人肌程度のお湯に浸します。

②ある程度水分を切って、指が無理なく入る範囲を優しく拭き取ります。

これだけです。

基本的に耳は外側に汚れを排出する機能があるので、放っておいても汚れは外に出ます。

このケアは出口に付着した汚れを拭き取るのと、前述した観察を行うのが主な目的です。

観察して異常を感じた場合は診察を受けていただき、症状に応じた処置を個別に指示することになります。

いかがでしょうか。

今回は耳の観察とケアについてお話しました。

とくに観察することが最も重要で、普段とは違うなと感じられることが病気の早期発見に繋がります。

耳の異常は耳の病気だけでなく、アレルギーや代謝性疾患によって発生することも考えられます。

今回のお話が皆さんの日頃の観察とケアに役立ってくれると幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は、ワンちゃんを抱っこする際のポイントについてお話したいと思います。

ワンちゃんを抱っこする際の5つのポイント

ワンちゃん、特に小型犬の場合は抱っこする機会が多いかと思います。

その際、みなさんはどのように抱っこしていますか?

抱き上げる時、抱っこしている時、降ろす時、それぞれの場面で気をつけたいポイントがあるので順番に解説していきます。

①抱き上げるときは背骨と地面の平行を意識する

まずは大前提として、普段のワンちゃんの姿勢を考えてみましょう。

ワンちゃんは4本足で立っているので、普段は背骨と地面が平行になっています。

抱っこする際もこの状態をなるべく維持してやることがポイントです。

つまり、片方の腕でワンちゃんの体の前半分(胸のあたりを支えると安定します)を、もう片方の腕でワンちゃんのお尻あたりを支えて抱き上げてやるのが理想的です。

②脇の下に手を差し入れて抱っこはNG

一方、避けて欲しい抱き上げ方もあります。

ワンちゃんの脇の下に手を差し入れてそのまま抱き上げる方法です。

ちょうど、人間の子供をたかいたかいするやり方ですね。

これは背骨が地面と垂直になり、さらに下半身がフリーなので脊椎に負担がかかる可能性が高いです。

また、この抱き上げ方を日常的に行なっていると肩関節や周囲の組織に負担がかかり、肩関節不安定症などの病気を発症する可能性もあります。

小型犬はヒョイっと抱き上げられてしまうので、これをやってしまいがちですが是非見直していただきたいポイントです。

③抱っこ中は必ず両手でワンちゃんを支える

こちらも大前提として、必ず両手でワンちゃんを支えてください。

抱っこされている時にずっとおとなしくしているとは限りません。

びっくりしたり、興奮した際にしっかり支えていないと落下して外傷や骨折を起こす事故が考えられます。

④ワンちゃんを肩に乗せるのは非常に危険

また、たまに見かけるのがワンちゃんを肩に乗せる抱き方です。

腕で抱くよりもさらに不安定で、より高所からの落下の危険があります。

さらに、とっさに尻尾や脚をつかむことで二次的な被害が生じる可能性もあるため、心当たりのある方は見直していただきたいです。

⑤降ろすときは、足が4本地面に着いてから手を離す

ここで守って欲しいポイントは足が4本とも地面に着いてから腕を離してあげることです。

ワンちゃんが暴れた際に空中で腕を離してしまい、飛び降りる形になってしまうことがあります。

着地に失敗して怪我をする危険性ももちろんあるのですが、しっかり着地が出来たとしても関節に負荷がかかってしまいます。

特に、肩関節が最も負担を生じる場所で、飛び降りてから前脚を挙げているという症例によく遭遇します。

実際に、20cmほどの高さでも肩関節を損傷した子もいるので、降ろす時は足がきちんと着いていることを確認してから腕を離すように気をつけてください。

いかがでしょうか。

今回はワンちゃんを抱っこする際のポイントについてお話しさせていただきました。

特に①に関しては、この抱き上げ方を行なってワンちゃんが空中で暴れた結果、胸腰部の椎間板ヘルニアを発症した症例がいます。

人間側がポイントを押さえて注意することで病気の発生が回避できるので、参考にしていただけたら嬉しいです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はレプトスピラ症のお話をしていきたいと思います。

レプトスピラ症ってどんな病気?

