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みなさま、こんにちは。

今回は、ワンちゃん・ネコちゃんの爪切りについてお話させていただきます。

みなさんはご自宅でワンちゃん・ネコちゃんの爪切りをしていますか?

抵抗なく爪を切らせてくれる子、初めは我慢できるけど途中で嫌がってしまう子、そもそも触らせない子などさまざまな状況があるかと思います。

今回は爪切りの導入の仕方、爪切りの選択、爪切りをしないことによる弊害について解説していきます。

ワンちゃん・ネコちゃんの爪切りはどうやるの?

まずは、ご自宅での爪切り導入の方法からです。

幼犬・幼猫時から爪切りを習慣化しよう

爪切りを習慣化するのに最適なタイミングは幼犬・幼猫時です。

ご自宅に来た頃から爪を含めた手先・足先を触ることに慣れておくと、大人になってからも爪切りに抵抗を覚えない場合が多いです。

また、この時期はハミガキを導入するのにも適した時期です。
(詳しくはこちらのハミガキについての記事をご参照ください)

大人のワンちゃん・ネコちゃんの爪切りを習慣化する3つのポイント

また、すでに大人になっている子の爪切りを今から頑張ってみようという場合は、次のポイントを押さえながら徐々に爪切りの習慣をつけていきましょう。

①一気に全ての爪を切ろうとせず、抵抗が出たらやめましょう。

②爪切りが終わったらご褒美(フードや少量のオヤツ)までを1セットにして習慣化する。

③それでも嫌がる子や、飼い主さんが不安な場合は動物病院を受診する。

爪切りは一気に終わらせてしまいたい気持ちはとてもよく分かります。

しかし、気長に地道に行なっていく方法がベストなので、くれぐれも無理はなさらないようにしてあげてください。

ワンちゃん・ネコちゃん用の爪切りはどれがおすすめ?

次は爪切りの選択についてです。

ワンちゃん・ネコちゃん用の爪切りはハサミタイプ・ニッパータイプ・ギロチンタイプ・電動タイプなどさまざまな種類があります。

僕も診察時にどれが良いかを質問されます。

飼い主さんの使いやすい爪切りを選択しましょう

僕の回答としては、

「飼い主さんの手に馴染んで使いやすいものを使用してください。」

これです。

各タイプにそれぞれメリット・デメリットはあります。

実際に使ってみて使いやすいものを選ぶことが事故予防に繋がります。

(ちなみに僕はニッパータイプとハサミタイプを状況に応じて使い分けています)

ワンちゃん・ネコちゃんの爪切りをしないとどうなるの?

最後に、爪切りをしないとどのような弊害が発生するかを解説します。

まずは、伸びすぎた爪が引っかかる又は折れてしまう事故が発生します。

これは、ワンちゃん・ネコちゃんいずれでも発生します。

ワンちゃんの場合、爪が伸びすぎたままで歩くと爪自体が引っかかって損傷するだけでなく、脚を滑らせて肩や膝の関節を損傷するケースもあります。

ネコちゃんの場合、もともと爪を使って木に登るので把持する力が非常に強いです。

そのため、しがみ付いたネコちゃんを引き離す際に爪が剥離してしまったり、あるいはどこかに爪が引っかかった際、パニックになり暴れて爪を損傷するケースが多いです。

次に、伸びすぎた爪が湾曲し皮膚に刺さるケースです。

これは狼爪(いわゆる親指の爪です)でよく発生します。

爪が指の付け根の皮膚方向に向かって伸びてしまい、皮膚に突き刺さりながら伸び続けてしまいます。

こうなると常に痛みが生じ続けるので動かなくなったり、動きが悪くなったりします。

とくに高齢の子でみるケースが多いので、思い当たる方は一度爪をチェックしてみてください。

また、爪が伸びると同時に中に入り込んでいる血管と神経も伸びます。

定期的に爪を切っておかないと、適正な位置で切ろうとしても既に血管と神経が入り込んでしまい、出血と痛みを伴ってしまいます。

アスファルトの上を散歩するワンちゃん達は爪が削れるので発生しにくいのですが、完全室内飼育またはごく短時間の散歩のみの小型犬はこの状況に陥りやすいので注意してあげてください。

いかがでしょうか。

今回はワンちゃん・ネコちゃんの爪切りについて解説しました。

最も身近なケアの一つである爪切りですが、意外と難易度が高い場合があります。

今回のお話が日頃のケアの重要性を見つめ直す機会になれば幸いです。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症についてお話していきます。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症はどんな病気?

