猫の乳腺腫瘍

みなさま、こんにちは。

今回は猫の乳腺腫瘍についてお話ししたいと思います。

猫の乳腺腫瘍は悪性の可能性が高い

まず第一に、猫の悪性腫瘍のうち発生率トップは乳がんです。

そして猫の乳腺部にできる腫瘍は9割以上が悪性です。

体表腫瘤についての記事でもお話ししたのですが、体の表面にできる腫瘤は飼い主さんが発見しやすいので診察する機会が多いです。

その中でも乳腺腫瘍はワンちゃん・ネコちゃんともに非常に多く遭遇します。

そんなポピュラーな腫瘍であるにもかかわらず、ネコちゃんの場合はほぼ悪性腫瘍なので悩ましい限りです。

猫の乳腺腫瘍について知っておくべきこと

猫の乳腺腫瘍と向き合う際に僕たちが重要視していること、そして飼い主さんにお伝えできることとして次のようなことが挙げられます。

①腫瘍のサイズが2cm以下で発見・治療できるかが重要
②早期の避妊手術によって乳がん発生のリスクが低下すること
③治療するのであれば片側乳腺全切除以上±抗がん剤が適用されること

①について

猫の乳腺腫瘍では、腫瘍のサイズが2cm以下と2cm以上では生存期間の中央値に大きな差があることが分かっています。

猫を触っていて乳腺部のしこりに気づいたら、なるべく早期に治療を開始することを進める理由はここにあります。

②について
避妊手術を実施するタイミングによって乳腺腫瘍発生のリスクがどれだけ軽減できるかが調べられています。

6ヶ月齡以前→91%低下
6ヶ月〜1歳齢→86%低下
1歳〜2歳→11%低下
2歳以上→避妊手術による効果なし

こんな感じです。
このデータに基づいて、僕たちは、特別な事情がなければ1歳までに避妊手術を行うことを強くおすすめしています。

③について
猫の乳腺はリンパ管ですべて繋がっているので切除する際は片側の全切除あるいは両側の全切除が必要になります。

これは、再発を防止するためにかならず必要な手技です。

切除範囲が大きくなるので飼い主さんがかわいそうと思われるケースが多いのですが、乳がんと戦うために必要な手術であることを十分に説明し治療にあたります。

また、腫瘍の広がりや病理組織検査の結果によっては術後に抗がん剤を用いた化学療法が適用されるケースもあります。

今回お話しした猫の乳腺腫瘍は僕たちも遭遇したくない疾患です。

猫の乳腺腫瘍は早期発見・早期治療が大切

猫を乳がんから守るために重要なのはとにかく早期発見・早期治療です。

体表、とくに乳腺部を日頃からよく触り、しこりや違和感に気づいたら速やかに獣医師に相談してください。

乳腺部を触る時のポイントは次の通りです。

・猫を仰向けにして触る
・脇の下から脚の付け根まで広い範囲を触る
・表面を撫でるだけでなく、つまむように触る
・嫌がったら無理せずいったん休憩する

このセルフチェックを猫とのコミュニケーションにぜひ取り入れてみてください。
早期治療によって救われる猫が増えてくれることを願います。

文責 獣医師 小川