みなさま、こんにちは。
今回は猫白血病ウイルス(FeLV)感染症についてのお話をしたいと思います。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症って?
FeLV感染症は猫白血病ウイルスの感染によって引き起こされる病気で、様々な免疫介在性疾患や腫瘍の発生を引き起こします。
猫白血病ウイルスにはどうやって感染するの?
感染経路は、感染猫の唾液・鼻汁との長時間の接触や経胎盤・経乳汁、性交による感染が知られています。
猫白血病ウイルスに感染するとどうなるの?
ウイルスが体内に侵入すると、まず扁桃や喉のリンパ節で増殖し始めます。
どんなウイルスでもこの段階から免疫によってウイルスが排除されだすのですが、FeLVの厄介な点は、30-40%の猫がウイルスを排除できず、持続型ウイルス血症になってしまいます。
そして、もっとも恐ろしいのが持続型ウイルス血症になってしまった猫は診断後、2-3年で死亡するケースが多い点です。
ネコちゃんが猫白血病ウイルスに感染しないようにするための3つのポイント
では、FeLV感染症を予防するために気をつけるべき点を解説していきます。
①ネコちゃんを外出させない
→もっとも重要でかつ効果的な方法です。
FIV感染症の記事でも解説しましたが、感染猫との接触の可能性をなくすことが最も予防効果が大きいです。
また、外出すると他の感染症やケガ、交通事故など様々な危険があるのでこちらを予防するためにも完全室内飼育をおすすめします。
②ワクチン接種
→流行地域や外出の可能性がある猫にはワクチン接種を推奨します。
ワクチンを打つ場合、まずFeLV感染の検査を実施し、陰性が確認されてから接種します。
接種のタイミングや間隔はその時置かれている状況により判断するので獣医師に相談してください。
ただし、ワクチンは一定の効果は見込めますが接種していれば100%予防できるというわけではないので注意が必要です。
③感染猫との緩やかな隔離
→多頭飼育のご家庭で、感染猫を新しく迎える、あるいは感染猫が居るご家庭に新しい猫を迎えるケースがあるかと思います。
この場合、非感染猫と感染猫をある程度隔離する必要があります。
FeLVは噛みつきや性交などの濃厚接触で感染するので、これを防ぐことができる程度の隔離を行ないます。
また、FeLVは比較的弱いウイルスなので、感染猫を触った人間は一般的な手洗いとアルコール消毒を実施すれば非感染猫にウイルスを運ぶ心配はまずありません。
猫白血病ウイルスの検査について
次にFeLVの検査についてお話します。
外出歴のある猫で過去の感染が気になる場合や、新しい猫を迎える際に院内で簡易検査キットを用いて検査を実施します。
簡易検査キットで感染を確認
この検査はELISA法という検査方法を用い、少量の血液で短時間で結果が出るのでとても重宝します。
検査のタイミングによっては正確な結果が出ない場合がある
ただし、結果の解釈には注意する必要があります。
この検査はFeLV抗原を検出する検査なので、『感染しているがウイルスが産生されていない場合』は結果が陰性になってしまいます。
つまり、感染してから体内でウイルスが増殖するまでの間はグレーゾーンになってしまうので、感染が疑わしい場合は3-6ヶ月後に再検査を行なって確認する必要があります。
いかがでしょうか。
病気に対する周知とワクチンの普及で以前に比べると発生件数は減少してはいます。
ただし、外出し喧嘩してしまった猫では感染が確認されることがあります。
最も効率の良い予防方法は完全室内飼育ですが、感染猫と共存する際にも抑えるべきポイントを守り感染を広げないようにすることは可能です。
ネコちゃんの生活スタイルを振り返り、感染のチェックやワクチン接種について興味を持たれた方は獣医師に相談してみてください。
文責:獣医師 小川