胆嚢について

みなさま、こんにちは。

今回は、胆嚢(たんのう)についてお話したいと思います。

胆嚢ってどんな臓器?

まず、胆嚢という臓器がどこにあって、何をしているのか、ご存じですか?

胆嚢は、犬猫では肝臓の中心部に嵌るような形で存在する臓器で、胆汁という液体を貯めておくための袋状の器官です。

この胆汁は食べ物が胃、十二指腸を通過する際に胆嚢から十二指腸に排出されます。

排出された胆汁は十二指腸で脂肪を乳化させ、消化しやすくする作用を持っています。

この後、胆汁は一部が排出され、一部は小腸で再吸収され、門脈を通って再び肝臓で利用されます。

このように、胆汁の循環という観点から見てみると胆嚢の働きがイメージしやすいかもしれません。

そして、胆嚢や胆嚢から十二指腸へ続く総胆管という場所でトラブルが起きると、胆汁の循環がうまくいかず重篤な症状を起こすことがあります。

胆嚢に多いワンちゃん・ネコちゃんの疾患は?

普段、僕たちがよく遭遇する疾患としては次のようなものが挙げられます。

①胆石症

②胆嚢・胆管炎

③胆嚢粘液嚢腫

④腫瘍

⑤周囲臓器の炎症

①、②は単独で発生することもあれば、併発していることもあります。

そして、炎症が続くと消化管から腸内細菌が侵入し細菌性胆嚢炎に移行してしまうケースもあり、非常にやっかいです。

特に胆石症に関しては、一度炎症や閉塞が解消されたとしても、胆石の存在が原因で再発するケースが多いため、外科手術の適用となります。

③は胆嚢にゼリー状の物質が溜まる病気です。

この病気も単独での発生はあり得るのですが、胆嚢粘液嚢腫を確認したときに僕たちが必ず鑑別しておきたい病気がクッシング症候群です。

以前も紹介したのですが、クッシング症候群の症状の一つに胆嚢粘液嚢腫があり、基礎疾患であるクッシング症候群の治療が適切に実施されていないと、粘液の貯留が進み総胆管の閉塞や胆嚢破裂を引き起こす可能性があります。

胆嚢粘液嚢腫も、内科的に管理・モニタリングし胆嚢サイズ増大や総胆管閉塞の兆候があれば外科手術を選択するべき疾患です。

④は稀ではありますが鑑別に入れておかなくてはいけない疾患です。

この場合、胆嚢・胆管の腫瘍というよりも肝臓や周囲組織の腫瘍が巨大化することで胆嚢や総胆管が圧迫されて閉塞するケースが多いです。

⑤はイメージとしては④の病態に近いです。

特に猫では、膵炎や十二指腸炎を起こし、それに続く形で総胆管開口部の閉塞が発生するケースが多いです。

この場合も、閉塞に対しての治療と同時に原因疾患の治療を行う必要があります。

また、ここには挙げませんでしたが、これ以外によく観察されるものとして、胆泥症があります。

胆泥症は胆嚢の中に水分量の乏しい泥状の胆汁が貯留する状態を指します。

ただし、これは疾患ではなく、画像検査で偶発的に見つかることがある状態、と考えられています。

僕たちも腹部エコー検査を実施する際、しばしば胆泥症を見つけるのですが、それ単体では問題視していません。

ただし、他に併発する所見がある場合は必要に応じて治療を実施します。

また、胆泥症は胆石の形成に関連している可能性もあると考えられているため、定期的な画像検査は強く勧めます。

いかがでしょうか。

日頃、生活をしていて胆嚢を意識する機会は殆どないのではないかと思っています。

実際に、腹部エコー検査の説明や、前述した疾患のお話をしている時も飼い主さんがイメージできていないな、と感じることが多々あります。

僕たちのインフォーム力を向上させる必要を痛感しつつ、今回のお話で胆嚢と胆汁の循環に対するイメージが少しでも伝われば幸いです。

文責:獣医師 小川