皆様、こんにちは。
今回はワンちゃんの換毛期についてのお話をしたいと思います。
換毛期ってなに?
毎年、春のこの季節になると換毛途中のワンちゃんをたくさん診る機会があります。
長年、換毛とお付き合いされている飼い主さんとは、
「またこの季節が来ましたね。」
という会話が弾むのですが、換毛期の存在を知らない飼い主さんは、
「毛がごそっと抜けてしまうんです。」
と認識して診察にいらっしゃいます。
そこで今回は換毛についての解説と、皮膚疾患との鑑別を中心にお話ししていきます。
ワンちゃんの換毛期はいつ?
まずは換毛の時期についてです。
ワンちゃんは基本的に春と冬の2回換毛期があります。
このうち、冬毛から夏毛に換わる春の換毛期で、より抜ける毛の量が多くなる子が目立ちます。
また、犬種によって毛が抜ける量に差があります。
毛が抜ける量が多い犬種は
・チワワ
・ダックスフンド
・ポメラニアン
・柴犬
などが挙げられます。
反対に、少ない犬種としては
・トイ・プードル
・ヨークシャーテリア
・シーズー
・ビションフリーゼ
などが挙げられます。
これは被毛の構造の違いが関係しています。
ダブルコートのワンちゃんは抜ける毛の量が多い
ワンちゃんの毛はアンダーコートとオーバーコートという二層で形成されています。
オーバーコートは厚いしっかりとした層で、主に皮膚の保護を目的としています。
一方、アンダーコートは薄い層で、保温・保湿を目的としています。
毛が抜ける量が多い犬種はこの2層をどちらも持ったダブルコートという構造の被毛をしており、換毛期にはオーバーコートがゴッソリ抜けるので、抜ける毛の量が多くなります。
それに対して、毛が抜ける量が少ない犬種はオーバーコートのみのシングルコートという構造の被毛をしており、一層であるため、ダブルコートの犬種よりも毛が抜ける量が少なくなる傾向があります。
また、シングルコートの犬種は換毛期に一気に毛が抜けるというよりも、一年を通して少しずつ毛が抜ける子が多いため、抜け毛がより目立ちにくくなります。
換毛はなぜ起こるの?
では、どのようにして換毛が起こるのでしょうか。
換毛を引き起こすきっかけは気温や湿度など環境の変化です。
つまり、夏になる前に夏毛になり、冬になる前に冬毛になることで環境に適応しようとするのです。
よって、屋外で活動する時間が長い子ほどしっかりと換毛が生じる傾向があります。
一方、屋内にいることが多い子では、気温や湿度の差があまり生じないため、一年を通して少しずつ毛が抜けることもあります。
これは換毛?それとも皮膚疾患?
次に、換毛と皮膚疾患の鑑別についてです。
換毛は全身で発生するので、体のあらゆる場所で毛が抜けます。
一方、皮膚疾患による脱毛は毛が抜ける場所が限局的であったり、赤みや皮疹を伴ったり、痒みを伴うケースが多いです。
また、全身性に脱毛が発生するケースでは、毛が全くなくなるような脱毛を認めることもあり、明らかに換毛とは異なる状態になります。
換毛期もブラッシングで抜け毛を除去しよう
換毛期のブラッシングについてですが、ブラッシングを行なって抜ける毛は除去してあげてください。
通常通りのブラッシングの間隔で構いませんので、換毛の状態や皮膚に病変を伴っていないか等をチェックしてみてください。
いかがでしょうか。
今回はワンちゃんの換毛についてのお話をしました。
毛が抜ける量が多い子はびっくりするほどの量の毛が抜けるので、飼い主さんが病気の心配をして受診していただくケースが少なくありません。
前述したように、毛が抜けるのに加えて、痒みがあったり皮膚病変がある場合は皮膚疾患の可能性があるので、気になる場合は早めの受診をお勧めします。
文責:獣医師 小川