鼠径ヘルニアについて

みなさん、こんにちは。

今回は鼠径ヘルニアについてのお話をしたいと思います

鼠径ってなに?

まず、鼠径とはどこを指す言葉か、分かりますか?

鼠径とは、足の付け根を表す言葉です。

鼠径部は複数の筋肉が重なっており、この筋肉の隙間に血管や神経が通るスペースが存在します。

このスペースが先天的に広い場合、加齢と共に広がる場合、あるいは外傷によりスペースが広がってしまった際に発生するのが鼠径ヘルニアという病気です。

鼠径ヘルニアになるとどうなるの?

鼠径ヘルニアが発生した場合の症状についてです。

鼠径部や最後乳腺部の皮下組織にヘルニア内容が触れるようになります。

飼い主さんの多くは、この段階で何かが触れるということに気付き、相談してくださいます。

ここで触診を実施するのですが、この段階で僕たちが考えるのは、これが鼠径ヘルニアなのか皮下組織に発生した別の病変なのか、ということです。

鼠径ヘルニアが発生した際、脱出するヘルニア内容は、雄では腹腔内の脂肪、未避妊の雌では子宮であることが多いと報告されています。

また、スペースが広いと消化管などが入り込むこともあります。

このように、明らかに腹腔内組織が入り込んでいたり、ヘルニアが絞扼して痛みが出ている場合は鼠径ヘルニアの疑いが強くなります。

一方、皮下組織に脂肪のような感触の何かが触れる、という状態だと触診だけでは判断ができないケースがあります。

この場合は、レントゲンやエコー検査を実施したり、針生検で細胞診を実施し、鼠径ヘルニアなのか別の病変なのかを鑑別していく必要があります。

鼠径ヘルニアはどうやって治療するの?

次に治療についてです。

鼠径ヘルニア治療の第一選択は手術でヘルニアを整復することです。

ただし、鼠径ヘルニアの症例全てで手術を行なっているわけではありません。

僕が積極的に手術を勧めるのは以下のようなケースです。

・ヘルニア孔が広く、子宮や膀胱、消化管が脱出している場合

・ヘルニア孔が絞扼し、痛みがある場合

・ヘルニアの内容に関わらず、自分で気にして舐める・咬む仕草があり、皮膚や周囲の組織 が傷害される場合

上記に該当せず、飼い主さんが外科手術を強く希望されない場合は、定期的な経過観察を実施し、病気の進行がないかチェックしていきます。

いかがでしょうか。

今回は、鼠径ヘルニアについてのお話をしました。

前述したように鼠径ヘルニアは、体表腫瘤との鑑別が必要となるケースがある病気なので経過観察は慎重に行う必要があります。

また、鼠径部のスペースが広がっていく原因に関しても、単純に年齢と共に広がっていくケースもあればホルモン性疾患が隠れているケースもあるので、こちらも同時に考えていく必要があります。

日頃からこまめにスキンシップをする飼い主さんは、僕たちも発見できないような小さな病変を見つけてくれます。

病気の早期発見は早期治療に繋がるので、ご自宅で気になる病変を見つけた場合は、なるべく早めに動物病院を受診してください。

文責:獣医師 小川