FIVは猫に感染して免疫不全症を引き起こす可能性のあるレトロウイルスです。

感染ルートは、主にFIVを保有するネコに噛まれた際に唾液や血液を介して伝播します。

つまり、完全室内飼育のネコでは感染リスクが低く、逆に外出するネコの場合は感染リスクが高くなると考えられます。

ネコがFIVに感染した際、次のような病態を辿ります。

①急性期

感染直後の数日間。発熱、食欲不振、リンパ節腫脹などがみられます。

ただし飼い主さんが気づかないケースがほとんどなので、このステージの猫を診察する機会がごく稀です。

②無症候性キャリアー期

急性期を経てウイルス血症が抑制された後、数年間は無症候で経過します。

そのままウイルスの複製が免疫によって持続的に抑制された場合、無症候のまま寿命を全うすることもあります。

③全身性リンパ節腫大期

全身のリンパ節腫大がみられることが多いです。

ただし、これも目立たないケースがあるため飼い主さんが気づかないことがあります。

④エイズ関連症候群期

口内炎・歯肉炎・上部気道炎・反復性細菌感染症・外部寄生虫感染症など免疫異常に伴う症状が現れ出します。

特に口内炎は難治性で強い痛みを伴うケースが多く、食欲低下や体重減少を起こしてしまう場合があります。

⑤後天性免疫不全症候群期

FIV感染症の末期で、さまざまな日和見感染症(通常の免疫力があれば感染しないような病原体に感染してしまうことです)や貧血、白血球減少症、腫瘍など免疫不全によって発生する症状が認められます。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症はどうやって調べるの?

次に、FIVの診断についてです。

診断は主に抗体検査キットを用いて実施します。当院で取り扱っている検査キットでは即時検査が可能です。(10分程度)

検査対象は、FIV感染を疑う症状を認めるネコ、これから飼い始める予定のネコ、野良猫との接触を疑うネコなどです。

ただし、FIV感染から抗体が作られてキットで検出できるようになるまでには2〜3ヶ月ほどのタイムラグが生じます

また、母猫がFIVキャリアーである子猫の場合、移行抗体というお母さんからもらう抗体の影響で偽陽性が出ることがあります

そのネコが本当にFIV感染しているのか正しく評価するためには適切なタイミングあるいは複数回の検査が必要となります。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症の予防や治療は?

次は予防と治療についてです。

FIV感染予防は、

ネコを完全屋内飼育にして外に出さない

これに尽きます。

主な感染ルートがFIV陽性猫による咬傷なので、そもそも接触する機会がなければ感染する心配はありません。

また、他のウイルス疾患、外傷、長期低栄養による肝リピドーシス、交通事故など飼い猫が外出することによって発生するリスクは数え切れません。

これらを予防するためにも完全屋内飼育を強く勧めます。

猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症は根治が難しい

また、治療についてですが残念ながらFIVは一度発症してしまうと根治させる治療方法が確立されていません

主な治療は、口内炎や上部気道炎などに対するステロイドを用いる方法や、反復する細菌感染に対して抗生剤を適宜使用する対症療法になります。

猫インターフェロンωの投与で生存期間が延長した報告もあるので、飼い主さんと情報共有しながら対症療法に何を組み込むか決定していきます。

いかがでしょうか。

今回はFIV感染症についてのお話をさせていただきました。

感染していない子は完全屋内飼育を徹底することで感染を回避することができます。

また、すでに感染している子も無症状のまま寿命を全うしてくれることもあります。

ただし、発症してステージが進むと目に見えてQOLが下がっていきます。

感染しないためにできることを徹底する。

万が一、感染してしまった場合はその時その子が置かれている状態に応じて必要な対症療法を積極的に行なうことでQOLを保った生活を送ることができます。

今回のお話がFIV感染症という病気を理解するための参考になれば幸いです。

文責:獣医師 小川

今回はワンちゃん・ネコちゃんの乗り物酔いに関してお話したいと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんも乗り物酔いをする?