レプトスピラ症は、病原性レプトスピラ感染による細菌性人獣共通感染症です。

自然界での保菌動物はネズミなどの野生動物で、これらの動物の尿に含まれるレプトスピラに汚染された土壌や水に接触し経皮感染を起こします。

体内に侵入したレプトスピラは初期は血液中で検出されますが、やがて腎臓や肝臓で増殖しその結果、肝不全や腎不全を引き起こします。

また、治療が成功しても数ヶ月の間は尿中にレプトスピラが排出されるため、新たな感染源になる可能性もあります。

レプトスピラ症に罹っているか確認する方法は?

次はレプトスピラ症の診断及び治療についてです。

診断は、急性の腎臓腫大など臨床的にレプトスピラ症の疑いがある症例の血液を用いてPCR法などにより判断します。

レプトスピラ症は治療できるの?

病態初期であれば抗生剤の長期連続投与で対応しますが、多くの症例は腎不全や肝不全に陥っており治療反応に乏しいケースも多いです。

ワクチンでのレプトスピラ症予防について

では、今回のメインの話題であるレプトスピラ症の予防とワクチンの関係について解説していきます。

ワンちゃんのワクチンを実施する際、〇〇種混合ワクチンという単語を耳にされたことがある方が多いかと思います。

実際に僕も診察時に質問されてお答えする機会が多い話題です。

この混合ワクチンの内訳ですが、接種が推奨されている5種+レプトスピラ症の血清型がいくつ入っているかで決まっています。

現在、当院で取り扱っている犬のワクチンは5種と7種ですが、これらを例にすると次のような内容になります。

5種混合ワクチン

・犬ジステンパー

・犬伝染性肝炎

・犬アデノウイルス2型感染症

・犬パルボウイルス感染症

・犬パラインフルエンザウイルス感染症

7種混合ワクチン

・犬ジステンパー

・犬伝染性肝炎

・犬アデノウイルス2型感染症

・犬パルボウイルス感染症

・犬パラインフルエンザウイルス感染症

・犬レプトスピラ症イクテロヘモラジー型

・犬レプトスピラ症カニコーラ型

これら以外にも8種以上の混合ワクチンも流通していますが、これは他のレプトスピラ症の血清型が含まれているタイプです。

何種類のレプトスピラの血清型が含まれていれば良いかという明確な規定は現在のところ設けられていません。

当院では日本国内での発生報告のうち割合の多い2型が含まれている7種混合ワクチンを使用してレプトスピラ症の予防に努めています。

何種の混合ワクチンを接種すべき?

実際に5種と7種の選択をする際に僕自身が基準としているのは、ワンちゃんが完全室内飼育かどうかです。

前述した通り、レプトスピラ症は保菌動物の尿によって伝播する感染症です。

つまり、少しでも屋外に出て保菌動物の尿とコンタクトを取る可能性のあるワンちゃんについては7種混合ワクチンの接種をしていただくようにお話ししています。

今後、5種と7種以外のワクチンを取り扱うかどうかは疾病の発生状況により検討したいと考えています。

いかがでしょうか。

今回は人獣共通感染症であるレプトスピラ症についてのお話をしました。

とくに、ワクチンに関しては飼い主さんにとって身近な話題にもかかわらず周知されていない情報が多いと感じます。

ワンちゃんのワクチンの種類や接種に関して疑問がございましたら獣医師にお尋ねください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はノミが媒介するワンちゃん・ネコちゃんの病気、そしてヒトにも影響のある人獣共通感染症についてお話したいと思います。

ノミってどんな生き物?

