皆様、こんにちは。
今回は稟告(りんこく)、つまり飼い主さんがお話ししてくださる内容と問診の重要性についてのお話をしたいと思います。
稟告・問診の重要性
問診はその他の検査と同等、あるいはそれ以上に重要な診察方法です。
そして、問診を行う際に無くてはならないのが飼い主さんが話される内容、すなわち稟告です。
問診を進める上で注意すべきなのは、動物が抱えている症状がいつ・どのように始まったのか、症状は強くなっているのか・マシになっているのか、治療介入はされているのかどうか、などの診断・治療を進めていく上で需要な事柄を余すことなく聴取することです。
ただし、これらを聞いていく上でマニュアルがあるわけではなく、また時間も無限にあるわけではありません。
問診時のオープンクエスチョン、クローズドクエスチョン
ここで、僕たちが意識しているのが『オープンクエスチョン』と『クローズドクエスチョン』という方法です。
オープンクエスチョンは、相手に解答の範囲を制限しない質問の仕方です。
例:〇〇をどう思いますか?
先にこの聞き方である程度自由にお話ししていただきます。
次に、クローズドクエスチョンです。
これは、解答の範囲を制限した質問の仕方です。
例:〇〇はありましたか?/〇〇はいつからですか?
これで必要な情報の詳細を確認していきます。
この2つを使い分ける理由ですが、どちらか一つにしてしまうと必要な情報が漏れてしまうからです。
オープンクエスチョンでは、自由度が高いのでさまざまな事柄を話していただけるのですが、漠然としてしまうことも多く、また時間がかかり過ぎます。
一方、クローズドクエスチョンでは、質問に対する回答は明確に得られるのですが、飼い主さんが話したい内容を聞き逃してしまう可能性があります。
この2つの組み合わせで情報の漏れがないよう工夫します。
また、問診を取る時に僕たちを悩ませる問題が、飼い主さんが獣医師に怒られると思って情報を伏せてしまう、というものです。
結論から申し上げると、僕は怒りませんので正直にお話ししていただきたいです。
再発防止が必要なケース(異物誤食など)では、再発防止のための指導をすることはあります。
ただし、すでに発生してしまった事柄で、しかも飼い主さんが後悔を抱えている内容に対して僕たち獣医師が飼い主さんを叱責する行為には何の意味もありません。
起こった内容を正直に話していただくことが、正確な診断と治療につながります。
正確な診断・治療のための稟告のポイント
さて、ここで僕たちから一つお願いがあります。
今回は、稟告の重要性についてお話してきたのですが、まさにここに直結する内容です。
それは、
『ワンちゃん・ネコちゃんの状態を把握されている方が来院していただきたい。』
ということです。
よく遭遇するケースは、
『普段お母さんがお世話をしている子が調子を崩してしまう。
しかし、当日お母さんは来院できず、代わりに普段お世話をしていない別のご家族が来院。
僕たちが稟告を聴取しようとするも、自分は代わりに連れてきただけだから何も分からない、と仰る。』
こんな感じです。
これでは問診が取れずに、診断・治療が進みません。
状態を把握している方が来院できない場合は、調子を崩してから来院するまでの記録などをまとめてご持参いただくことを強くおすすめします。
いかがでしょうか。
今回は稟告と問診の重要性についてお話しました。
近年、様々な検査機器の精度が上昇していますが、診療の基本は問診であるということに変わりはありません。
診断・治療の最初の関門が問診であることをお伝えするとともに、起こったことを正直に話していいんだよ、ということが伝われば幸いです。
文責:獣医師 小川