ご存知ない方も多いかと思いますが、ワンちゃん・ネコちゃんもヒトと同じように乗り物酔いをすることがあります。

乗り物酔いは正式には動揺病と言い、乗り物の振動や加速などの刺激によって発生する一過性の病的反応と考えられています。

実際に、車に乗って病院に来たワンちゃん・ネコちゃんが車中や診察室で嘔吐をするケースにしばしば遭遇します。

乗り物酔いを引き起こす原因としては次のようなことが知られています。

①乗り物の揺れ・加速度の変化など

→日常生活を送っている際、ワンちゃん・ネコちゃんの体は生活の中で行なう動作の感覚を学習していきます。

ところが、乗り物によって引き起こされる揺れや加減速によって生じる重力は予測する感覚とズレが生じます。

このズレによって生まれる混乱が自律神経反射を誘発し、悪心や嘔吐が発生すると考えられています。

②車中の匂い・緊張

主な発生原因は①なのですが、緊張状態は車酔いに拍車をかけます。

大半のワンちゃん・ネコちゃんにとって車での移動は非日常的なイベントなので当然緊張します。

この緊張が迷走神経反射を強化し、悪心・嘔吐の発生率を高める可能性があります。

また、車中はさまざまな匂いがこもりやすい環境です。

ヒトよりも嗅覚刺激に敏感なワンちゃん・ネコちゃんにとって、車中の匂いも不快感を高める一因になってしまいます。

③満腹あるいは空腹

→食後すぐの状態あるいは空腹の状態で乗り物に乗ると、乗り物酔いが誘発するリスクが上昇することが知られています。

ワンちゃん・ネコちゃんの乗り物酔いを防ぐには?

これを踏まえた上で乗り物酔いを予防するための工夫として次のようなものが挙げられます。

①キャリー使用およびキャリーにタオルをかける

目から入る情報を制限することで感覚のズレを軽減し、乗り物酔い発生のリスクを下げる目的です。

また、キャリーを足元に置いたり、同乗者が押さえて揺れをなるべく軽減させるのも良いかもしれません。

②適度な換気・空調

匂いがこもりっぱなしになるのを避けるために走行中、時々窓を開けて換気をしてあげてください。

ただし、窓を全開にすると飛び出し事故につながるので、必要最小限で構いません。

また、タバコや芳香剤を使用している場合は、それらの使用中止や撤去を考えてみても良いでしょう。

③出発前に少量の食事を与える

空腹による車酔い発生を避ける目的です。

食べ過ぎてしまうと車酔いを起こしやすくなるので注意しましょう。

腹1分目くらいが目安です。

また、水は十分に与えトイレを済ませてから出発するのが望ましいです。

ただし、この方法は絶食指示が出されている際に動物病院に行く時は使えませんのでご注意ください

④抗動揺病薬の使用

→いわゆる、酔い止めの薬です。

①~③の工夫をしてみても車酔いしてしまう子はいるので、その場合は薬を処方します。

出発の1時間前に薬を飲ませてあげてください。

また、薬を飲んだ状態で①~③を合わせて行なうと、より効果的です。

いかがでしょうか。

実は僕自身が車酔いをするので、辛さが身に染みて分かります。

今回ご紹介したものの中で、抗動揺病薬は特に効果的だと認識しています。

実際に、処方した子の飼い主さんにお話を伺っても使用感が良いケースが多いです。

ワンちゃん・ネコちゃんの乗り物酔いに悩んでおられ、抗動揺病薬の使用を検討されている方は一度診察にいらしてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。


本日は肛門腺しぼりについてのお話をしたいと思います。

肛門腺とは

ワンちゃんもネコちゃんも肛門付近(時計の4時と8時方向)に袋状の器官があります。

これを肛門腺(または肛門嚢)と呼び、内部に分泌液が溜まっています。

肛門腺に分泌液が溜まるとどうなるの?

