犬アトピー性皮膚炎について

みなさま、こんにちは。
今回は犬アトピー性皮膚炎についての解説を行なっていきます。
そもそも、犬アトピー性皮膚炎とはどんな病気でしょう?

犬アトピー性皮膚炎は室内生息のダニや花粉などの環境中のアレルゲン(これを抗原と呼びます)に対して過剰に免疫反応が起こることで引き起こされる病気です。
また、遺伝子が関与していることも明らかになってきており、発症しやすい犬種も知られています。
日本では、柴犬・フレンチブルドッグ・シーズー・トイプードル・ウエストハイランドホワイトテリアなどが好発犬種です。
比較的若いうちから発症し、年齢を重ねるごとに一年中症状が続くようになるケースが多いです。
症状はズバリ『痒み』です。

スクリーンショット 2021-07-13 18.39.33

 

 

 

 

 

 

 

※痒みが出やすい部位

犬のかゆみ.comより引用

それに続いて皮膚炎や2次的な感染症を引き起こし良くなったり悪くなったりを繰り返します。
つまり、治る病気ではなくコントロールして上手に付き合っていく体質と捉えていただくと良いかもしれません。

では、どのようにコントロールをしていけば良いのでしょうか?
ポイントは2つです。
1つは適切なかゆみ止めの選択
もう一つはスキンケアの併用です。

まず、かゆみ止めの選択ですが、これが正解!というものではなく現在の状態に応じて選択していき、状況に応じて変えていく必要があると考えています。
また、内服薬以外にも外用剤や注射薬もあるので薬を飲ませるのが大変な子や、患部を触らせてくれない子に対する治療の選択肢も用意することができます。
(実際に注射薬が日本で発売になってとても助かっています)

つぎにスキンケアの重要性です。

スクリーンショット 2021-07-13 18.42.39

 

 

 

 

 

 

 

犬のかゆみ.comより引用

僕は飼い主さんに皮膚の役割をお話しするときに、皮膚は水分を保持するためのラップみたいなものです、という例えを用います。
このラップがきれいに張られていると水分が保持される、表面からの感染が抑えられるといった働きがきちんと行われます。
では、アトピー性皮膚炎の子の皮膚はどのような状況かというと、このラップに穴が空いている状態です。
そうすると、水分の保持が出来ない、感染症を引き起こしやすくなる、痒いので掻いて更に穴が広がっていくという悪循環が続きます。
つまり、かゆみ止めでかゆみだけ止めても、皮膚の環境が悪いままだとコントロールがうまくいかないケースが多いのです。
これがスキンケアが重要である理由です。
スキンケアの方法はシャンプーや保湿剤、脂肪酸の塗布やサプリメントなどさまざまなものがあり、これもその子の状態に応じて必要なものを組み合わせていきます。

いかがでしょうか。
冒頭でもお話しした通り、アトピー性皮膚炎は上手に付き合っていく体質です。
ですので、治療は生涯にわたって必要になるケースが多いです。
よって、治療に携わるチームのメインとなるのはその子と過ごす時間が最も長い方、つまり飼い主さんなのです。
僕たち獣医師は病院に来てもらった際に診察して、コントロールが取れているかチェックする役割に過ぎません。
あくまで、実際に手を動かして頑張ってもらっているのは飼い主さんです。
飼い主さんのモチベーションを保つためにも、犬アトピー性皮膚炎という病気について、またそのコントロールに重要なポイントについてお話しさせていただきました。

痒みを抱えている子の飼い主さん、またはすでに治療を行なっているけれどコントロールが困難な子の飼い主さんは一度診察に来ていただきお話しを聞かせていただければ幸いです。

文責:獣医師 小川