まずはノミについてのお話からです。

ノミは卵→幼虫→さなぎ→成虫という生活環を持った昆虫です。

ノミの成虫は光や音、二酸化炭素に反応して動物に飛びつき体表に寄生します。

吸血と産卵を繰り返し、環境中に広がる

寄生すると数分で吸血を始め、その後48時間以内に産卵をします。

成虫の寿命は2ヶ月ほどですが、それまでの間ずっと吸血と産卵を繰り返します。

成虫から産卵された卵は動物の体表にはとどまらず、多くの場合は環境中に広がっていきます。

そして、好適環境下で卵は孵化し幼虫、さなぎ、成虫と成長していきます。

ノミに寄生されると、完全に駆除するには時間がかかる

このような成長をするので、動物の体表面に居るノミを駆除しただけでは容易に再寄生と有害事象を生じてしまいます

これらの理由で、当院では、ノミ寄生がみられたワンちゃん・ネコちゃんには最低1年以上ノミ駆除薬を連続使用することを勧めています。

ノミが媒介する病気について

次はノミが媒介する病気のお話です。

ノミ自体が引き起こす病気やノミが運ぶ寄生虫性疾患や細菌性疾患などがあります。

中には人が罹患するものもあるので、是非知っておいていただきたいです。

節足動物関連性皮膚炎

ノミを含む節足動物との接触により引き起こされる皮膚炎です。

注意したいのは、吸血されなくても皮膚炎症状を引き起こす可能性があることです。

極端な例だと、ノミが体表面を歩いた箇所に皮膚炎が生じるケースもあります。

瓜実条虫症

瓜実条虫(いわゆるサナダ虫です)の卵をノミの幼虫が食べます。

ノミは成虫発育し、瓜実条虫もノミの体内で幼虫に発育します。

この状態のノミをワンちゃん・ネコちゃんが食べてしまうと瓜実条虫に感染します。

感染すると、通常は無症状で経過しますが、瓜実条虫が体の一部(体節と言います)を切り離して肛門から排泄される際に動物が不快感を覚えます。

また、大量寄生の場合は激しい下痢や体重減少を認める場合もあります。

そして、この瓜実条虫症はヒトが誤ってノミを摂取してしまった場合、同じことが起こります。

ヒトがノミを摂取するイメージが掴みにくいと思いますが、寝ている間に口に侵入したり、ワンちゃん・ネコちゃんを触ってノミが付着しているのに気づかず口に侵入してしまうケースがあります。

ネコひっかき病(バルトネラ症)

バルトネラ・ヘンセレという細菌を保有したノミを犬・猫が摂取することで感染します。

ただし犬・猫は感染しても無症状なので基本的に治療介入はしません

ここからが問題です。

感染した犬や猫からの咬傷や引っ掻き傷からヒトの体内にバルトネラ菌が侵入し感染が成立します。

症状は、リンパ節の腫脹と発熱が典型例ですが、それ以外にも不明熱、視神経網膜炎、肝・脾肉芽種、急性脳症、心内膜炎など重症化する非典型例も報告されています。

また、犬・猫を介さずに直接ノミに咬まれて発症したと考えられるケースも報告されています。

いずれにしても、定期的なノミの駆除と環境中からのノミの排除が予防方法となります。

冬場でも定期的なノミ予防がおすすめ

前述した通り、ノミ寄生が確認された場合、既に環境中にノミが拡大していると考えていただいた方が良いです。

そして、ノミの発育にとって冬場の室内はとても好ましい環境になっています。

寒くなってきたからと油断せず、ワンちゃん・ネコちゃんの、そしてヒトの疾患の予防のためにも定期的なノミ駆除を実施することを強く勧めます。

ノミによる有害事象やノミ駆除について不安に思われることがありましたら、獣医師にご相談ください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫白血病ウイルス(FeLV)感染症についてのお話をしたいと思います。

猫白血病ウイルス(FeLV)感染症って?

FeLV感染症は猫白血病ウイルスの感染によって引き起こされる病気で、様々な免疫介在性疾患や腫瘍の発生を引き起こします。

猫白血病ウイルスにはどうやって感染するの?

感染経路は、感染猫の唾液・鼻汁との長時間の接触や経胎盤・経乳汁、性交による感染が知られています。

猫白血病ウイルスに感染するとどうなるの?