この分泌液が排便とともに排出される子もいれば、排出されずにどんどん溜まってしまう子もいます。

そして、溜まってしまう子の場合、自分で気にして舐めたり、お尻を地面に擦るような仕草をします。

これが続いてしまうと、皮膚が欠損し穴が開いてしまいます
(とても痛いです)。

これを予防するために僕たちは診察時に必ずと言っていいほど肛門線のチェックをしています。

肛門腺はどうやってしぼるの?

肛門の4時と8時方向の部分を触ると、分泌液が溜まっている子の場合は袋状の器官があるのがよく分かります。

この袋を保持してゆっくりと圧力をかけてやることで、内部の分泌物を排出することができます。

文章を読むだけでは伝わりにくいので、ご自宅でチャレンジしたい飼い主さんには目の前でやり方をお見せしてレクチャーしています。

肛門腺に溜まる分泌液

診察時に肛門線しぼりをする際、溜まっていたら必ず排出させて観察します。

通常、溜まる分泌物は茶色の液体なのですが、ペースト状に固まったものが溜まる子もいます。

この場合、排出させるのが難しくなるので、ご自宅で実施困難な場合は無理せずに診察時におっしゃってください。

おうちでの肛門腺しぼりが難しい場合は早めの受診を

また、普段は茶色の液体が排出されるのに緑色の膿状の液体が排出されたり血液が混入しているケースがあります。

この場合、肛門嚢炎等の疾患を起こしている可能性があるので適切な治療介入が必要となります
(ご自宅で発見された場合は早めに受診してください)。

ネコちゃんの肛門腺しぼり

また、ネコちゃんの肛門腺についてですが、ワンちゃんと比べると溜まってしまうケースは少ないです。

ただし、排出できない子もいるので注意は必要です。

猫ちゃんの場合、ワンちゃんと解剖学的な位置関係は同一なのですが、肛門腺の開口部に分泌物が詰まってしまうケースが多いです。

この詰まりを解除してあげないと圧力をかけても内部の分泌液が排出されないので、無理矢理しぼると痛がり触らせてくれなくなります。

特に猫ちゃんは違和感を感じる部位に対する舐め壊しがすぐに発生します。

猫ちゃんがお尻周りを気にして舐めていたり、お尻周りに分泌物の付着を見つけた場合は早めに診察にいらしてください。

いかがでしょうか。

初めてワンちゃん・ネコちゃんを飼われる方の中には、肛門線の存在を知らない方もいらっしゃるかと思います。

また、存在は知っていても溜まったままにしておくと疾患が発生する可能性があることを知っていただけたかと思います。

ご自宅で肛門線しぼりにチャレンジしてみたい方、またはワンちゃん・ネコちゃんがお尻周りを気にしていて心配な方は診察時にお伝えください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は手術や検査などの際の、事前の絶食の重要性についてお話します。

