みなさま、こんにちは。
今回は手術や検査などの際の、事前の絶食の重要性についてお話します。
忘れると危険!?検査・手術前の絶食の重要性
『次回、〇〇の検査を予定していますので絶食して来院してください。』
『◯月◯日に手術を行ないますので、絶食して来院してください。』
普段、動物病院でこのようなことを伝えられたことはないでしょうか。
ワンちゃん・ネコちゃんのご飯を抜くのは人間が自ら絶食するよりも難易度が高いかと思います。
しかし、検査や手術をする上で絶食下であることはとても重要なことです。
そこで今回は、なぜ絶食する必要があるのか、絶食していないとどうなるのかについて解説していきます。
まず、絶食をする理由です。
嘔吐・誤嚥の危険性がある
これは主に全身麻酔下での手術の時に危惧される事態です。
麻酔の導入の際、鎮静薬の作用で嘔吐を誘発するケースがあります。
この時、胃が空っぽなら少量の液体を吐くだけで済みます。
しかし、胃に食べたものが入っていると大量の固形物を吐くことになります。
加えて、鎮静状態になっているので通常の姿勢を保つことができず、その結果誤嚥を起こす危険性が上昇します。
検査結果に影響が出る
これは血液検査を行う際に考えられます。
直前の食事によって数値に変動が生じる項目の場合、疾患によって数値が変動しているのか食事の影響なのか鑑別することが困難になります。
すると症例の状態を過小評価あるいは過大評価する可能性が生じてしまいます。
画像診断がやりにくい
レントゲンやエコー検査を実施する際に発生する問題です。
食物が消化管に入っていることで病変が検出できない、エコー時にガスが発生して見たい臓器が描出できないなどさまざまな問題が生じます。
(とくに腹部エコー検査の際は、食事をしていると本当に見えない部分が出てくるので苦慮するケースが多いです)
こんな感じです。
絶食に失敗した場合は検査・手術の延期がおすすめ
次に、絶食していないと何が起こるかです。
こちらは単純なのですが、検査や手術を延期する可能性があります。
前述したようなリスク、または正確な評価ができなくなる可能性があるので、日を改めて絶食の条件が整ったタイミングで再度実施をお願いします。
ワンちゃん・ネコちゃんにとっては動物病院に来るだけでストレスがかかるので、可能な限り来院の頻度を減らすためにも、指示された条件下で受診していただけるようお願いします。
いかがでしょうか。
今回は絶食をする意味と重要性についてお話しました。
朝起きて、ごはん!と要求されるとついつい忘れて食事を与えてしまいがちです。
しかし、適切な検査・処置を行うため、そして何よりリスクを回避するためにも絶食指示が出ている時は忘れずにお願いします。
文責:獣医師 小川