甲状腺機能亢進症について

みなさま、こんにちは。

今回は甲状腺機能亢進症の解説をしていきたいと思います。

甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)って何?

前回解説した甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの分泌が減ることで様々な症状が発生する病気でしたが、今回の甲状腺機能亢進症は反対に甲状腺ホルモンの分泌が亢進することで様々な病態が発生する病気です。

甲状腺機能低下症について

甲状腺機能亢進症は高齢の猫に多く見られる

この病気は高齢の猫での発生が多く、症状は以下のものが挙げられます。

・体重減少

・食欲増進or食欲低下(どちらも起こり得ます)

・活動性の亢進

・多飲多尿

・嘔吐や下痢

・多食

・毛がバサバサになる

これらは甲状腺ホルモンの分泌が増えることで発生します。

また、血液検査でALT、ALPという肝酵素の上昇を認めた場合も甲状腺機能亢進症を鑑別診断に加えます。

甲状腺機能亢進症はどうやって分かるの?

次に診断です。

前述した臨床症状や血液検査の結果から甲状腺機能亢進症を疑った際は、甲状腺ホルモンの測定(血液検査)を実施します。

この検査で甲状腺ホルモンの値が高値であれば甲状腺機能亢進症と診断し治療に進みます。

甲状腺機能亢進症はどうやって治療するの?

治療については主に内科治療外科治療の2種類が存在します。

この病気、特に猫の甲状腺機能亢進症は甲状腺の過形成・腺腫・腺癌が原因で生じるケースが多いことが知られています。

これらの甲状腺の病変が過剰にホルモンを分泌する結果、様々な症状を引き起こします。

内科療法では、このホルモンの合成を抑制するお薬を投与して臨床症状の改善を狙います。

1日1回の投与から始め、臨床症状の改善・副作用の発生・甲状腺ホルモンの値などをチェックしながら投与量を調節します。

この治療でも改善が得られない、あるいは甲状腺腫瘤が悪性腫瘍の可能性がある場合は外科治療が適用となります。

多くのケースで甲状腺の左右いずれかに病変を形成するので、患側の腫瘤切除を実施します。

また、術後に甲状腺ホルモン高値が続いていないか、逆に低値になっていないかをモニタリングし、内科治療に引き継ぐケースもあります。

甲状腺機能亢進症で気を付けたいポイント

ここで、甲状腺機能亢進症を診断・治療する上で気をつけたいポイントを一つ紹介します。

前述したように甲状腺機能亢進症は高齢猫での発生が多い病気です。

そして、高齢猫で最も多く併発している疾患が慢性腎臓病です。

慢性腎臓病が進行してくると食欲不振や嘔吐、脱水、体重減少などの臨床症状が目立ってきます。

しかし、甲状腺機能亢進症を併発している場合、食欲が増進しているケースだと慢性腎臓病の存在に気づいていない可能性があります。

そんな猫が甲状腺機能亢進症の治療を開始した後に一気に食欲不振に陥り、その段階で慢性腎臓病を併発していることに気づく、というイメージです。

猫の甲状腺機能亢進症、とくに高齢猫の場合は併発疾患として慢性腎臓病が存在していることを想定しながら検査・治療に臨む必要があります。

甲状腺機能亢進症を治療しないとどうなるの?

甲状腺機能亢進症を治療しないとどうなるのでしょうか?

前述したように、すぐに生命維持に関わる疾患ではありませんが、臨床症状が出ている場合はそれが継続してしまいます。

また、慢性腎臓病が隠れているケースではそちらも進行してしまうので脱水や体重減少が進行してしまいます

さらに、甲状腺腫瘤が大型の場合は徐々に大きくなることで呼吸障害や皮膚障害が発生するケースもあります。

いずれにしても、診断した段階で治療介入することを強くオススメします。

いかがでしょうか?

前回に引き続き内分泌疾患を取り上げて解説しました。

内分泌疾患は臨床症状と病気を結びつけるのが飼い主さんにとって難しいのではないかと考えています。

今後も様々な病気を取り上げて可能な限り分かりやすく解説していきますので、思い当たるかな?と感じられた方は一度ご相談ください。

文責:獣医師 小川