ウイルスが体内に侵入すると、まず扁桃や喉のリンパ節で増殖し始めます。

どんなウイルスでもこの段階から免疫によってウイルスが排除されだすのですが、FeLVの厄介な点は、30-40%の猫がウイルスを排除できず、持続型ウイルス血症になってしまいます。

そして、もっとも恐ろしいのが持続型ウイルス血症になってしまった猫は診断後、2-3年で死亡するケースが多い点です。

ネコちゃんが猫白血病ウイルスに感染しないようにするための3つのポイント

では、FeLV感染症を予防するために気をつけるべき点を解説していきます。

①ネコちゃんを外出させない

もっとも重要でかつ効果的な方法です。

FIV感染症の記事でも解説しましたが、感染猫との接触の可能性をなくすことが最も予防効果が大きいです。

また、外出すると他の感染症やケガ、交通事故など様々な危険があるのでこちらを予防するためにも完全室内飼育をおすすめします。

②ワクチン接種

→流行地域や外出の可能性がある猫にはワクチン接種を推奨します。

ワクチンを打つ場合、まずFeLV感染の検査を実施し、陰性が確認されてから接種します。

接種のタイミングや間隔はその時置かれている状況により判断するので獣医師に相談してください。

ただし、ワクチンは一定の効果は見込めますが接種していれば100%予防できるというわけではないので注意が必要です。

③感染猫との緩やかな隔離

→多頭飼育のご家庭で、感染猫を新しく迎える、あるいは感染猫が居るご家庭に新しい猫を迎えるケースがあるかと思います。

この場合、非感染猫と感染猫をある程度隔離する必要があります。

FeLVは噛みつきや性交などの濃厚接触で感染するので、これを防ぐことができる程度の隔離を行ないます。

また、FeLVは比較的弱いウイルスなので、感染猫を触った人間は一般的な手洗いとアルコール消毒を実施すれば非感染猫にウイルスを運ぶ心配はまずありません。

猫白血病ウイルスの検査について

次にFeLVの検査についてお話します。

外出歴のある猫で過去の感染が気になる場合や、新しい猫を迎える際に院内で簡易検査キットを用いて検査を実施します。

簡易検査キットで感染を確認

この検査はELISA法という検査方法を用い、少量の血液で短時間で結果が出るのでとても重宝します。

検査のタイミングによっては正確な結果が出ない場合がある

ただし、結果の解釈には注意する必要があります。

この検査はFeLV抗原を検出する検査なので、『感染しているがウイルスが産生されていない場合』は結果が陰性になってしまいます。

つまり、感染してから体内でウイルスが増殖するまでの間はグレーゾーンになってしまうので、感染が疑わしい場合は3-6ヶ月後に再検査を行なって確認する必要があります。

いかがでしょうか。

病気に対する周知とワクチンの普及で以前に比べると発生件数は減少してはいます。

ただし、外出し喧嘩してしまった猫では感染が確認されることがあります。

最も効率の良い予防方法は完全室内飼育ですが、感染猫と共存する際にも抑えるべきポイントを守り感染を広げないようにすることは可能です。

ネコちゃんの生活スタイルを振り返り、感染のチェックやワクチン接種について興味を持たれた方は獣医師に相談してみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は無麻酔での歯石除去の是非についてお話したいと思います。

歯石除去は無麻酔で出来るの?

