ノミが媒介する病気について

みなさま、こんにちは。

今回はノミが媒介するワンちゃん・ネコちゃんの病気、そしてヒトにも影響のある人獣共通感染症についてお話したいと思います。

ノミってどんな生き物?

まずはノミについてのお話からです。

ノミは卵→幼虫→さなぎ→成虫という生活環を持った昆虫です。

ノミの成虫は光や音、二酸化炭素に反応して動物に飛びつき体表に寄生します。

吸血と産卵を繰り返し、環境中に広がる

寄生すると数分で吸血を始め、その後48時間以内に産卵をします。

成虫の寿命は2ヶ月ほどですが、それまでの間ずっと吸血と産卵を繰り返します。

成虫から産卵された卵は動物の体表にはとどまらず、多くの場合は環境中に広がっていきます。

そして、好適環境下で卵は孵化し幼虫、さなぎ、成虫と成長していきます。

ノミに寄生されると、完全に駆除するには時間がかかる

このような成長をするので、動物の体表面に居るノミを駆除しただけでは容易に再寄生と有害事象を生じてしまいます

これらの理由で、当院では、ノミ寄生がみられたワンちゃん・ネコちゃんには最低1年以上ノミ駆除薬を連続使用することを勧めています。

ノミが媒介する病気について

次はノミが媒介する病気のお話です。

ノミ自体が引き起こす病気やノミが運ぶ寄生虫性疾患や細菌性疾患などがあります。

中には人が罹患するものもあるので、是非知っておいていただきたいです。

節足動物関連性皮膚炎

ノミを含む節足動物との接触により引き起こされる皮膚炎です。

注意したいのは、吸血されなくても皮膚炎症状を引き起こす可能性があることです。

極端な例だと、ノミが体表面を歩いた箇所に皮膚炎が生じるケースもあります。

瓜実条虫症

瓜実条虫(いわゆるサナダ虫です)の卵をノミの幼虫が食べます。

ノミは成虫発育し、瓜実条虫もノミの体内で幼虫に発育します。

この状態のノミをワンちゃん・ネコちゃんが食べてしまうと瓜実条虫に感染します。

感染すると、通常は無症状で経過しますが、瓜実条虫が体の一部(体節と言います)を切り離して肛門から排泄される際に動物が不快感を覚えます。

また、大量寄生の場合は激しい下痢や体重減少を認める場合もあります。

そして、この瓜実条虫症はヒトが誤ってノミを摂取してしまった場合、同じことが起こります。

ヒトがノミを摂取するイメージが掴みにくいと思いますが、寝ている間に口に侵入したり、ワンちゃん・ネコちゃんを触ってノミが付着しているのに気づかず口に侵入してしまうケースがあります。

ネコひっかき病(バルトネラ症)

バルトネラ・ヘンセレという細菌を保有したノミを犬・猫が摂取することで感染します。

ただし犬・猫は感染しても無症状なので基本的に治療介入はしません

ここからが問題です。

感染した犬や猫からの咬傷や引っ掻き傷からヒトの体内にバルトネラ菌が侵入し感染が成立します。

症状は、リンパ節の腫脹と発熱が典型例ですが、それ以外にも不明熱、視神経網膜炎、肝・脾肉芽種、急性脳症、心内膜炎など重症化する非典型例も報告されています。

また、犬・猫を介さずに直接ノミに咬まれて発症したと考えられるケースも報告されています。

いずれにしても、定期的なノミの駆除と環境中からのノミの排除が予防方法となります。

冬場でも定期的なノミ予防がおすすめ

前述した通り、ノミ寄生が確認された場合、既に環境中にノミが拡大していると考えていただいた方が良いです。

そして、ノミの発育にとって冬場の室内はとても好ましい環境になっています。

寒くなってきたからと油断せず、ワンちゃん・ネコちゃんの、そしてヒトの疾患の予防のためにも定期的なノミ駆除を実施することを強く勧めます。

ノミによる有害事象やノミ駆除について不安に思われることがありましたら、獣医師にご相談ください。

文責:獣医師 小川