ワンちゃんの陰茎が包皮内に戻せない!

みなさま、こんにちは。

今回はよくご相談を受ける状況の一つで、陰茎が包皮内に返納できずに舐める・咬む・痛そうというトラブルについて解説したいと思います。

これは主にワンちゃんが遭遇するトラブルです。

飼い主さんと遊んでいたり、散歩時に他のワンちゃんと遊んで興奮した際に陰茎が勃起し、包皮内から亀頭部が露出することがあります。

その後、問題なく包皮内に陰茎が納まってくれることが大半なのですが、陰茎とくに亀頭部が引っかかって返納されないケースがたまにあります。

この状態だと亀頭部の粘膜が乾燥してしまうのと、亀頭部が鬱血して腫れてくるのでますます返納しにくくなり痛みも強くなっていきます。

ワンちゃんの陰茎を包皮内に返納するコツ

このような場合に陰茎を包皮内に返納するコツを紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

①まずは陰茎を包皮内から完全に露出させる

どうしても、包皮を亀頭側に引っ張って戻そうとしてしまいがちなのですが、引っかかっているのでうまく返納されません。

この時、陰茎の根本を抑えながら包皮を尾側にずらしていくと露出させやすいです。

②完全に陰茎が露出されたらゆっくり頭側に包皮を戻していく。

亀頭部が鬱血している場合は露出させて少し待つと鬱血が和らぐので戻しやすくなります。

この時、包皮と陰茎の間に潤滑剤を塗ってやると返納がスムーズに行なえます。

院内で処置する際はグリセリンを用いるのですが、ご自宅では白色ワセリンや少量のオリーブオイルでも代用が可能です。

③完全に返納ができたのを確認したらしばらく安静にする。

せっかく戻すことができても、すぐに興奮させてしまうと再び陰茎が露出してしまう可能性があります。

とくに、返納直後は亀頭部の鬱血が残存しているので再度露出しやすくなっています。

ここまでがスムーズに実施されれば大きな問題となることは少ないです。

しかし、陰茎が露出したまま放置してしまったり、飼い主さんが気付かずに時間が経過してしまった場合は粘膜の損傷や亀頭包皮炎の発生を招き、重症化すると陰茎壊死を引き起こします。

陰茎壊死を起こしてしまった場合、範囲にもよりますが陰茎切除と尿路変更という手術が必要となります。

重症化させないためにも飼い主さんには注意深く観察していただきたいです。

病気によってワンちゃんの陰茎が包皮に戻らない場合もある

さて、ここまでは一時的な勃起状態によって包皮内への返納が困難になってしまうケースについてお話してきましたが、病的に勃起状態が持続してしまうケースも存在します。

これを持続勃起症または陰茎強直症と呼び、性的刺激に関係なく長時間にわたって勃起が持続し包皮内に陰茎が戻らない状態を指します。

主に仙髄や骨盤神経の損傷、全身麻酔の合併症、血栓塞栓症、薬剤の投与などが原因で生じることが報告されています。

このケースでは前述した包皮内への返納法を試みても、勃起状態が持続しているので陰茎が包皮外に露出した状態が続いてしまいます。

まれに薬剤の投与で改善する場合もあるのですが、大半が亀頭部の壊死を起こし前述した手術の適応となります。

いかがでしょうか。

頻発するトラブルではないのですが、一度発生すると繰り返し起こってしまうケースにたびたび遭遇します。

また、初発時に飼い主さんがどうすればよいか分からずパニックになりがちな問題です。

実際、今回ご紹介した方法を飼い主さんにレクチャーし、ご自宅で上手に管理をしていただいているワンちゃんもいます。

今回のお話が飼い主さんの手助けになれば幸いです。

文責:獣医師 小川