ワンちゃんの異嗜(いし)症について

みなさま、こんにちは。

今回はワンちゃんの異嗜症についてお話ししたいと思います。

異嗜症ってなに?

まずは異嗜とはどういう意味でしょうか。

聞きなれない言葉ですが、異嗜とは「食べ物ではないものを食べてしまう」という意味の言葉です。

家の中でも屋外でも発生する可能性があり、その多くが食べてしまうと危険を伴う可能性が高くなる物なので、注意が必要です。

今回は、異嗜が起こるシチュエーションを屋内と屋外に分け、予防法を中心に解説していきます。

①屋内で発生するケース

屋内での異嗜は、多くが仔犬で発生します。

誤って食べてしまうものは、ティッシュ・布の切れ端・紐・針・爪楊枝・串・ボタンなど、ワンちゃんの口に入ってしまうものならば何でも発生する可能性があります。

また、食糞症も広義では異嗜症に含まれます。

ワンちゃんの食糞症について

(※食糞症については上記記事を参照)

屋内での異嗜を予防する方法には以下のようなものが挙げられます。

・口に入れられるサイズのものをワンちゃんの生活空間に置かない

→基本的にワンちゃん、特に仔犬は興味を持つと必ずと言っていいほど、対象物を口に入れてしまいます。その際、飲み込めてしまうサイズのものは飲んでしまい、消化管閉塞等の危険があります。

・ハウスリードの使用

→ハウスリードとは、室内で使用するリードのことで、散歩時に使用するものよりも短いことが多いです。ワンちゃんと遊ぶ際や、同じ空間にいる時に異物を誤食しそうな場合、このリードを引いて抑制します。注意点としては、必ず飼い主さんが同じ空間にいる場合のみの使用に限定してください。ワンちゃんだけでお留守番する時にリードをつけっぱなしにすると絡まるなどの事故につながる可能性があります。

②屋外で発生するケース

屋外での異嗜は年齢問わず、あらゆるワンちゃんで発生する可能性があります。

散歩時に落ちているゴミ(マスクや竹串etc)、草、砂利、砂などを食べてしまうケースが多いです。

屋外での異嗜を予防する方法には次のようなものがあります。

・フードを携行する

→散歩時、普段食べているフードを持ち歩くようにしてください。

落ちているものに向かって行ったり、砂などを口にしようとした際にリードで抑制し、フードを少量与えるようにしてください。

また、排尿・排便のあとや遊んだ後などに少しずつフードを与えるのも効果的です。

・口輪、カラーの使用

飼い主さんがどれだけ気をつけていても、足元で発生する誤食を100%予防することは困難です。

どうしても異嗜の発生がコントロールできない場合は、散歩や外で遊ぶ際にカラーや口輪の装着を行ない、誤食を物理的に抑制する工夫をするのも一つの方法です。

ただし、呼吸がしにくい等の問題が発生する可能性があるため、適宜脱着をするなどの対策が必要です。

異嗜はなぜ起こるの?

最後に、異嗜が発生する原因についてです。

多くの場合は好奇心や、匂いなどで興味を持つことで口に入れてしまうのですが、中には脳疾患に伴う異嗜症や栄養不良に伴う異嗜症なども存在します。

異嗜が始まる前にフードの変更をしたり体重減少や、消化器症状を伴う場合、あるいは異嗜とその他の行動の変化が同時に発生している場合は、これらの鑑別が必要となります。

このようなケースが思い当たる場合は、速やかに診察を受けてください。

いかがでしょうか。

今回はワンちゃんの異嗜症についてのお話をしました。

飼い主さんから相談を受けることもあれば、腹部のレントゲンを撮った際に僕たちが驚くこともあったりと、さまざまなシチュエーションがあります。

いずれの場合も、消化器障害等の危険性があるので、異嗜症の可能性を疑う場合は一度受診していただくことをお勧めします。

文責:獣医師 小川