忘れると危険!?検査・手術前の絶食の重要性

『次回、〇〇の検査を予定していますので絶食して来院してください。』

『◯月◯日に手術を行ないますので、絶食して来院してください。』

普段、動物病院でこのようなことを伝えられたことはないでしょうか。

ワンちゃん・ネコちゃんのご飯を抜くのは人間が自ら絶食するよりも難易度が高いかと思います。

しかし、検査や手術をする上で絶食下であることはとても重要なことです。

そこで今回は、なぜ絶食する必要があるのか、絶食していないとどうなるのかについて解説していきます。

まず、絶食をする理由です。

嘔吐・誤嚥の危険性がある

これは主に全身麻酔下での手術の時に危惧される事態です。

麻酔の導入の際、鎮静薬の作用で嘔吐を誘発するケースがあります。

この時、胃が空っぽなら少量の液体を吐くだけで済みます。

しかし、胃に食べたものが入っていると大量の固形物を吐くことになります。

加えて、鎮静状態になっているので通常の姿勢を保つことができず、その結果誤嚥を起こす危険性が上昇します。

検査結果に影響が出る

これは血液検査を行う際に考えられます。

直前の食事によって数値に変動が生じる項目の場合、疾患によって数値が変動しているのか食事の影響なのか鑑別することが困難になります。

すると症例の状態を過小評価あるいは過大評価する可能性が生じてしまいます。

画像診断がやりにくい

レントゲンやエコー検査を実施する際に発生する問題です。

食物が消化管に入っていることで病変が検出できない、エコー時にガスが発生して見たい臓器が描出できないなどさまざまな問題が生じます。

(とくに腹部エコー検査の際は、食事をしていると本当に見えない部分が出てくるので苦慮するケースが多いです)

こんな感じです。

絶食に失敗した場合は検査・手術の延期がおすすめ

次に、絶食していないと何が起こるかです。

こちらは単純なのですが、検査や手術を延期する可能性があります。

前述したようなリスク、または正確な評価ができなくなる可能性があるので、日を改めて絶食の条件が整ったタイミングで再度実施をお願いします。

ワンちゃん・ネコちゃんにとっては動物病院に来るだけでストレスがかかるので、可能な限り来院の頻度を減らすためにも、指示された条件下で受診していただけるようお願いします。

いかがでしょうか。

今回は絶食をする意味と重要性についてお話しました。

朝起きて、ごはん!と要求されるとついつい忘れて食事を与えてしまいがちです。

しかし、適切な検査・処置を行うため、そして何よりリスクを回避するためにも絶食指示が出ている時は忘れずにお願いします。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)のお話をしていこうと思います。

まずはFVRとはなんでしょうか。

猫がヘルペスウイルスに感染した際に結膜炎や鼻炎を主体とする上部気道炎が典型的に認められます。

このことからヘルペスウイルス感染に起因する上部気道炎をFVRと呼んでいます。

このFVRという病気ですが、野良猫を保護した際にとても頻繁に遭遇します。

そして、このヘルペスウイルスというのはとても厄介な性質を持っています。

それは、一旦症状が治っても神経に潜伏感染し続け、生涯に渡り再発症する可能性があるのです。

ヒトでは帯状疱疹を起こすウイルスとして知られていますね。

次にこの病気の診断についてですが、確実な方法はウイルスの分離やPCR検査が挙げられます。

これは、鼻汁や口腔の拭い液を検査センターに提出し血清学的診断やPCR検査でウイルスの感染の有無を確定させるというものです。

ただし、全症例にこの検査を実施するわけではありません。

むしろ僕は滅多に行いません。

その子の飼育形態や経緯を伺い、身体検査を実施した臨床診断を元に治療を開始します。

そして、治療反応が得られない場合にはじめてウイルス検査や他の要因の鑑別を行なうことが多いです。

理由は2つあります。

・検査結果が出るまで待っていられない症例が多い
・ウイルス検査の結果が必ずしも確定診断にならない

1つ目は特に子猫でFVRを疑うケースでは呼吸器症状の悪化は全身状態の悪化に直結するので、暫定診断を元に即治療を開始します。

2つ目は、ウイルス検査の結果はあくまでもウイルスの存在を証明しているだけなので、それが症状を起こしていることを証明することはできません。

常に臨床症状とあわせて評価することが必要なので、FVRについてはウイルス検査を第一選択に考えてはいません。

最後に治療の話です。

前述したようにヘルペスウイルスは生涯に渡り潜伏感染を続けます。

よって、治療は対症療法が中心になります。

軽度の症例では結膜炎や鼻炎に対して点眼・点鼻を中心にした治療から始めます。

呼吸器症状が重度の症例では抗ウイルス薬やインターフェロン製剤の全身投与を行ない、より積極的な治療を実施します。

一旦、急性発症期を離脱した場合は治療を終了し経過観察をします。

しかし、多くのケースでストレス状態に置かれた際や他の疾患により一般状態が悪化した際に再発症を起こします。

(僕がよく経験するのは手術後の再発症です)

