みなさま、こんにちは。
今回はワンちゃんの誤食として度々遭遇するキシリトール中毒についてお話したいと思います。
キシリトールってどんなもの?
キシリトールは人工甘味料の一種で、唾液分泌促進・歯の再石灰化促進・口腔内のph調整などの作用があり、ヒトのむし歯予防にとって重要な物質です。
様々な食品や歯磨き粉などに含まれており、実際にどこのご家庭でもよく目にすることかと思います。
ワンちゃんにとっては中毒の原因になる!?
このようにヒトにとってはむし歯予防の効果を発揮してくれるキシリトールですが、ワンちゃんにとっては中毒を発生させてしまう危険な物質です。
ワンちゃんがキシリトールを摂取すると、膵臓からインスリンが過剰に分泌され重篤な低血糖を起こします。
また、中には肝障害を併発するケースもあります。
キシリトール中毒の症状は?
キシリトール中毒の際に認められる症状としては次のようなものが挙げられます。
・嘔吐
・下痢
・意識低下
・運動失調
・虚脱
・けいれん発作
・点状出血
・紫斑
しかし、これらはキシリトール中毒に特異的なものではないため、最も重要なのはキシリトールを誤食した事実があるかどうかです。
どれくらいの量でキシリトール中毒になるの?
ワンちゃんのキシリトールの中毒量として、0.1mg/kgを超えると低血糖症を引き起こす可能性があり、0.5mg/kgを超えると肝障害を引き起こす可能性があるという報告があります。
製品にもよりますが、キシリトールガム1粒に0.5g〜1gほどのキシリトールが含まれているため、1粒でも誤食してしまうと中毒量をあっという間に超えてしまいます。
キシリトール中毒になってしまった場合の治療は?
続いて、治療についてです。
キシリトール中毒に対しての特定の治療はありません。
前述したように、キシリトールの誤食が疑われる場合、まだ症状が出現していないうちに吐かせる処置を実施することが最も望ましいです。
体格や摂取量にもよりますが、誤食から症状が出るまでの時間は30分〜60分ほどです。
そのため、誤食を疑った際は至急受診し速やかな処置が必要です。
一方、既に症状が出現している場合は、吐かせる処置は適応になりません。
血液検査等で低血糖と肝障害の有無を認識し、血糖値の補正や肝保護剤の使用などの対症療法を行う必要があります。
低血糖と肝障害の程度が軽度であれば、対症療法により予後が良いケースが多いです。
しかし、重篤な肝障害を引き起こしている場合は、対症療法に反応せず極めて予後が悪いことがあります。
おうちのキシリトールガムの保管にはご注意を!
このように、どのご家庭にもあるキシリトールですが、ワンちゃんにとっては本当に恐ろしい物質です。
中でも、僕が最も事故に繋がりかねないと思っているのが、ボトルタイプのガムです。
食卓にガムのボトルを置いており、何かの拍子に床に落ちてしまうと、ワンちゃんにとっては非常に興味を惹かれる対象になってしまいます。
転がりやすく、転がすと音が鳴り、手頃な硬さで噛みやすいボトルなのでワンちゃんは歯を立てて遊んでしまいます。
すると、蓋が開いたり、プラスチックが破損することで中身がこぼれ、誤食につながってしまいます。
ボトルタイプのキシリトールガムがご家庭にある場合は、起きっぱなしにせず、必ず引き出し等に仕舞っていただければ幸いです。
いかがでしょうか。
今回はキシリトール中毒についてのお話をしました。
本編ではワンちゃんに焦点を当てて解説しましたが、猫ちゃんでも同様の病態が発生するので注意してください。
特にボトルタイプのガムはついつい机などに置いているケースが多いかと思いますが、本当に危険なので、該当された方はこれを機に仕舞っていただけると幸いです。
文責:獣医師 小川