犬の嘔吐について

みなさま、こんにちは。
本日はワンちゃんの嘔吐、とくに空腹時に見られる嘔吐についてお話ししたいと思います。

「うちの子、たまに朝ご飯前に黄色い泡を吐くんです。でもご飯も食べるし元気なんです。」

とても頻繁に相談を受けます。

ヒトは生理現象としての嘔吐が無いので、嘔吐=病気というイメージが強いです。
しかし、ワンちゃんは嘔吐が生理現象に含まれる動物です。
とくにこの空腹時に起こる嘔吐はどんな子でも発生しうる現象です。

犬の嘔吐はなぜ起こるの?

そこで、今回は空腹時に嘔吐が起こるメカニズムと対策について、さらに嘔吐を引き起こす他の病気との鑑別について解説していきます。

犬の嘔吐の黄色い泡は胃酸と胆汁

まずは、この黄色い泡はそもそもなんでしょう。
これは胃酸と胆汁が混ざり合ったものです。

胆汁とは肝臓で生成されるアルカリ性の消化液で胆嚢という臓器に貯められます。
そして、胆嚢が収縮することで十二指腸に分泌され消化が進みます。

空腹時に胆汁が分泌されてしまうと、一部が胃に逆流し酸性の液体である胃酸と混ざってしまいます。

この刺激により嘔吐が誘発され、黄色い胆汁と無色の胃酸が混じり合った黄色い泡を吐き出します。
つまり、酸性とアルカリ性の液体が混ざってしまうために起こる反応なので、吐いた後は何事もなかったかのようにご飯を食べることができます。

空腹時間の短縮が嘔吐予防のコツ

では次に空腹時の嘔吐を予防するためのポイントを解説します。
考え方はシンプルで、空腹時間をなるべく短縮することです。

現在、1日2食で嘔吐が発生するのなら1日3食にしたり間食を挟んでみたりして嘔吐の発生頻度が減らせるか試してみます。

また、朝ご飯の直前に吐くのなら、夜寝る前に少量のご飯を与えるのも効果的です。
ただし、1日のトータル摂取カロリーをあらかじめ決め、それを分割しないと肥満になってしまうので注意してください

空腹時以外の犬の嘔吐の原因は?

次に、空腹時の嘔吐なのか他の原因で吐いているのかの鑑別についてお話しします。

嘔吐は様々なメカニズムで引き起こされます。

その中には一刻も早く治療介入をしないと命に関わる病気も含まれます。
(異物誤食、胃拡張捻転症候群など)

前述したように、空腹時に黄色い泡を吐くが元気でその後食事をとっているケースは胆汁性嘔吐を疑うので基本的に無治療で経過観察します。

放置は危険!こんな犬の嘔吐時はすぐに受診を

しかし、次のような症状の場合は治療介入が必要な病気を疑うので、必ず早めに動物病院を受診するようにしてください。

・吐いた後元気がなく食欲がない

・吐いたものに血液が混ざっている

・消化しきれていないフードを吐く

・下痢を伴っている

・何回も吐き、吐くものがなくなっても嘔吐の仕草が続く

・異物の誤食に心当たりがある

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これらに該当する場合は、嘔吐の原因を診断し適切な治療を行なう必要があります。

いかがでしょうか。
空腹時に嘔吐が発生する現象をご存知の飼い主さんは多いかと思います。
ただし、嘔吐を起こす原因は多岐に渡ります。

「この子、よく吐くしいつものやつでしょ。」

これで様子を見てしまうと、取り返しのつかないことになる場合があります。

ワンちゃんが吐いた時、判断に困るようでしたら早めの受診をおすすめします。

文責:獣医師 小川