まず結論です。

当院では絶対に無麻酔での歯石除去は実施しません

診察時に口の中を診ていると、程度の差はありますが歯周病のワンちゃん・ネコちゃんが非常に多いです。

飼い主さんが認識できているケースとそうでないケースがあるのですが、たまに耳にするのが

「歯石除去って全身麻酔をするんですか!?」

「トリミングサロンで無麻酔でやってるって聞いたんですけど・・・」

こういった質問です。

確かにヒトが歯科医で歯石除去をしてもらう際には全身麻酔は行われないので、イメージの相違があるのかもしれません。

ヒトは治療をすることやその内容を理解した上で協力できるので麻酔をかける必要がありません。

しかし、ワンちゃん・ネコちゃんはそうではありません。

無麻酔で歯石除去をするメリット

無麻酔で歯石除去をする上で得られるメリットは、『全身麻酔をかけないこと』の一点のみです。

無麻酔での歯石除去は圧倒的にデメリットが多い

一方、無麻酔歯石除去のデメリットは以下のようなものが挙げられます。

・歯周病の進行最前線である歯肉縁・歯周ポケットに無麻酔でアプローチすることは困難であること

・目に見える範囲の歯石だけを除去することは動物の健康維持には効果がなく、単にきれいになった感じがするだけであること

・舌側・口蓋側・後臼歯部など、無麻酔ではアプローチが困難な点があること

・固着した歯石を除去するために無麻酔で鋭利なスケーラーを口腔内で操作すると、組織損傷の危険性があること

・歯冠部(目に見えている部位)はきれいになったように見えるので、歯周病が隠されてしまい、飼い主さんが気づかないうちに重篤化してしまうこと

・歯石除去後のポリッシング(研磨)ができないので、歯の表面が粗造になり歯垢・歯石が沈着しやすくなること

・不完全にしか処置が出来ないにもかかわらず、意識下で我慢させられたり痛みを感じたりするため、その後のデンタルケアを嫌がるようになる可能性があること

・重度歯周病の症例では無麻酔歯石除去により顎骨骨折などの重篤な合併症を引き起こす可能性があること

メリット(僕はこう呼ぶのさえ疑問に感じています)と比べてデメリットが圧倒的に多いです。

確かに、全身麻酔はリスクを伴う行為であり飼い主さんが、「麻酔をかけないで済むのなら」と思う気持ちは理解できます。

しかし、こんなデメリットだらけの処置を行なうことがワンちゃん・ネコちゃんの健康維持には繋がりませんし、かえって健康を損なう可能性が高いです。

そしてこれは獣医師側が正しい知識を持ち、飼い主さんに対して適切な説明をすることの責任が大きい事象でもあります。

実際に、無麻酔での歯石除去についてはアメリカ獣医歯科学会・ヨーロッパ獣医歯科学会でも推奨していません。

ワンちゃん・ネコちゃんの日頃のデンタルケアが重要

歯周病は飼い主さんが気づかれていないだけで、実際には発症している子が非常に多い病気です。

これを予防するためにも日頃のデンタルケアの導入・維持がとても重要です。

(詳しくはこちらの記事をご参照ください

歯みがきが上手にできなくてお困りの方、歯周病の有無が気になる方は診察時にお尋ねになってください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は、ネコちゃんのトイレと排尿障害についてのお話をしたいと思います。

寒くなると増えてくるネコちゃんの排尿障害

最近、急激に寒くなってきましたね。

冬になると増える傾向がある病気の一つに排尿障害があります。

そして、ネコで排尿障害を起こす病気としては膀胱炎が最もよく知られています。

この膀胱炎を起こす要因として内的要因と外的要因が存在すると考えられています。

外的要因には生活環境、食事、そしてトイレが含まれています。

すなわち、トイレの環境を適切に整備してあげることで膀胱炎の予防・治療につながるのです。

ネコちゃんにとって理想的なトイレ環境は?

では、ネコちゃんにとって適切なトイレとはどんなものでしょうか。

答えは『公園の砂場のような場所』です。

つまり、

十分な広さがある

→体長の1.5倍以上が望ましい。

遮蔽物に覆われていない

→ドームに覆われているタイプのトイレを使用している場合、可能ならドームは外すことが望ましい。

十分な量の砂があり、排泄物の痕跡をきちんと隠せる

→砂をたくさん掻いてもトイレの底がみえないくらいの量が必要。

この条件を満たしてやる必要があります。

これが満たされていないトイレを使用していると、トイレ以外の場所での不適切な排尿が増えたり、排尿を我慢することによって膀胱炎を発生させてしまいます。

ネコちゃんのトイレ環境で気をつけたいポイント

また、次のような点にも気をつける必要があります。

・多頭飼育の場合、トイレはネコちゃんの数+1つ以上用意する

→それぞれの専用トイレがあることが望ましい。

ただし、飼育頭数が多く設置数に限界がある場合は、ネコちゃんのグループ数+1つ以上の設置が望ましい。

・砂の材質はネコちゃんの好みに合わせて選択する

→鉱物系、木材系、紙系などさまざまな種類があるが鉱物系を好む傾向にある。

ただし、好みが別れるのでケースバイケースで選択する。

・トイレはネコちゃんが落ち着く場所に設置する

→人の出入りが激しいドア付近の設置は避けるべき。

また、家電の近くに設置すると急な音や振動、光などの意図しない刺激が発生する可能性があるので避けるべきである。

いかがでしょうか。

ご自宅のトイレの設置状況を振り返ってみて、これらの条件を満たしているでしょうか。

さらに、不適切なトイレの整備は排尿障害だけではなく、トイレ以外の場所での排尿の常習化という問題行動を誘発する可能性もあります。

排尿障害、問題行動のいずれについてもトイレの整備を含めた外的要因を適切に管理する必要があります。

冬本番になると診察件数が増える排尿障害ですが、トイレの整備という取り組みやすいところから病気の予防になってくれると幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はワンちゃん・ネコちゃんの避妊手術を実施することで得られるメリットと発生するリスクについて解説していきます。

