みなさま、こんにちは。
今回は肛門腺破裂についてお話します。
肛門腺・肛門嚢とは
肛門腺または肛門嚢についてはみなさんご存知かとは思いますが、肛門の4時と8時方向に存在する袋状の器官です。
ワンちゃんもネコちゃんも持っています。
ここに分泌物が溜まり、排便時や腹圧がかかった時に排出されるのですが、排出が苦手で溜まってしまう子が一定数います。
僕たちは診察時に肛門嚢を触診し、溜まっている子は絞って排出するようにしています。
また、飼い主さんが肛門嚢の存在を認識していない場合や、知っているけど絞り方がよく分からない場合は、実際に目の前でレクチャーしています。
肛門腺は定期的に絞って排出する必要あり
肛門腺が溜まるスピードはケースバイケースですが、1ヶ月に1回は確認して絞ってあげるようにお伝えすることが多いです。
実際に、ご自宅で絞るのが困難な方は1ヶ月に1回来院していただき身体検査と併せて肛門腺絞りを行なっています。
肛門腺が溜まってくるとどうなるの?
肛門腺が溜まってくると次のようなサインがみられるようになります。
・お尻を床にこすりつける
・しきりに肛門周囲を舐める
・お尻をつけて座るのを嫌がる
・肛門周囲から独特の強い臭いがする
これらのサインを認識したら肛門腺を絞って分泌物を排出すべきタイミングです。
しかし、このサインを見落としていたり、そもそもサインを出してくれない子の場合は気づかずに過ごすうちに、肛門腺の炎症や細菌感染が生じてしまいます。
こうなると、ますます違和感や痛みが強くなり、強く擦ったり舐め続けることで肛門腺が破裂し、皮膚が欠損します。
そこから血液や膿が排出されるのですが、この段階で初めて認識される飼い主さんが多い印象を持っています。
肛門腺が破裂してしまった場合はどうすればいいの?
肛門腺が破裂した場合は傷口内部の洗浄をしっかり行ない、感染抑制と疼痛管理を中心に治療を実施します。
また、傷口を舐めないようにエリザベスカラーの装着を併用するケースが多いです。
一度、肛門腺破裂を起こした子で、その後何度も破裂を繰り返す、あるいは肛門腺が排出しにくい状態が続く子の場合は外科手術で肛門腺を切除することも選択肢に入れて提案します。
いかがでしょうか?
今回は肛門腺破裂についてのお話をしました。
ワンちゃんでもネコちゃんでも肛門腺絞りは非常にポピュラーな処置で、毎日・毎症例のように実施しています。
しかし、僕たちがその子たちに会うのは1ヶ月に1度程度なので、サインを出しているのを認識するのは飼い主さんということになります。
ワンちゃんもネコちゃんも肛門腺が貯まること、排出してあげるべきであることが周知されるようになった印象を持ちます。
しかし、貯まるスピードに個体差があり、早い子だと1週間も経てば肛門嚢が充満していた子を経験しています。
肛門腺破裂を起こしてしまうと治療に時間がかかり、その間の管理が大変になり、何よりも痛いのでワンちゃん・ネコちゃんの不快感が強くなってしまします。
今回のお話をきっかけに、自宅で肛門腺の確認をしたり、出しているサインについてより注意深く見られるようになっていただけると幸いです。
文責:獣医師 小川