尿路について

みなさま、こんにちは。

今回は尿路についてのお話をしたいと思います。

尿路ってなんのこと?

まず、尿路とは何を指す言葉でしょう?

尿路は腎臓〜外尿道口までを表す言葉です。

とくに過去に別の病院で治療を受けていた子の飼い主さんからお話を伺う際に、次のようなパターンになることがあります。

獣医師「今日は、おしっこの仕方がいつもと違うということで受診されましたが、以前にも同じことがあったり、何か病気をしたことがありますか?」

飼い主『以前、別の病院で結石があると言われました。』

獣医師「結石ですか。それは腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこにあることを指摘されましたか?」

飼い主『尿結石って言われました。』

獣医師「・・・そうですか。具体的にどこにあるというのは記憶にありませんか?」

飼い主『・・・覚えていないです。』

こんな感じです。

また、同様に多いのが、尿管と尿道を混同しているケースです。

そこで今回は、尿路を上から順番に解説していき、今後尿路疾患に遭遇した場合の飼い主さんの理解度を上げることを目標として、お話を進めていきます。

尿路その①腎臓

まずは腎臓です。

腎臓は左右に1つずつ存在する臓器で、全身を巡ってきた血液が流れ込み、体にとって必要なものと不要なものを選別するフィルターの役割を果たしています。

ここで不要と判断された老廃物は尿とともに体の外へ排出されます。

尿路その②尿管

次に通るのが尿管です。

尿管はそれぞれの腎臓から続く細い管で、腎臓で形成された尿が通過するルートです。

この尿管は尿路の中で最も細いため、閉塞や通過障害が生じやすいポイントです。

尿路その③膀胱

尿管を通った尿は次に膀胱に貯まります。

膀胱は尿を一定量貯めておくための臓器で、ある程度溜まると尿意を感じ、排尿します。

膀胱は広いスペースを有する臓器ですが、トラブルが生じるとうまく広がらなくなることで頻尿などの排尿障害を起こします。

これは飼い主さんが最も気付きやすい症状なので、必然的に僕たちも膀胱疾患との遭遇率が高くなる印象があります。

尿路その④尿道

膀胱で貯められた尿は尿道を通って体外に排出されます。

この尿道ですが、雄のワンちゃんの場合、主に次の2ヵ所での病気に遭遇する機会が多いです。

前立腺部・・・膀胱を出てすぐの尿道を取り囲むようにして前立腺という組織が存在します。未去勢の男の子の場合、加齢とともに前立腺肥大や前立腺嚢胞などの病気を起こすケースがあり、排尿障害が発生することがあります。

陰茎骨周囲・・・雄のワンちゃんのペニスには陰茎骨という骨があります。

尿道は陰茎骨と並走するように走っているのですが、陰茎骨の手前の部分に結石が詰まってしまうケースが多いです。

こうして腎臓で作られた尿は外尿道口から体外に排出されます。

ここで先ほどの会話に戻ってみましょう。

飼い主さんがおっしゃる『尿結石』という言葉ですが、結石が存在する場所が腎臓なら腎結石、尿管なら尿管結石、膀胱なら膀胱結石、尿道なら尿道結石、となります。

結石の場所によって治療方法が変わる

僕たちがこれにこだわるのは、それぞれに対する治療方法が異なるからです。

また、セカンドオピニオンの場合、どこに結石が存在していたかということと、現在抱えている問題に因果関係があるかを考える上でも重要な因子となります。

いかがでしょうか?

今回は、尿路についてのお話をしました。

尿が形成されてから体外に排出されるまでにどこを通るのか、尿路疾患の説明をするときに頻繁に説明するのですが、この経路は人間も全く同じです。

覚えておいて損はないと思いますので、今回のお話を機に尿の生成から排出までを頭の片隅にとどめていただけると幸いです。

文責:獣医師 小川