副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)について

みなさま、こんにちは。

今回はワンちゃん、特に中高齢以降のワンちゃんで最も頻繁に遭遇する内分泌疾患であるクッシング症候群について解説したいと思います。

クッシング症候群ってどんな病気?

まずはクッシング症候群とはどのような病気でしょう?

この病気は副腎皮質という場所から分泌されるコルチゾールというホルモンが過剰になってしまうことによって引き起こされます。

原因は主に次の2つです

①脳の下垂体という場所の過形成または腫瘍

②副腎腫瘍

いずれの場合もコルチゾールが過剰に産生されることでさまざまな症状が認められます。

診察時のクッシング症候群チェックポイント

僕たちが問診や身体検査でチェックするのは次のようなポイントです。

チェックポイント

・皮膚が薄くなる

・毛が薄くなったりベタつく

・お腹周りだけ大きくなる

・筋肉量が落ちる

・息が上がりやすくなる

・動きたがらなくなる

・お水を飲む量が増えおしっこの量が増える

・食欲が増える

・感染症(皮膚が多い)を繰り返すor治療反応が悪い

年齢に加え、これらのポイントに当てはまる場合、クッシング症候群の可能性を常に考えます。

クッシング症候群はどうやってわかるの?

次に診断です。

まずは、実際にコルチゾールの値が高いのか、そしてクッシング症候群の可能性があるのかを調べるためにACTH刺激試験という検査を行ないます。

これは、下垂体から副腎に対してコルチゾール分泌を促すためのホルモン(ACTH)を注射で投与することで過剰にコルチゾールが分泌される状態が再現されるかを調べる検査です。

同時に腹部超音波検査で副腎腫瘍の有無を検査します。

これによって下垂体性or副腎性の鑑別を行ないます。

この検査でクッシング症候群の可能性が高いと判断した場合、治療に進みます。

クッシング症候群の治療について

治療には内科的治療と外科的治療があります。

内服薬でクッシング症候群を治療する

内科的治療では、副腎皮質からのコルチゾール分泌を抑制する薬を使用します。

初めは低用量から服用を開始し、コルチゾール値をモニタリングしながら用量を決定していきます。

大半の症例がこの内科治療でコントロールが可能で、治療開始前に認められていた症状に改善があるかを観察していきます。

また、内科治療を行なう上で気をつけなければいけないのが、この薬は基本的に生涯飲み続ける必要があるということです。

コルチゾールの過剰分泌をコントロールするために薬を飲んでいるので、やめてしまうとコルチゾール値が上昇し症状が再び現れます。

例外的に途中で休薬するケースもありますが、基本的にずっと飲み続ける必要があることを治療開始前に必ず飼い主さんにお伝えしています。

外科でクッシング症候群を治療する方法

続いて外科的治療です。

内科治療を実施したがコントロールができない、腫瘍の存在によりクッシング症候群以外の問題が生じている等の状況で外科治療を検討します。

外科治療を行なう場合、特に下垂体に対しての治療を想定する場合はMRI検査が必要となる可能性が高いため、適切な二次診療施設への紹介受診を進めていきます。

また、下垂体に対しての治療では外科だけでなく放射線治療も選択肢に含まれます。

これも含め、二次施設の獣医師、飼い主さん、主治医が連携して治療プランを決定していきます。

いかがでしょうか。

クッシング症候群は内分泌疾患の中では遭遇する機会が多いポピュラーな病気です。

しかし、皮膚症状が治りにくい・体重が落ちにくいなどの症状は『この子、前からこんな感じだから』と気づかれていないケースが多いように感じます。

クッシング症候群は、アトピー性皮膚炎や糖尿病、骨関節炎などの疾患を併発している場合、非常にやっかいな病気です。

いくら病気の治療をしていても、基礎疾患であるクッシング症候群のコントロールができていないと治療がうまくいかないことが多々あります。

中高齢以降のワンちゃんで、今回のお話に当てはまっているかな、と思われる方は一度ご相談ください。

文責:獣医師 小川