この場合も初発の時と同様に対症療法を実施し、症状が消失するまで治療します。

今回は猫のFVRのお話をしました。

子猫を保護して来院してくださった方にこのお話を毎回のようにしています。

呼吸器症状が重篤なケースだと治療が長期間に渡ることもあり、侮れない病気です。

ただし、多くの症例はご自宅での献身的なケアで状態が良くなり、現在も問題なく成長してくれています。

この病気の性質を理解し、付き合っていくためにも飼い主さんに情報共有することが重要であると考えています。

子猫を保護した際に、特徴的な結膜炎や目脂、鼻汁、くしゃみなどの症状がある場合はFVRの疑いがあります。

このような状況になった場合、一度診察を受けてみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はワンちゃん・ネコちゃんの潜在精巣についてお話します。

まず、潜在精巣とはなんでしょうか。

ワンちゃん・ネコちゃんは生まれた時、精巣が陰嚢内ではなくまだ、お腹の中にあります。

生後1〜2ヶ月で徐々に陰嚢内に降りてくるのですが、その際にうまく降りず取り残されるケースがあります。

これを潜在精巣(停留睾丸、陰睾とも呼ばれます)と言います。

取り残される場所がお腹の中だと腹腔内陰睾、鼠径部の皮下組織だと皮下陰睾など色々なパターンがあります。

では、この潜在精巣の何が問題となるのでしょうか。

それは、腫瘍化するリスクがあるということです。

精巣にできる腫瘍はセミノーマセルトリ細胞腫ライディッヒ細胞腫の3つがほとんどです。

特に、セミノーマとセルトリ細胞腫については潜在精巣での発生が数多く報告されています。

いずれの腫瘍も多くは良性なのですが、まれに転移を起こすケースもあり注意が必要です。

また、セルトリ細胞腫については良性であっても、腫瘍細胞が出すホルモンの影響で骨髄が抑制される再生不良性貧血という病気を引き起こすことがあり、深刻化するケースもあります。

次に治療方法についてです。

潜在精巣は腫瘍化の有無に関わらず、外科手術での精巣切除が第一選択となります。

(腫瘍化を疑う場合、病理検査に提出します)

生後4〜6ヶ月を過ぎても陰嚢内に精巣が下降していない場合、それ以降に降りてくることはまずありません。

精巣の場所が触診で把握しにくい場合は、超音波検査で場所を特定してから外科手術を実施するケースもあります。

また、潜在精巣の個体を交配させるかどうかですが、基本的にはオススメしません。

特にワンちゃんの場合、潜在精巣は劣勢遺伝することが報告されています。

いかがでしょうか。

今回は潜在精巣についてのお話をしました。

精巣が生後に下降することをご存知ない飼い主さんが多いので、よく質問を受けます。

それと同時に腫瘍化のリスク因子になることを含めて、お伝えする機会が設けられてよかったです。

最近、ワンちゃん・ネコちゃんを飼い始めた方で、うちの子潜在精巣かな?と疑問に思われる場合、一度診察を受けてみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は健康診断の重要性についてお話ししたいと思います。

人間も定期的に健康診断を行ない、病気の早期発見につながっていることは言うまでもないかと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんでも全く同じことが当てはまります。

