みなさま、こんにちは。
今回は痒みの評価の仕方について解説したいと思います。
ワンちゃん・ネコちゃんに表れるかゆみ
これからの季節、痒みを訴える子たちの診察をする機会が増えてきます。
また、季節を問わず痒みに悩まされている子たちもたくさんいます。
この『痒み』という症状、頻繁に遭遇するにもかかわらず実は、評価するのがとても困難なのです。
つまり、『どれくらい痒いのか』が客観的に評価しにくい、ということです。
痒みは客観的に判断しづらい?
実際に痒みを抱えている子の診察時に、次のような状況に陥ります。
—
「先生、うちの子、少し前から体が痒そうなんです。」
『特に、どこを痒がっていますか?』
「前肢の先と脇の下、内股を痒がります。」
『痒がり始める前に食事や生活環境の変化はありましたか?』
「特にないと思います。」
「分かりました。では、今どのくらい痒いですか?』
「えっと・・・」
『・・・』
—
こんな感じです。
途中まではスムーズに聞き取りができるのですが、痒みの評価になると急にブレーキがかかってしまいます。
これは痒みという症状が、客観的に表現するには漠然としているからなのですが、評価基準がないと飼い主さんも獣医師も困ってしまいます。
痒みの評価基準PVAS
そこで、痒みの評価基準として僕たちはPVASスコアというものを使用します。
PVAS(Pruritus Visual Analog Scale)は10cmの線を引き、痒みのスコアが何cmのところにあるかを差してもらうという評価方法です。
こんな感じです。
この評価方法のメリットは飼い主さんが直感的に決めていただけるので分かりやすい、という点です。
さらに、この方法は痒みを継続治療していく際に真価を発揮します。
すなわち、治療効果の評価が文字通り、目に見えて分かるのです。
治療開始前にPVASスコアが8だった子が、治療開始後に4になっていたら治療効果が出ていることがはっきりと認識できます。
痒みの治療については、痒みを0にすることは困難なので、治療開始前の目標設定をする際にもPVASスコアは飼い主さんの理解を深めるためにとても役立ちます。
いかがでしょうか。
今回は痒みの評価についてのお話をしました。
痒みを抱えている子は少なくありませんが、どれくらい痒いのか、また治療によってどの程度軽減されたのかを本人が話してくれないので評価するのが最も難しいのです。
今回お話ししたのは痒みについてなのですが、VASという評価方法は痛みや不快感の評価にも用いられる方法です。
言葉を話すことができない動物の置かれている状況を少しでも客観的に評価する方法があることをみなさんに知っていただけると幸いです。
文責:獣医師 小川