ワンちゃんが避妊手術を受けるメリット・デメリット

前回、去勢手術についてのお話をさせていただいたのですが、避妊手術についてのご相談も受けることが非常に多いです。

そもそも避妊手術ってなに?

まずは避妊手術という言葉の定義からお話します。

今回のお話では、

『避妊手術=子宮・卵巣の切除術』

このように定義しています。

(※理由はこの後登場します)

ワンちゃんが避妊手術を受けるメリット

では、まずはワンちゃんのお話からです。

ワンちゃんが避妊手術を実施することで得られるメリットは次のようなものが挙げられます。

①不適切な妊娠を回避できる

②発情周期に依存した体調の変動が消失し子宮・卵巣疾患の予防ができる

③早期に避妊手術を実施することで乳腺腫瘍の発生リスクが軽減できる

②については、子宮卵巣切除を実施するので子宮卵巣疾患の発生を防ぐことができます

同時に、卵巣から分泌されるホルモンの影響が消失するので発情に関連する体調不良も消失します。

③については以下のような論文(https://academic.oup.com/jnci/article-abstract/43/6/1249/910225)が発表されています。

『避妊手術を実施するタイミングと未避妊犬と比較して乳腺腫瘍発生率がどうなるか

・初回発情までに実施:未避妊犬と比較して乳腺腫瘍発生率が0.5%に減少

・初回〜2回目までに実施:未避妊犬と比較して乳腺腫瘍発生率が8%に減少

・2回目以降に実施:未避妊犬と比較して乳腺腫瘍発生率が26%に減少』

避妊手術を実施すれば100%乳腺腫瘍の発生を予防できるわけではありません。

しかし、未避妊犬と比較して明らかに発生率に差があることが報告されているため、僕は2回目の発情までに避妊手術を実施することを勧めます

また、この論文で行われている術式が子宮卵巣切除術であるため、冒頭で述べたように

「避妊手術=子宮卵巣切除術」と定義しています。

ワンちゃんが避妊手術を受けるデメリット

では、避妊手術を行なう上で予想されるデメリットはどんなものがあるでしょうか。

①全身麻酔をかける必要がある

②術後の増体重が発生する可能性がある

①については去勢手術のお話でも述べた通り、個別に麻酔のリスクを判定した上で術前に飼い主さんにお伝えします。

②についても同様に、術後ご飯の量が同じでも体重が増えてしまう子がいます。

特に、避妊手術後の子が最も多い印象があるため、体重過多になった場合は適切な減量の指導を行ないます。

ネコちゃんが避妊手術を受けるメリット・デメリット

次はネコちゃんのお話です。

ネコちゃんが避妊手術を受けるメリット

ネコちゃんに避妊手術を実施することで得られるメリットは次のようなものがあります。

①不適切な妊娠が避けられる

②子宮・卵巣疾患の発生予防ができる

③早期に避妊手術を実施することで乳腺腫瘍の発生率を下げることができる

①、②についてはワンちゃんと同様です。

③については、特にネコちゃんで非常に重要です。

猫の乳腺腫瘍はほとんどが悪性腫瘍であり、どこかに1つでも腫瘍があると片側乳腺の全摘出術が推奨される極めて厄介な疾患です。

猫においても次のような論文が報告されています。

『避妊手術を実施するタイミングと未避妊猫と比較した乳腺腫瘍発生リスク減少率

・生後6ヶ月齢までに実施:未避妊猫と比較して乳腺腫瘍発生リスク減少率91%

・7〜12ヶ月齢で実施:未避妊猫と比較して乳腺腫瘍発生リスク減少率86%

・13〜24ヶ月齢で実施:未避妊猫と比較して乳腺腫瘍発生リスク減少率11%』

(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1939-1676.2005.tb02727.x?sid=nlm%3Apubmed)

