心臓病と安静時呼吸数について

みなさま、こんにちは。

今回は心臓疾患のモニタリングをする際、安静時呼吸数を把握しておくことの重要性についてお話したいと思います。

安静時呼吸数については以前にも解説していますので、よろしければそちらも参考にしてください。

ワンちゃん・ネコちゃんの安静時呼吸数について

ワンちゃん・ネコちゃんの安静時呼吸数

一般的に安静時呼吸数の基準値は次のように考えられています。

・小型犬:20-30回/分

・大型犬:15回/分

・猫:20-30回/分(ただし睡眠時はもう少し少なくなる可能性あり)

個体差はありますが、この数字を大きく超える呼吸数の増加がある場合は体に何らかの異常を起こしている可能性を常に考慮する必要があります(もちろん興奮時や運動後の一過性の呼吸数増加は除きます)。

この数字を細かく覚えておく必要はありません。

重要なのは、普段の安静時呼吸数と大きくかけ離れた状態になっていないか、ということです。

ワンちゃん・ネコちゃんの息苦しさは心臓病のせいかも?

ワンちゃん、ネコちゃんの心臓病のモニタリングにおいて、「息苦しさ」というのは非常に重要な項目の一つです。

人間の場合、心臓病を抱えた患者さんが息苦しさを訴えたら、すぐに病気の進行を考えます。

しかし、ワンちゃん・ネコちゃんの場合、この「息苦しさを訴える」という行為がとても難しいです。

心臓病、特にワンちゃんの弁膜疾患がコントロールできなくなると、うっ血性心不全という状態に陥ります。

現在のガイドラインでは、うっ血性心不全とは肺水腫の状態を指します。

つまり、肺が水浸しになり呼吸困難になっている状態です。

ただし、この状態になるまでに必ず息苦しい段階がいくつか存在するはずです。

人間ならば、肺水腫になるまでに息苦しさを覚え、必ずそれを医師に訴えます。

ところが、ワンちゃん・ネコちゃんは話すことができないので、うっ血性心不全を客観的に評価しようと思うと、肺水腫という状態に陥らないと定義づけができない、というのが現状です。

安静時呼吸数のチェックが病気早期発見の要

そこで重要になってくるのが、安静時呼吸数です。

心臓病が進行し、呼吸に影響が出る際、呼吸困難よりも、咳よりも、まず呼吸数が増えます。

しかし、呼吸数を意識して観察していないと多くの場合は見逃してしまいます。

心臓疾患を発見し、治療しているワンちゃん・ネコちゃんの飼い主さんには、このお話をして、自宅で安静時呼吸数のモニタリングをお願いしています。

また、これは私見なので根拠があるわけではないのですが、シニアに差し掛かったワンちゃん・ネコちゃんの安静時呼吸数・心拍数を普段からモニタリングすることで心疾患を含む病気の早期発見に繋がる、と考えています。

安静時の心拍数や呼吸数は、理由なく増減することはありません。

減ったり増えたりするのならば、そこに病気が潜んでいる可能性が高いです。

僕たち獣医師は、動物病院で診察するという瞬間しかワンちゃん・ネコちゃんと触れ合っていません。

動物病院に診察に来ているワンちゃん・ネコちゃんは緊張しているので、心拍数や呼吸数は安静時のものではありません。

この状況をカバーできるのが飼い主さんです。

どんな病気にも言えることですが、普段とは様子が違うということに最も気づくチャンスがあるのは飼い主さんです。

病気の治療を行うのは、獣医師や動物病院のスタッフだけではなく、飼い主さんもチームの一員であるという認識を持っていただけるととても嬉しいです。

いかがでしょうか。

今回は心臓病と安静時呼吸数のお話をしました。

今回のお話が病気の早期発見・治療に結びついてくれれば幸いです。

文責:獣医師 小川