QOLってなに?

みなさま、こんにちは。
本日は、QOLについてお話しさせていただきます。
「QOLの向上を治療の目標に〜」
「QOL低下が認められたら治療強度の変更を〜」
このような会話を耳にする機会があるかと思います。
ヒトの医療では、治療におけるQOLの概念や重要性が広く根付いている印象を受けます。
そして、QOLの重要性は我々獣医師が行なう獣医療においてもヒトと同じ、あるいはそれ以上に理解されるべきだと考えています。

まずは、そもそもQOLとはなんなのか、というお話しからです。

QOL=Quality Of Lifeの略で、生活の質あるいは人生の質と訳されます。
漠然とした言葉なので人によって抱くイメージが異なると思います。
僕は、QOLが保たれた生活とは自分の意思で自分がしたいことを自分がしたいタイミングで出来る生活だと考えています。

病気の治療を行う際、病気の進行による痛みや苦しみ、あるいは治療によって生じる痛みや苦しみ(薬の副作用など)と向き合う必要があります。
この時、僕たち獣医師が考えることが、その子のQOLを少しでも改善することです。

・アトピー性皮膚炎で痒くて夜も寝られない
→痒みを止めることで自分が寝たいタイミングで寝られるようにする

・腎機能低下が進行して食欲が出ない、嘔吐する
→嘔吐を管理し、治療することで自分が食べたい時にご飯を食べられるようにする

・腫瘍の化学療法で副作用が強く出る
→化学療法剤の特性を理解し、副作用が出るタイミングを予測して予防的な投薬を行ない、得られる治療効果は最大に、副作用は最小にできるよう心がける。

・ステージの進行した腫瘍で痛みや食欲不振が強い
→鎮痛薬を使い、痛みの緩和をする。それでも食欲が出なければ食欲増進作用のある治療を組み合わせる。

QOL上昇や維持を考えた治療の例を挙げてみました。

ワンちゃんやネコちゃんはヒトと違い、自分の不調を言葉にしてくれません。
よって、その子たちのQOLについて我々獣医師や飼い主さんが注意深く観察し、汲み取ってあげる必要があります。
これが、獣医療におけるQOLの重要性が理解されるべき最大の理由だと考えています。

今回はQOLのお話をしました。
ワンちゃん、ネコちゃんのQOLを保つことは飼い主さん達のQOL向上にも直結します

自分で話してくれない子達が何に苦しみ、何を訴えているのか。
その気持ちに寄り添えるように日々努力します。

文責:獣医師 小川