ワンちゃんと同様、避妊手術を実施していれば100%乳腺腫瘍の発生を予防できるわけではありません。

しかし、前述したようにネコちゃんの乳腺腫瘍はほとんどが悪性であることと、早期の避妊手術実施で発生リスクを減らせる可能性があるため、僕は生後1年までで避妊手術実施を勧めます。

ネコちゃんが避妊手術を受けるデメリット

では、避妊手術を行なう上で予想されるデメリットはどんなものがあるでしょうか。

①全身麻酔をかける必要がある

②術後の増体重が発生する可能性がある

こちらはワンちゃんと全く同じです。

ただし、②についてはネコちゃんの方がよりコントロールが難しい場合が多いため注意が必要です。

いかがでしょうか。

前回と今回に渡り、去勢手術と避妊手術についてのお話をさせていただきました。

飼い主さんの関心が高い話題なのですが、疾患との関連(特に乳腺腫瘍)についてはまだまだ周知されていない印象を受けます。

今回のお話が疾患の予防に結びついてくれれば幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はワンちゃん・ネコちゃんの去勢手術を行なう際のメリットとリスクについて解説していきます。

ワンちゃん・ネコちゃんの去勢手術のメリット・デメリット

「去勢手術ってやっぱりやっておいた方が良いですか?」

日頃診察している際に、とてもよく聞かれる質問です。

飼い主さんの関心も高く、ワンちゃん・ネコちゃんで考え方が変わってきます。

今回はワンちゃん・ネコちゃんそれぞれで去勢手術を行なう際の目的と発生するリスクを分類してお話します。

ワンちゃんが去勢手術を受けるメリット

まずはワンちゃんからです。

ワンちゃんに対して去勢手術を実施する際に得られるメリットは以下の通りです。

①未避妊雌と接触する可能性がある場合、不適切な妊娠が回避できる。

②精巣腫瘍を含む精巣疾患の予防ができる。

③高齢犬に好発する前立腺疾患の予防効果がある。

特に②と③については去勢手術を実施している子としていない子で発生率が大きく変わってきます。

飼い主さんとお話する際も、この点を特に重要視しています。

ワンちゃんが去勢手術を受けるデメリット(リスク)

次に、ワンちゃんに対して去勢手術を実施する際に考えられるリスクは以下の通りです。

①全身麻酔を実施する必要がある。

②去勢手術実施後の体重管理が困難になる可能性がある。

①については全ての手術で発生するリスクであり、去勢手術に関しても例外ではありません。

②については、多くのケースで体重増加傾向を認める印象があります。

体重過多が管理できない場合は個別にダイエットの指導を行ないます。

ネコちゃんが去勢手術を受けるメリット

次はネコちゃんです。

ネコちゃんに対して去勢手術を実施する際に得られるメリットは以下の通りです。

①スプレー様の排尿行動が消失する可能性がある。

②精巣腫瘍を含む精巣疾患の予防ができる。

①については消失するケースが多いのですが、中には全く行動の改善が認められないケースもあるので注意が必要です。

②についてはワンちゃんと比べてネコちゃんでは精巣疾患の発生が稀であるため、主目的として捉えてはいません。

次に、ネコちゃんに対して去勢手術を実施する際に考えられるリスクは以下の通りです。

①全身麻酔を実施する必要がある。

②去勢手術実施後の体重管理が困難になる可能性がある。

こちらはワンちゃんと同様です。

さまざまなシチュエーションで去勢手術実施の是非を検討してらっしゃる飼い主さんがおられるかと思います。

今回お話させていただいた内容は、一般的に去勢手術を実施する際のメリットとリスクについてです。

基礎疾患を抱えている子や特殊な事情があって去勢手術を検討されている場合は、今回のお話だけではカバーできていないので直接獣医師にご相談ください。

いかがでしょうか。

次回はワンちゃんとネコちゃんの避妊手術に関してのお話を予定しています。

こちらも合わせて確認してみてください。

文責:獣医師 小川