明らかな症状を引き起こす病気の場合、飼い主さんが気づいて病院に連れてきてくれます。

しかし、症状がわかりにくい場合、気づかずに病気が進行しているケースがあります。

これをできるだけ見落とさずに拾い上げるために、定期的な健康診断をおすすめします。

では、健康診断でどのような項目をチェックするのかを解説します。

①血液検査

健康診断と聞いて最初に思い浮かぶのがこの血液検査ではないでしょうか。

内容は、全血球計算と生化学検査です。

身体検査と血液検査の結果に基づいて、その他の検査を組み合わせる必要があるかを判断していきます。

人間と同じく、血液検査をする多くの場合は絶食が必要です。

②尿検査

全血球計算と並んで、全身状態の把握に役立つのがこの尿検査です。

尿路疾患や腎機能の評価を正確に行うために必須の検査です。

事前にお渡しする検査キットで採尿していただく場合や、院内にて採尿を行うパターンがあります。

③胸腹部レントゲン検査

こちらも健康診断で受けられたことがある方が多いと思います。

特に、シニア期になったワンちゃん・ネコちゃんの場合、心臓疾患や腫瘍に遭遇する機会が増えます。

健康診断時に定期的に実施することで病変の早期発見に役立ちます。

④心臓エコー検査

ワンちゃん・ネコちゃん共通して心臓疾患を抱えている子が年々増えています。

身体検査時に心雑音が聴取された場合や、飼い主さんにお話しを伺い、心臓疾患を疑う場合は積極的に検査することをオススメします。

⑤その他の特殊な血液検査

心臓、腎臓の血液バイオマーカーやホルモン検査などがあります。

前述した血液検査や画像検査の結果、あるいは身体検査で疑いがある場合に検査をおすすめします。

※検査によっては結果が出るまでに数日かかるものや、別日に改めて実施する場合があります

これらに加え、最も大事なのが稟告聴取と身体検査です。

僕たちは検査結果を見るのではなく、動物を診るのが仕事です。

この最も重要な2点から開始し、必要な検査を組み合わせることで個々の状態を詳細に把握することに繋がるのです。

今回は健康診断の重要性についてお話しました。

健康診断を受けてみたい方、いつ受診すればいいかなど質問がございましたらスタッフまでお問い合わせください。

健康診断によって病気の早期発見ができる子が増えてくれることを願います。

(本文中の写真はすべてイメージ画像です)

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回はノミ・マダニ駆除薬のタイプの違いについてお話したいと思います。

