ワンちゃん・ネコちゃんの乗り物酔いについて

今回はワンちゃん・ネコちゃんの乗り物酔いに関してお話したいと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんも乗り物酔いをする?

ご存知ない方も多いかと思いますが、ワンちゃん・ネコちゃんもヒトと同じように乗り物酔いをすることがあります。

乗り物酔いは正式には動揺病と言い、乗り物の振動や加速などの刺激によって発生する一過性の病的反応と考えられています。

実際に、車に乗って病院に来たワンちゃん・ネコちゃんが車中や診察室で嘔吐をするケースにしばしば遭遇します。

乗り物酔いを引き起こす原因としては次のようなことが知られています。

①乗り物の揺れ・加速度の変化など

→日常生活を送っている際、ワンちゃん・ネコちゃんの体は生活の中で行なう動作の感覚を学習していきます。

ところが、乗り物によって引き起こされる揺れや加減速によって生じる重力は予測する感覚とズレが生じます。

このズレによって生まれる混乱が自律神経反射を誘発し、悪心や嘔吐が発生すると考えられています。

②車中の匂い・緊張

主な発生原因は①なのですが、緊張状態は車酔いに拍車をかけます。

大半のワンちゃん・ネコちゃんにとって車での移動は非日常的なイベントなので当然緊張します。

この緊張が迷走神経反射を強化し、悪心・嘔吐の発生率を高める可能性があります。

また、車中はさまざまな匂いがこもりやすい環境です。

ヒトよりも嗅覚刺激に敏感なワンちゃん・ネコちゃんにとって、車中の匂いも不快感を高める一因になってしまいます。

③満腹あるいは空腹

→食後すぐの状態あるいは空腹の状態で乗り物に乗ると、乗り物酔いが誘発するリスクが上昇することが知られています。

ワンちゃん・ネコちゃんの乗り物酔いを防ぐには?

これを踏まえた上で乗り物酔いを予防するための工夫として次のようなものが挙げられます。

①キャリー使用およびキャリーにタオルをかける

目から入る情報を制限することで感覚のズレを軽減し、乗り物酔い発生のリスクを下げる目的です。

また、キャリーを足元に置いたり、同乗者が押さえて揺れをなるべく軽減させるのも良いかもしれません。

②適度な換気・空調

匂いがこもりっぱなしになるのを避けるために走行中、時々窓を開けて換気をしてあげてください。

ただし、窓を全開にすると飛び出し事故につながるので、必要最小限で構いません。

また、タバコや芳香剤を使用している場合は、それらの使用中止や撤去を考えてみても良いでしょう。

③出発前に少量の食事を与える

空腹による車酔い発生を避ける目的です。

食べ過ぎてしまうと車酔いを起こしやすくなるので注意しましょう。

腹1分目くらいが目安です。

また、水は十分に与えトイレを済ませてから出発するのが望ましいです。

ただし、この方法は絶食指示が出されている際に動物病院に行く時は使えませんのでご注意ください

④抗動揺病薬の使用

→いわゆる、酔い止めの薬です。

①~③の工夫をしてみても車酔いしてしまう子はいるので、その場合は薬を処方します。

出発の1時間前に薬を飲ませてあげてください。

また、薬を飲んだ状態で①~③を合わせて行なうと、より効果的です。

いかがでしょうか。

実は僕自身が車酔いをするので、辛さが身に染みて分かります。

今回ご紹介したものの中で、抗動揺病薬は特に効果的だと認識しています。

実際に、処方した子の飼い主さんにお話を伺っても使用感が良いケースが多いです。

ワンちゃん・ネコちゃんの乗り物酔いに悩んでおられ、抗動揺病薬の使用を検討されている方は一度診察にいらしてください。

文責:獣医師 小川