みなさま、こんにちは。
今回はワンちゃん・ネコちゃんの潜在精巣についてお話します。
まず、潜在精巣とはなんでしょうか。
ワンちゃん・ネコちゃんは生まれた時、精巣が陰嚢内ではなくまだ、お腹の中にあります。
生後1〜2ヶ月で徐々に陰嚢内に降りてくるのですが、その際にうまく降りず取り残されるケースがあります。
これを潜在精巣(停留睾丸、陰睾とも呼ばれます)と言います。
取り残される場所がお腹の中だと腹腔内陰睾、鼠径部の皮下組織だと皮下陰睾など色々なパターンがあります。
では、この潜在精巣の何が問題となるのでしょうか。
それは、腫瘍化するリスクがあるということです。
精巣にできる腫瘍はセミノーマ、セルトリ細胞腫、ライディッヒ細胞腫の3つがほとんどです。
特に、セミノーマとセルトリ細胞腫については潜在精巣での発生が数多く報告されています。
いずれの腫瘍も多くは良性なのですが、まれに転移を起こすケースもあり注意が必要です。
また、セルトリ細胞腫については良性であっても、腫瘍細胞が出すホルモンの影響で骨髄が抑制される再生不良性貧血という病気を引き起こすことがあり、深刻化するケースもあります。
次に治療方法についてです。
潜在精巣は腫瘍化の有無に関わらず、外科手術での精巣切除が第一選択となります。
(腫瘍化を疑う場合、病理検査に提出します)
生後4〜6ヶ月を過ぎても陰嚢内に精巣が下降していない場合、それ以降に降りてくることはまずありません。
精巣の場所が触診で把握しにくい場合は、超音波検査で場所を特定してから外科手術を実施するケースもあります。
また、潜在精巣の個体を交配させるかどうかですが、基本的にはオススメしません。
特にワンちゃんの場合、潜在精巣は劣勢遺伝することが報告されています。
いかがでしょうか。
今回は潜在精巣についてのお話をしました。
精巣が生後に下降することをご存知ない飼い主さんが多いので、よく質問を受けます。
それと同時に腫瘍化のリスク因子になることを含めて、お伝えする機会が設けられてよかったです。
最近、ワンちゃん・ネコちゃんを飼い始めた方で、うちの子潜在精巣かな?と疑問に思われる場合、一度診察を受けてみてください。
文責:獣医師 小川