みなさま、こんにちは。
今回は、毎年行なっている熱中症の注意喚起をしたいと思います。
ワンちゃん・ネコちゃんの熱中症
まず最初にお伝えしたいのが、5-6月が一年で最も熱中症が発生しやすい時期だということです。
熱中症は真夏の炎天下で起こる病気というイメージがあるかもしれませんが、真夏にワンちゃん・ネコちゃんの熱中症にはあまり遭遇しません。
むしろ、5-6月に軽度〜中等度の熱中症を疑う症例には頻繁に遭遇します。
5-6月にワンちゃん・ネコちゃんの熱中症が多いのはなぜ?
これには、さまざまな理由が考えられるのですが、最も重要なのはヒトと犬猫では体温調節の仕組みが異なるということです。
ヒトは高体温になった際、汗をかきます。
そして体表面から汗が気化するときに気化熱が奪われて体温が下がります。
ヒトは、体表面のほぼ全ての部位で発汗が可能なので効率よく体温を下げることができます。
一方、犬猫はごく一部の部位を除いて、体表面に汗をかくことができません。
よって、体温を下げる際は口を開けて浅く早い呼吸(パンティングと言います)をすることで唾液を気化させ、気化熱を発生させます。
しかし、これでは効率が悪く、体温を下げきれなくなってしまうと熱中症を発症してしまいます。
エアコンを使用しない5-6月こそ注意が必要
この仕組みの違いを理解すると、5-6月の熱中症発生のメカニズムがイメージしやすくなります。
最も多いシチュエーションは
『室温が高かったが窓を開け風通しが良かったor扇風機をつけていた』
です。
日中、室温が上昇しても、窓を開けたり扇風機の風が当たっていると人間は先述したメカニズムで体温を下げることができます。
しかし、犬猫は体表面にいくら風が当たっていても、汗をかいていないので体温を下げる効果は期待できません。
実際に診察していてお話を伺っていても
「窓を開けていたので涼しかったです。」
「うちは山の方だからそんなに暑くなりません。」
とおっしゃる飼い主さんが多いです。
ですが、これはあくまで『人間にとっては涼しい』ということです。
この認識のズレこそが5-6月に熱中症が発生する最大の原因ではないかと僕は考えています。
そして毎年このお話をしています。
暑い時間帯はエアコンを使うのが有効
この時期の熱中症予防対策として有効なのは、室温が上がる時間帯だけエアコンをかけておくことです。
朝晩の気温が上がらないタイミングはエアコンの出番は無いのですが、日中は気温の上昇とともに室温も上がります。
一度室温が上がってしまうと犬猫は体温上昇が起こり、先述したようにうまく下げることができません。
よって、室温自体が上がらないようにコントロールしてやる必要があるのです。
そして、これが真夏にあまり熱中症に遭遇しない理由です。
つまり、真夏になると人間が自発的にエアコンを点けるので室温が上昇しすぎない状態が整うからです。
温度設定は人間が肌寒い程度の温度
また、設定温度についてもよく質問を受けます。
僕の回答は
『人間がじっと座っていたら肌寒い程度にしてください。』
です。
〇〇℃に設定してください、という伝え方はしません。
室内の環境やエアコンの性能にも影響されるため、あくまで体感温度を目安に調節してあげてください。
いかがでしょうか。
毎年この時期になると必ずこのお話をしています。
特に、今年は5月の初頭に真夏日になる日が続くなど、熱中症を引き起こす条件が揃う日がチラホラと見受けられ、ドキドキしています。
今回のお話が、5-6月に向けた室温の管理の仕方のご参考になれば幸いです。
文責:獣医師 小川