子宮蓄膿症について

みなさま、こんにちは。

今回は子宮蓄膿症についてのお話をしたいと思います。

子宮蓄膿症ってどんな病気?

子宮蓄膿症は子宮内で細菌が増殖することで膿が溜まってしまう病気です。

未経産の若い子や老齢の子で発生が多い印象ですが、避妊手術を受けていない場合はどの子も発生する可能性があります

子宮蓄膿症には開放型閉鎖型の2種類があります。

開放型は子宮に溜まった膿が陰部から排出されるタイプで、多量のオリモノ(実際は膿汁です)が出るので飼い主さんが比較的気付きやすいため、早めに発見される傾向があります。

一方、閉鎖型は子宮に溜まった膿が排出されないタイプです。

こちらはオリモノが出ないため、飼い主さんも気付きにくく発見が遅れることがあります。

子宮蓄膿症になるとどんな症状が出るの?

次に、子宮蓄膿症ではどのような症状が出るのでしょうか。

陰部から膿汁排出が最大の特徴ですが、それ以外には次のようなものが挙げられます。

・元気・食欲消失

・飲水量増加

・嘔吐

・腹囲膨満

・発情周期のズレ

・発情終了の遅延

発情に関連したものもあるのですが、多くは非特異的(=子宮蓄膿症だけでみられる症状ではない)で鑑別をしっかり実施する必要があります。

よって、僕たちが日頃診察している際に、未避妊の子が上記のような症状を主訴に来院された場合は子宮蓄膿症を常に鑑別診断に入れて考えています。

子宮蓄膿症はどうやって分かるの?

では、子宮蓄膿症はどのように診断するのでしょう。

前述したような子が来院され、子宮蓄膿症を疑った場合、僕たちは初めに腹部超音波検査を実施します。

実際に子宮に膿が貯留しているのか、卵巣の状態はどうか、子宮はどの部位が拡張しているのか、破裂はないか、腹膜炎を疑う所見は無いか、などさまざまな情報が得られます。

また、同時に血液検査も実施します。

炎症の程度や、合併症の有無、一般状態をチェックすることで、この後記載する外科手術に伴うリスクの評価を行ないます。

子宮蓄膿症はどうやって治療するの?

次に治療方法です。

基本は外科手術で治療を行う

第一選択は外科手術で、子宮と卵巣を切除します。

ただし、前述した血液検査の結果により術前に抗生剤の先行投与を行なったり、入院して静脈点滴を行なったのちに手術計画を立てます。

これは、子宮蓄膿症を含む重度の全身性疾患を抱える症例に麻酔・手術というダメージを与えると全身性炎症反応症候群や敗血症という合併症が発生することがあるからです。

同じ理由で、術後も静脈点滴と抗生剤の投与を継続し、合併症発生の可能性が下がるまでは慎重に治療を継続します。

投与する抗生剤については、作用範囲が広いものを先行投与し、手術時に膿を培養検査し、その結果に基づいて変更の必要があれば適宜変更します。

例外的に内科的療法を行う場合もある

その他の治療方法として、抗生剤の投与のみ行う内科的治療があります。

基本的に選択しないのですが、超高齢で麻酔のリスクが高い場合や、併発疾患により麻酔がかけられない場合は選択肢に入れます。

この場合、一旦は症状が改善するケースがありますが高確率で再発を繰り返すことを飼い主さんにお伝えした上で慎重に検討します。

子宮蓄膿症を放っておくとどうなるの?

子宮蓄膿症を治療しないとどうなるでしょうか。

この病気は残念ながら様子を見ていても治ることはありません

それどころか、時間が経つにつれて状態は悪くなるので発見したら即治療を進めます。

仮に、治療しなかった場合は子宮内での炎症と細菌の増殖が進み、腹腔内や全身に波及します。

それに伴い、全身状態が悪化し亡くなる可能性が高いです。

子宮蓄膿症を疑う症状がみられる場合は、早めの受診をおすすめします。

いかがでしょうか。

今回は子宮蓄膿症のお話をしました。

早期に避妊手術をされる飼い主さんが増えてきたので、発生件数が減少しているとはいえ、まだまだよく遭遇する病気の一つです。

この病気の発生を予防するためにも、子供を産ませる予定がない場合は、早期に避妊手術を実施することをお勧めします。

文責:獣医師 小川