甲状腺機能低下症について

みなさま、こんにちは。

今回は甲状腺機能低下症について解説していきます。

甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)ってどんな病気?

まず、甲状腺機能低下症とはどんな病気でしょう?

主に中高齢のワンちゃんでみられる病気で、頸部にある甲状腺から出るホルモンが少なくなってしまう病気です。

甲状腺から出るホルモンが減少すると以下のような臨床症状が認められます。

・食欲は変わらないor減少するが体重が増える

・脱毛

・活動性が減少する

・気だるそうな顔つきになる

・外耳炎

・皮膚がベタベタする

・尻尾の毛が抜ける

・まれに、虚脱・低体温・昏睡などを引き起こす粘液水腫性昏睡の発生

とくに皮膚の状況の変化や活動性の減少は顕著に認められることが多いため注意して観察すべき項目です。

また、これらの変化は他の内分泌疾患でも認められるため、鑑別診断も同時に進める場合もあります。

甲状腺機能低下症はどうやって分かるの?

次に診断です。

甲状腺機能低下症を疑った場合、まずは院内で計測可能な甲状腺ホルモンの測定を実施します。これは数十分で結果が分かる血液検査です。

臨床症状が合致し、甲状腺ホルモンが低値であった場合、甲状腺機能低下症を疑います。

ただし、甲状腺ホルモンは他の疾患が存在する場合や投薬の影響を受けて低値になるケースもあるため、より詳細に調べるためには外部の検査センターに血液を提出して診断を進めます。

甲状腺機能低下症はどうやって治療するの?

検査の結果、甲状腺機能低下症を疑った場合、治療に進みます。

治療は基本的に内科療法を行ないます。

つまり、十分量放出されていない甲状腺ホルモンをお薬として投与することで補充してやるという方法です。

はじめに低用量から投与を開始し、一定の間隔で甲状腺ホルモンの値をモニタリングします。

その数値と臨床症状が改善しているかを目安にして投与量を決定し投薬を継続します。

この治療はホルモンを補充することが目的なので、基本的に生涯に渡り投薬を継続します。途中で休薬や投与量の調節を行なうケースもありますが、この場合もホルモンの測定結果と臨床症状を指標にして慎重に行ないます。

いかがでしょうか?

前回に引き続き、中高齢のワンちゃんでよく遭遇する内分泌疾患である甲状腺機能低下症についてのお話をさせていただきました。

この病気も、皮膚疾患のコントロールや体重管理がうまくいかない時に基礎疾患として隠れていることが多い病気の一つで、同時に治療していかないと他の病気の治療が成立しない厄介な病気です。

前述した臨床症状に合致するワンちゃん、あるいは年齢的に心配なワンちゃんは一度ご相談ください。

健康診断時などに普段測定している項目に加えて、甲状腺ホルモンの測定が実施可能です。

これから暖かくなってくると皮膚疾患が増えてきます。

今回のお話が、その時期に差し掛かる前に基礎疾患を見つけ出す手がかりになってくれると幸いです。

文責:獣医師 小川