みなさま、こんにちは。
今回は心臓の検査についてのお話をしていきます。
ワンちゃん・ネコちゃんの心臓疾患
ワンちゃん・ネコちゃんいずれにおいても心臓疾患は決してめずらしいものではありません。
とくに小型犬の中高齢以降では遭遇する機会がぐっと増えます。
一口に心臓疾患といってもさまざまな病気があるのですが、それらを発見するために僕たちが実施している検査、そして問診時に気をつけて聴取しているポイントなどを挙げて解説していきます。
心臓疾患の症状は?
まず、心臓疾患を抱えている動物はどのような症状を示すのでしょうか。
全てのケースで重度の発作やうっ血性心不全による呼吸困難がいきなり起こるわけではありません。
むしろ、気づかないうちに進行しているケースが大部分を占めている印象があります。
自宅でとくに気をつけて欲しい症状として次のようなものが挙げられます。
・運動不耐性
・咳
・食欲・活力低下
このなかで運動不耐性が最もわかりにくいのですが、これが見抜けるかどうかで早期発見ができるかどうかが左右される大事な症状です。
実はその症状、加齢だけではなく心臓疾患かも?
運動不耐性とは、以前は問題なくできていた動作(散歩、飼い主さんを出迎える、ご飯の時間になったら走ってくるなど)をしなくなる、というものです。
安静時は全く変わらず、このような動作をしなくなるだけなので、
『年を取ったからだね。』
このセリフで見過ごされていることが非常に多い印象を持っています。
確かに、加齢に伴う性格の変化や他の疾患で特定の動作を行わなくなるケースもあります。
ただし、その中には心臓疾患の症状として運動不耐性が発生している症例が少なからず存在しているはずです。
これを認識して、病気のサインであることを知っていると心臓疾患の早期発見にとても役立ちます。
心臓疾患を疑う際の診察ポイントは?
続いて、診察時に気をつけているポイントです。
まずは問診ですが、前述したような症状の有無、とくに運動不耐性については丁寧に聞き取りをします。
次に身体検査と聴診を行います。
特に、心臓疾患の中には特徴的な雑音を生じるものがあるので、これが聴取できれば診断が大きく前進します。
ここまでで心臓疾患の存在が疑われる場合、次に行うのが胸部レントゲン検査と心臓超音波検査です。
胸部レントゲン検査では、心臓の大きさや肺・気管支の状態などを評価します。
心臓超音波検査では心臓内部の構造、血流の性質や速度の評価を行ないます。
この検査の組み合わせで診断を下し、治療に進むことが多いのですが、その他にも実施する検査があります。
それは心臓バイオマーカーの測定です。
外注の検査センターに血液を提出し、その結果に応じて心臓疾患の存在を考えていきます。
この検査は特に猫の心臓病を診断またはモニタリングする際に使用することが多いです。
心臓疾患は治療できるの?
このように診断・治療を進めていく心臓疾患ですが、その多くは根治できるものではなく、薬で生涯コントロールを続けることになります。
しかし、発見が遅れ治療開始時期が遅くなればなるほどコントロールが困難なケースが増えます。
早期発見・治療ができていれば長期間に渡って安定したコントロールが得られることが多いので、適切なタイミングで検査を受けることを強くお勧めします。
いかがでしょうか。
今回は心臓の検査についてお話しました。
すでに心臓疾患の治療をされている飼い主さんはこれらの検査を定期的に行い、自宅での様子を診察時に僕がとてもしつこく伺っています。
しつこく聞く理由は前述した運動不耐性をなるべく見逃さないようにするためです。
運動不耐性を疑う症状がある、または中高齢にさしかかり心臓疾患の発症が心配だという方は是非一度検査を受けられることをお勧めします。
文責:獣医師 小川