恐ろしいダニ!

みなさま、こんにちは。
今回はダニが媒介する病気のうちヒトにもうつる病気について解説したいと思います。

ダニは何処にでも生息しており、とくにお散歩で草むらや茂みの中に入るワンちゃんは付着・吸血されるリスクが非常に高いです
ダニに吸血されると、ワンちゃん自体が被害を受けるだけでなく、ヒトの生活環境にダニが入り込むことでヒトの健康被害が発生する可能性があるのです。
最近、ニュースなどでSFTSの話題がたびたび取り上げられ、質問を頂く機会が増えました。
そこで、SFTSも含めてダニが媒介する病気を紹介し、ダニ予防の重要性を改めてお伝えできれば、と考えています。
なお、今回のお話をするにあたり、厚生労働省および国立感染症研究所のホームページを参考にさせていただきましたので、興味がおありの方はそちらも併せてチェックしてみてください。

厚生労働省ホームページ

国立感染症研究所ホームページ

 

①重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
ブニヤウイルス科フレボウイルス属の重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)ウイルスによる感染症である。
主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺咬されることで感染する。
潜伏期間は6~14日。
発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血)を主徴とし、時に、頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などを伴う。
血液所見では、血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少(4000/mm3未満)、血清酵素(AST、ALT、LDH)の上昇が認められる。
致死率は10~30%程度である。

②日本紅斑熱
日本紅斑熱リケッチアを保有するマダニ(キチマダニ、フタトゲチマダニなど)に刺されることで感染する。
刺されてから2~8日頃から頭痛、全身倦怠感、高熱などを伴って発症する。
刺し口を見つけることは診断の助けとなる。
高熱とほぼ同時に紅色の斑丘疹が手足など末梢部から求心性に多発する。
リンパ節腫脹はあまりみられない。
CRP陽性、白血球減少、血小板減少、肝機能異常などはつつが虫病と同様であるが、つつが虫病に比べDICなど重症化しやすい。

③ツツガムシ病
つつが虫病リケッチアを保有するツツガムシに刺されて5~14日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。
体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達する。
刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多い。
刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹する。
第3~4病日より不定型の発疹が出現するが、発疹は顔面、体幹に多く四肢には少ない。テトラサイクリン系の有効な抗菌薬による治療が適切に行われると劇的に症状の改善がみられる。
重症になると肺炎や脳炎症状を来す。北海道、沖縄など一部の地域を除いて全国で発生がみられる。
発生時期は春~初夏及び晩秋から冬であるが、媒介ツツガムシの生息地域によって異なる。

④ダニ媒介脳炎
フラビウイルス科フラビウイルス属に属するダニ媒介脳炎ウイルスによる感染症であり、中央ヨーロッパダニ媒介脳炎とロシア春夏脳炎の2型に分けられる。
自然界ではマダニとげっ歯類との間に感染環が維持されているが、マダニでは経卵伝播もありうる。
ヒトへの感染は主にマダニの刺咬によるが、ヤギの乳の飲用によることもある。
潜伏期間は通常7~14日である。
中央ヨーロッパ型では、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状が出現し、2~4日間続く。
症例の三分の一では、その後数日経って第II期に入り、髄膜脳炎を生じて痙攣、眩暈、知覚異常などを呈する。
致死率は1~2%であるが、神経学的後遺症が10~20%にみられる。
ロシア春夏脳炎では、突然に高度の頭痛、発熱、悪心、羞明などで発症し、その後順調に回復する例もあるが、他では髄膜脳炎に進展し、項部硬直、痙攣、精神症状、頚部や上肢の弛緩性麻痺などがみられる。
致死率は20%に上り、生残者の30~40%では神経学的後遺症を来たす。

⑤ライム病
マダニ(Ixodes属)刺咬により媒介されるスピロヘータ(ライム病ボレリア;Borrelia burgdorferi sensu lato)感染症である。
感染初期(stageI)には、マダニ刺咬部を中心として限局性に特徴的な遊走性紅斑を呈することが多い。
随伴症状として、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、全身倦怠感などのインフルエンザ様症状を伴うこともある。
紅斑の出現期間は数日から数週間といわれ、形状は環状紅斑又は均一性紅斑がほとんどである。
播種期(stageII)には、体内循環を介して病原体が全身性に拡散する。
これに伴い、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られる。
感染から数か月ないし数年を経て、慢性期(stageIII)に移行する。
患者は播種期の症状に加えて、重度の皮膚症状、関節炎などを示すといわれる。
本邦では、慢性期に移行したとみられる症例は現在のところ報告されていない。
症状としては、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎などがあげられる。

⑥ロッキー山紅斑熱
紅斑熱群リケッチアに属するロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)による感染症である。
自然界ではダニ、げっ歯類、大動物(イヌなど)の間で感染環が維持されている。
ヒトへの感染はダニの刺咬による。
潜伏期間は3~12日であり、頭痛、全身倦怠感、高熱などで発症する。
通常、つつが虫病などでみられるような刺し口は生じない。
高熱とほぼ同時に、紅色の斑丘疹が手足などの末梢部から求心性に多発し、部位によっては点状出血を伴う。
ときにリンパ節腫脹がみられる。
その後、中枢神経系症状、不整脈、乏尿、ショックなどの合併症を呈する。
診断・治療の遅れ、高齢者、発疹がみられない、ダニの刺咬歴がある、冬季の発症などでは、致死率が高い。

恐ろしいですね。
太字の病気は国内での発生が報告されているものです。
特にSFTSと日本紅斑熱は近年、報告件数が増加しています

冒頭でもお話しした通り、ダニ予防を行なうことで、これらの病気に罹患するリスクを軽減することができます。
予防薬には様々なタイプがあるので、一度獣医師に相談してみてください。

今回のお話が、病気の理解と予防の重要性を認識する助けになれば幸いです。

文責:獣医師 小川