みなさま、こんにちは。
今回は猫の下顎に発生する痤瘡(いわゆる猫ニキビ)についてのお話をします。
猫ニキビについて
ネコちゃんの飼い主さんならご存知かと思いますが、猫は下顎を様々な場所に擦り付ける習性があります。
これは下顎の皮脂腺から出る分泌物を付着させることでマーキングを行なっていると考えられています。
猫ニキビは、この皮脂腺が詰まったり炎症を起こすことで発生します。
では、どのような症状を起こすのでしょうか。
初期の段階では、下顎に黒いツブツブが付着するようになります。
これは過剰に分泌された皮脂と毛が混じった物です。
次に脱毛や皮膚の赤みといった見た目の変化を起こします。
この段階で痒みや違和感を感じ、掻いたり擦ったりする動作が目立つようになります。
さらに進行すると細菌感染を生じ膿が出てくることもあります。
次に、猫ニキビを起こす原因はなんでしょうか。
その① グルーミング不足
猫は全身を自分で舐めて毛繕いをする動物です。しかし、顎の下は舐めることができず、十分なグルーミングが行なえていないケースがあります。
対策:コットンにお湯を染み込ませて優しく顎の下を拭いてあげましょう。ある程度拭けたら、毛に付着した水分を拭き取り終了です。
その② 食器
食器がプラスチック製の場合、表面に傷ができて凹凸が生じます。ここで細菌やカビが増殖し、接触する顎の下にニキビを発生させるケースがあります。また、食器の素材によってはアレルギー反応を起こしているケースもあります。
対策:食器をガラスや陶器製に変更し、こまめに洗浄する。
その③ストレス
引っ越しや家の周りの騒音、家具の配置換え、新しい猫を迎えたなど生活環境が変わることで著しいストレスを感じる子がいます。
ストレスによって引き起こされる病気は多岐に渡りますが、猫ニキビを含む皮膚疾患も該当します。
【対策】
まずはストレスの原因となっているものを探してみましょう。そして、それが改善できるものならば可能な限り改善してストレスを減らす工夫をしてみてください。猫は自らを取り巻く環境の些細な変化も鋭敏に感じ取ってしまいます。見落としがないかゆっくり探してみてください。
その他
ニキビダニ症(毛包虫症)が原因で炎症を起こし、猫ニキビが発生するケースがあります。このニキビダニという寄生虫は健康な猫の皮膚にも存在しているのですが、免疫の低下などの条件が重なると爆発的に増殖します。よって、ニキビダニ症の発生を確認した場合はそれを引き起こす基礎疾患の存在も考える必要があります。
【対策】
ニキビダニ症に対しては駆虫薬を使用。
基礎疾患については症例ごとに適切な検査を進めます。
最後に、飼い主さんが行なえるケアについて解説します。
原因の項目でも触れたのですが、顎の下はグルーミング不足が起きやすい場所です。
この部分をお湯で濡らしたコットンで優しく拭いてあげてください。
この際、ゴシゴシ擦ったり歯ブラシを使用するのは控えましょう。
また、人間用のニキビの外用薬を塗布するのもやめてください。
いかがでしょうか。
僕たちが診察していて、よく相談されるのが
「顎の下に黒いブツブツがあるんだけど・・・これなに?」
です。
つまり、多くの飼い主さんは猫ニキビの初期段階で病気を見つけているのです。
素晴らしい!
下顎の痤瘡はひどくなると痛みが強くなり、治るのにも時間がかかるようになります。
早期発見に加え、日頃のケアを導入することで猫ニキビで苦しむ猫ちゃんが減ってくれることを願います。
文責:獣医師 小川