まず大前提として、タイプの違いによって製品の優劣があるわけではありません。

あくまでコンセプトが異なるだけで、駆除薬としての効果は同じです。

これを踏まえた上で、当院で扱っているノミ・マダニ駆除薬をタイプ別に紹介し、それぞれの特色を解説していきたいと思います。

スポットオン(滴下)タイプ

→動物が舐められない場所に薬剤を垂らし、薬剤が体表面に広がって作用するタイプ。

体表面で駆除・予防効果を発揮するので吸血というイベントを回避することが出来る

作用の持続期間はおよそ1ヶ月程度。

薬剤を滴下する日の前後1-2日はシャンプーを避ける必要がある。

まれに滴下部位を異常に気にしたり、皮膚に病変が発生するケースがある

②経口タイプ

→経口投与することで薬剤の血中濃度が上昇し、吸血されると駆除効果を発揮するタイプ。

経口投与なので、シャンプーのタイミングをずらす必要はなし

作用の持続時間は1ヶ月程度のものや3ヶ月程度のものがある。

吸血されることが必須なので節足動物咬傷性のアレルギーが発生する可能性がある

食物アレルギーの子の場合は基質にアレルゲンが含まれている場合、アレルギー症状が出る可能性がある。

現在、当院で使用している薬剤を分類するとこんな感じです。

ここからは僕の個人的な意見です。

獣医師間でも意見に差が生じるので、参考程度にしてください。

スポットオンタイプと経口タイプの両者で、当院ではスポットオンタイプを第一選択にしています。

理由は、吸血というイベントが発生することを避けたいからです。

製品のコンセプト上、スポットオンタイプは吸血させずに駆除することを狙ったもので、経口タイプは吸血させて駆除することを狙っています。

前述したように、駆除するという効果は同一なのですが、吸血されることで生じるアレルギー反応や媒介する疾患に罹患する可能性が少なからず存在します。

よって、どちらかを選択できる場面ではスポットオン製剤を使用しています。

ただし、次のようなケースでは経口薬を使用しています。

・滴下した部位をとても気にして舐めたり、擦り付けたりしてしまう。

・滴下部位の皮膚が赤くなったり、痒みが出てしまう。

・多頭飼育の場合、滴下部位を別の子が舐めてしまう。

・飼い主さんが製品の匂いを許容することができない。

実際にこれらの理由でスポットオン製剤から経口薬に変更し、現在も継続している子がいます。

今回はノミ・マダニ駆除薬のタイプとそれぞれの特色についてお話ししました。

冒頭でもお話しした通り、駆除効果に優劣はありません。

あくまで、製品のコンセプトが異なるだけです。

僕たち獣医師がコンセプトの違いを理解し、なぜその製品を使うのかを飼い主さんにきちんと伝えることが重要であると考えています。

人獣共通感染症の報告が増えているので、ノミ・マダニ駆除に関心を持たれている飼い主さんが増えています。

ノミ・マダニ予防をしたことがない方、やっているが今の方法に疑問がある方は一度獣医師に相談してみてください。

文責:獣医師 小川

みなさま、こんにちは。

今回は猫の乳腺腫瘍についてお話ししたいと思います。

猫の乳腺腫瘍は悪性の可能性が高い

まず第一に、猫の悪性腫瘍のうち発生率トップは乳がんです。

そして猫の乳腺部にできる腫瘍は9割以上が悪性です。

体表腫瘤についての記事でもお話ししたのですが、体の表面にできる腫瘤は飼い主さんが発見しやすいので診察する機会が多いです。

その中でも乳腺腫瘍はワンちゃん・ネコちゃんともに非常に多く遭遇します。

そんなポピュラーな腫瘍であるにもかかわらず、ネコちゃんの場合はほぼ悪性腫瘍なので悩ましい限りです。

猫の乳腺腫瘍について知っておくべきこと

猫の乳腺腫瘍と向き合う際に僕たちが重要視していること、そして飼い主さんにお伝えできることとして次のようなことが挙げられます。

①腫瘍のサイズが2cm以下で発見・治療できるかが重要
②早期の避妊手術によって乳がん発生のリスクが低下すること
③治療するのであれば片側乳腺全切除以上±抗がん剤が適用されること

①について

猫の乳腺腫瘍では、腫瘍のサイズが2cm以下と2cm以上では生存期間の中央値に大きな差があることが分かっています。

猫を触っていて乳腺部のしこりに気づいたら、なるべく早期に治療を開始することを進める理由はここにあります。

②について
避妊手術を実施するタイミングによって乳腺腫瘍発生のリスクがどれだけ軽減できるかが調べられています。

6ヶ月齡以前→91%低下
6ヶ月〜1歳齢→86%低下
1歳〜2歳→11%低下
2歳以上→避妊手術による効果なし

こんな感じです。
このデータに基づいて、僕たちは、特別な事情がなければ1歳までに避妊手術を行うことを強くおすすめしています。

③について
猫の乳腺はリンパ管ですべて繋がっているので切除する際は片側の全切除あるいは両側の全切除が必要になります。

これは、再発を防止するためにかならず必要な手技です。

切除範囲が大きくなるので飼い主さんがかわいそうと思われるケースが多いのですが、乳がんと戦うために必要な手術であることを十分に説明し治療にあたります。

また、腫瘍の広がりや病理組織検査の結果によっては術後に抗がん剤を用いた化学療法が適用されるケースもあります。

今回お話しした猫の乳腺腫瘍は僕たちも遭遇したくない疾患です。

猫の乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が大切

猫を乳がんから守るために重要なのはとにかく早期発見・早期治療です。

体表、とくに乳腺部を日頃からよく触り、しこりや違和感に気づいたら速やかに獣医師に相談してください。

乳腺部を触る時のポイントは次の通りです。

・猫を仰向けにして触る
・脇の下から脚の付け根まで広い範囲を触る
・表面を撫でるだけでなく、つまむように触る
・嫌がったら無理せずいったん休憩する

このセルフチェックを猫とのコミュニケーションにぜひ取り入れてみてください。
早期治療によって救われる猫が増えてくれることを願います。

文責 獣医師 小川