冬に増える事故〜低温やけどについて〜

みなさま、こんにちは。

今回は、冬になると遭遇する機会が増える事故の代表として低温やけどについてのお話をしようと思います。

低温やけどってどんな状態?

まず、低温やけどとは何でしょうか。

一般的な火傷とは、約70℃以上の物体に接触することによって瞬間的に発生する組織の損傷を意味します。

一方、低温やけどは通常の火傷よりも低い温度(45℃〜50℃くらい)の物体に長時間接触することによって発生する組織の損傷を意味します。

このように発生機序は異なりますが、組織が損傷するという点では同じ病態です。

低温やけどの症状

次に、低温やけどで発生する症状の分類についてです。

熱傷の深度によって次のように分類されます。

深度 障害組織 外見および症状
Ⅰ度 表皮のみ 赤くなり熱感がある。疼痛あり。
浅達性Ⅱ度 真皮表層 血漿の血管外漏出、ただれ、水疱、強い疼痛あり。
深達性Ⅱ度 真皮深層 皮膚は黒〜白っぽくなる。毛根が破壊され、強い疼痛。
Ⅲ度 真皮全層 黒く、薄くなる。疼痛なし。

注意しておきたいのが、熱傷の場合、皮膚は熱を蓄積するので来院時から3日間ほどは病態が進む可能性があります。

よって、正確な深度評価を行う場合は、時間をおく必要があり、その間は治療を先行させる必要があります。

低温やけどはどうやって治療するの?

次に治療についてです。

熱傷を疑う際、まず行うのが病変の分布の確認と全身状態の把握です。

飼い主さんが把握している場所以外にも損傷している組織がないか、熱傷に続発する全身状態の変化はないか、ショック状態にないか、などを把握し救命と対症的な処置を同時に行っていきます。

熱傷は時に広範囲の組織損傷を伴うので、敗血症予防のために全身性抗菌薬を使用したり、壊死組織を外科的に除去したり、損傷箇所の保護・局所治療を長期的に実施したりと、複雑な工程を丁寧に行っていく必要があります。

低温やけどは通常のやけどよりも起こりやすい

ところで、なぜ今回低温やけどにスポットを当てて取り上げたのでしょうか。

それは、低温やけどが通常の火傷に比べて容易に起こりうる可能性があるからです。

先述したように、低温やけどは45-50℃ほどの物体に長時間接触することで生じます。

そして、この状況を再現できてしまうものがご家庭内にごく身近に存在しているのです。

代表的なものとして次のようなものが挙げられます。

・ホットカーペット

・湯たんぽ

・電気アンカ

・家電のコンセント・コード類

特にホットカーペットや湯たんぽなどは接触したまま寝てしまうことで長時間の接触を招く可能性が高く、また設置する表面積が広くなってしまうのでとても厄介です。

もし、ご家庭で低温やけどを疑う症状を見つけた場合は、速やかに患部を冷水で冷やした上で動物病院を受診してください。

先述したように、刻一刻と病態が変化する可能性があるので、少しでも早く状態の把握と治療開始が求められます。

低温やけどを起こさないようにするためには?

最後に予防についてです。

予防方法は単純で、前述したようなものを使用しないことです。

寒さ対策としては、エアコンを使用して室温をコントロールしたり、厚手の毛布を与えることで保温効果が期待できます。

また、皮膚のコンディションに問題がなく、本人が嫌がらなければ服を着るのも効果的です。

いかがでしょうか。

今回は、低温やけどについてのお話をしました。

基本的にワンちゃん・ネコちゃんは夏の暑さに比べると冬の方が快適に過ごすことができます。

しかし、中には寒がりな子もいます。

そこで飼い主さんが暖を取るものとしてホットカーペット等を選択してしまうと、低温やけどを招く可能性が高くなるので、エアコン等を活用して室温を管理する方法を選んでいただけると幸いです。

文責:獣医師 小川