みなさま、こんにちは。
今回はひも状異物誤食についてのお話をしたいと思います。
ワンちゃん・ネコちゃんが誤食しやすいひも状異物
以前、異物誤食についての記事でも触れたのですが、僕たちが普段診察をしていて遭遇しやすい異物の一つにひも状異物があります。
これは、衣類の紐やほつれた繊維、ひも状のおもちゃ、糸などさまざまなケースがあります。
特にネコちゃんはひも状異物誤食に注意が必要
とくにひも状異物誤食は猫でとても多い印象があります。
猫は、長い紐や、紐の先に何かがくっついているような形状のおもちゃを好みます。
このようなおもちゃで猫と遊んだ方はイメージがしやすいと思いますが、猫はおもちゃにじゃれついているうちに噛んだり口の中に入れたりします。
飼い主さんが見ている前ならすぐに取り上げられるのですが、猫が一人でいる時に紐状のもので遊んでいると誤食してしまう可能性が高くなります。
ひも状異物を誤食するとどうなるの?
ひも状異物を誤食してしまった時は、次のような症状がみられます。
・元気・食欲低下
・嘔吐(食事を食べていないのに吐く、水を飲んでも吐く)
・発熱(消化管穿孔を起こした場合みられることがあります)
普段から服や敷物を齧ったり、紐状のおもちゃが与えられている子の場合は上記の徴候があればひも状異物閉塞を真っ先に考えます。
また、ひも状異物が腸閉塞を起こした時、画像検査ではとても特徴的な見え方をします。
消化管は食べ物を消化して、先に送る時に自らが縮んで伸びるという動きを繰り返しています(これを蠕動運動といいます)。
ひも状異物が消化管に引っかかると、蠕動が起こるたびに消化管が閉塞部に集まり、縮みっぱなしで伸びられなくなってしまいます。
この状態でレントゲンを撮影すると、消化管が一箇所に寄っていたり、強く蛇行しながら拡張している様子(これをアコーディオンサインと呼びます)がみられることが多いです。
ひも状異物を誤食してしまった場合の治療は?
次に治療です。
既に閉塞を起こしている場合は外科手術で消化管を切開し、直接異物の除去をします。
また、前述したようにひも状異物閉塞の場合、広範囲の消化管が巻き込まれているケースが多いため、可能な限り早く異物を除去しないと消化管の壊死が広範囲に及ぶ可能性が高いです。
また、ひも状異物を誤食した動物の口の中や、肛門から紐の一部が出ていることがあります。
この場合、引っ張ったりせずに早急に動物病院を受診してください。
一部が閉塞し、一部がフリーになっている場合、強く引っ張ることで閉塞部に負担がかかり消化管が穿孔してしまう可能性があり、とても危険です。
ひも状異物を誤食しないためには?
次に、もっとも重要な予防のお話です。
ひも状異物を含め、誤食は人間側のエラーによって発生する事故です。
つまり、人間側が注意すれば予防することができます。
僕が実際に飼い主さんにアドバイスするのは次のような内容です。
・ひも状のおもちゃ、猫が口に入れられるサイズのおもちゃを与えっぱなしにしない
・おもちゃで遊ぶ際は、必ず飼い主さんが持って遊び、きちんと片付ける
・布や衣類を齧る傾向がある子には、敷物などを与えない
・その子の行動できる範囲内に誤食する可能性のあるものを置かない
これらを毎回必ずお伝えしますが、残念ながら異物誤食の再発率は高いのが現状です。
犬や猫に「気をつけてね。」と言ったところで、事故は防ぐことができません。
『うちの子は大丈夫だろう。』ではなく、『もしかしたら食べてしまうかもしれないので気をつけよう。』と考えていただけると幸いです。
いかがでしょうか。
今回は異物のうち、ひも状異物にスポットを当ててお話しました。
遭遇する異物誤食のうち、ひも状異物の発生率が上昇しているイメージがあります。
(おそらくマスクが捨てられていたり、落ちていることが原因ではないかと考えています)
前述した通り、ひも状異物は異物誤食の中でも重篤化する可能性が非常に高いです。
誤食した可能性がある場合、速やかに動物病院を受診していただけるようお願いいたします。
文責:獣医師 小川