みなさま、こんにちは。
今回はワンちゃんの食糞症についてのお話をしたいと思います。
ワンちゃんの食糞症ってなに?
食糞症とは、ワンちゃんが自身の排泄した糞や、他の犬が排泄した糞を食べる行動を指します。
ワンちゃんの食糞症は、実は本能からくる行動
飼い主さんにとっては見ていて気持ちの良い行動ではないかもしれませんが、実はワンちゃんにとっては正常な行動です。
犬は元々、巣穴付近を清潔に保つために巣穴から離れた場所で排泄する習性があります。
実際に生活環境を見てみると、普段ワンちゃんが寝床として使用している場所の付近で排泄をした場合、便を取り除き巣穴を清潔に保とうという欲求から食糞が誘発される、と考えられています。
このことからも分かるように、食糞は多くの場合、ケージの中で始まります。
特に、頻繁にケージから出してトイレに連れ出せない、留守がちのご家庭で発生しやすくなります。
また、各ご家庭に迎える前段階のブリーダーやショップに居た時に、ケージの中でしか排便できない環境で管理されていた犬は、寝床から離れた場所で排泄をする習慣が十分に備わっていない可能性が高くなります。
この場合、ご家庭に迎えてからの排泄のコントロールやトイレトレーニングが非常に困難になると考えられています。
食糞症はどうやって治療するの?
次に食糞症の治療方針について解説します。
まず、消化器疾患に関連して食糞症が誘発されることもあるため、身体的疾患を除外することが第一です。
その上で、食糞が起こるケースを次のように分類して考えてみましょう。
ケース①飼い主さんが在宅中の食糞
排便して飼い主さんが片付けるまでの間、あるいは排便中から便を気にして肛門から便が出た瞬間に口にする子も多いです。
このようなケースでは飼い主さんがワンちゃんよりも先に便を拾い上げようと必死になり、飼い主-犬間での奪い合いの構図になってしまいます。
奪い合うのではなく、排便後に好きなおやつ等のご褒美を与え、便への注目をそらすようにしてください。
また、排便後「おいで!」とワンちゃんを便から離れたところに誘導してオヤツを与えるのも効果的です。
これらの工夫をしても食糞が続く場合、次に行うのは食後どのくらいの時間で排便するのかを観察することです。
排便のリズムを意図的に作り出すことができれば、排便のタイミングを散歩の時間にしたり、飼い主さんの留守中を避けることが可能になります。
ある程度、排便のタイミングが把握できたら、排便しそうなタイミングでトイレに誘導し、排便したら好きなオヤツを与えることを繰り返すと、排便のタイミングを習慣づけることが可能になります。
ケース②飼い主さんが留守中の食糞
留守中にゲージ内で排泄した糞を食べるのをやめさせることは非常に困難です。
それよりも、前述した通り、排泄のタイミングを留守中を避けられるように調節し食糞を防ぐことのほうが現実的です。
食糞症は、ドッグフードが原因の場合も?
さて、ここからは僕がさらに何かやる場合に提案する方法です。
ここまでで解説した通り、食糞はワンちゃんにとっては自然な行動なので、基本的には行動修正でゆっくり解決していかなくてはなりません。
ただし、はじめに述べたように消化器疾患に関連して食糞が発生しているケースがあります。
消化器疾患と言っても、嘔吐や下痢などの分かりやすい症状があれば気付きやすいのですが、無症状で食糞という行動の変化のみが生じていることもあります。
ケース③食事の変更で鑑別を
このケースを鑑別するために行うのは食事の変更です。
現在食べている食事とは異なるタンパク質源で作られている食事(新奇タンパク食と呼びます)にしたり、低脂肪食に変えたりと、その子の状態によって食事を選択して変更し経過を観察します。
少数ではありますが、食事の変更後に食糞が改善したケースもあるので、行動修正に合わせて無症状の消化器疾患の可能性を考えることも重要です。
いかがでしょうか。
今回は食糞症の解説をしました。
食糞自体はワンちゃんにとっては自然な行動なので、内部寄生虫疾患の可能性が除外されていれば、放っておいても有害ではありません。
しかし、一緒に生活しスキンシップをする飼い主さんにとっては心地よいとは言えない行動であるのも事実です。
今回のお話が食糞症にお悩みの飼い主さんの助けになれば幸いです。
文責:獣医師 小川