みなさま、こんにちは。
今回は誤食のなかでも、たびたび遭遇する乾燥剤の誤食についてお話したいと思います。
乾燥剤をワンちゃん・ネコちゃんが誤食するとどうなるの?
一般的なご家庭にあって、誤食が発生しうる乾燥剤としては次のようなものが考えられます。
①シリカゲル
②生石灰(酸化カルシウム)
③エージレス(鉄+ビタミンC)
④塩化カルシウム
これらを誤食した場合に起こりうる状況と対応について、一つずつ解説していきます。
①シリカゲル
さまざまな食品や化粧品などの乾燥剤として使用されており、一般家庭でもよく目にする乾燥剤の一つです。
物理的に毛細管現象で吸湿をするので、水を含んでも膨らむことはありません。
ヒトでの推定致死量は体重1kgあたり10〜15gです。
通常、軽度の粘膜びらん等を引き起こすことはあっても、中毒症状を起こすことは稀です。
また、吸収されないので便にそのままの形状で排出されます。
ただし、袋ごと丸呑みしてしまうと、胃腸の粘膜を傷つけたり腸閉塞を起こすことがあるので注意が必要です。
②生石灰(酸化カルシウム)
海苔や煎餅などの食品の乾燥剤として用いられます。
今回お話しする乾燥剤の中で最も危険性が高いものです。
生石灰は水と混ざると発熱しながら膨張します。
この時の温度は200℃近くまで上昇するため、喉や食道、胃腸の粘膜に火傷を負う可能性が極めて高いです。
また、同様の理由で、生石灰を誤食した際は吐かせる処置を行うことができません。
よって、点滴をする・水を飲ませる・粘膜保護剤を使用する、などの対症療法を行うか、状況によっては外科手術が必要となります。
③エージレス(鉄+ビタミンC)
ビーフジャーキーなどの食品に入っている乾燥剤です。
鉄が酸化する際に空気中の酸素と結合する性質を利用したもので、主成分が鉄とビタミンCなので中毒を引き起こすことはありません。
ただし、他の乾燥剤のパッケージに比べて辺縁が固いものが多い印象を受けるため、誤食すると消化管粘膜を傷つける可能性が高いです。
④塩化カルシウム
タンスや下駄箱用の吸湿剤として使用されることが多い乾燥剤です。
粉末はとても苦味が強いため、そのまま食べることは少ないかと思いますが、食べると皮膚粘膜傷害性が強いため、下痢・嘔吐・消化管出血などが発生します。
また、生石灰ほどではありませんが水と混ざると熱を持ちます。
乾燥剤を誤食してしまった場合は速やかに動物病院に受診を
これらをワンちゃん・ネコちゃんが誤食しないように気を付けておくのが大前提ですが、万が一誤食してしまった場合は、可能な限り速やかに動物病院を受診してください。
理想的には30分以内が望ましいです。
また、食べたものがどのタイプの乾燥剤かわからない場合は、何に入っていたものか、その商品名がわかるものを必ず持ってきてください。
前述したように、乾燥剤の種類によって治療内容が変わってくるので、非常に重要な情報です。
いかがでしょうか。
今回は、よく遭遇する誤食として乾燥剤についてのお話をしました。
今回のお話が、飼い主さんへの注意喚起となってくれれば幸いです。
文責:獣医師 小川