人間用常備薬のワンちゃん・ネコちゃんへの使用について

みなさま、こんにちは。

今回は少し変わった趣向のお話をします。

タイトルが長くなったのですが、家にある薬をワンちゃん・ネコちゃんに使用する際の注意点についてお話していきます。

人間のお薬をワンちゃん・ネコちゃんに使ってもいいの?

結論から申し上げると、獣医師が診断し、その病気に対して処方した薬以外は使用しないでほしい、というのが大原則です。

その上で、もう少し細かく分類してお話していきます。

人間用の内服薬をワンちゃん・ネコちゃんに使うのはOK?

まずは内服薬です。

これは絶対に飲ませないでください。

人間の症状と体重に基づいて処方されている薬なので、多くの場合が過剰投与になってしまいます。

また、内容によってはワンちゃん・ネコちゃんが飲んではいけない薬もありますので、ご自宅にある内服薬を飲ませるという行為は絶対にしないでください

人間用の軟膏や消毒薬などの外用薬をワンちゃん・ネコちゃんに使うのはOK?

次に外用薬です。

ご自宅に軟膏やクリーム、ローションなどさまざまな形状の塗り薬をお持ちのケースがあります。

こちらも基本的に飼い主さんの判断で使用するのは避けてください

僕たちも皮膚疾患の治療を行う際に、人体用の外用薬を処方することがあります。

ただし、この場合は僕たちが病態を診断し、適用を考えた上で使用する薬剤を選択しています。

例えば、抗生剤入りの外用薬を使う場合、皮膚にびらんがあるのならローションタイプは痛いので軟膏を選択しますし、有毛部に使うなら軟膏は使いにくいのでローションやクリームを選択します。

また、使用する頻度や期間についても、病態の改善の仕方や耐性菌出現予防などを考慮して設定しています。

唯一、例外的に使用を許可するのは、僕達が処方しようと思っていたものがご自宅にある場合です。

この際も、手持ちの薬がどんな内容なのかきちんと飼い主さんが把握されているのであれば、それを使ってくださいと指示しています。

サプリメントはワンちゃん・ネコちゃんに与えても大丈夫?

最後にサプリメントです。

ワンちゃん・ネコちゃんそれぞれで実にさまざまなサプリメントが存在しています。

こちらについては食べさせていて有害事象がなければ用量を守って使用してもらうのは構いません

ただし、与える場合はかならずワンちゃん・ネコちゃん向けに作られているサプリメントを与えるようにしてください。

人間用のサプリメントに関しては、内服薬同様にワンちゃん・ネコちゃんに与えるのは避けましょう。

ただし、サプリメントを摂取している子が新たに病気になり、お薬を服用し始める場合は注意が必要です。

サプリメントの種類によっては薬剤の吸収を妨げたり、逆に相乗効果で薬剤が過剰に効いてしまう場合があります。

僕達は、新たに薬を処方する場合や、麻酔をかける際にサプリメントの常用があるかをお伺いしますが、飼い主さんもこの事実を認識していただけると非常に助かります。

似たような症状なら自己判断で外用薬を使っても大丈夫?

内服薬、外用剤、サプリメントの3パターンについてお話しましたが、この中で圧倒的に聞かれるのが外用剤使用についてです。

特に皮膚疾患の場合が多いのですが、次のようなケースは回答に苦慮します。

飼い主「先生、今日は連れてきてないんですけど、うちのもう1匹の子、背中にポツポツができてるんですよ。」

獣医師「そうなんですか。では、近いうちに診察してみましょう。」

飼い主「その子、怖がりで連れてくるのは難しいんですよね。赤い小さなポツポツなんです。」

獣医師「写真って撮ってます?」

飼い主「写真はないです。でも、前にも何回かなってて、今日連れてきた子に出してもらっているお薬塗っておいていいですか?」

こんな感じです。

僕達は基本的に自分達で診察をして診断し必要と判断しないと薬を処方できません。

飼い主さんの目には同じに見えても実は別の皮疹かもしれないし、あるいは皮疹ではなく皮下出血かもしれません。

病院に来て緊張してしまう子が多いのは承知していますが、病気の見落としを防ぎ、早期発見をするためにも必ず診察を受けていただきたいです。

いかがでしょうか。

今回は手持ちのお薬のワンちゃん・ネコちゃんへの使用に関してのお話をしました。

冒頭でも述べましたが、基本的に僕達が診断して使用を指示したもの以外は使わないで欲しいというのが本音です。

内服の使用を聞かれることはさすがに少ないですが、外用剤については本当によく聞かれます。

今回のお話で、診断したものについて薬剤を処方する、という原則の重要性が伝われば幸いです。

文責:獣医師 小川