みなさま、こんにちは。
今回はフィラリア症のお話をしたいと思います。
ワンちゃん・ネコちゃんのフィラリア症について
毎年、春になると動物病院に来て、フィラリアの検査を受けて、1ヶ月に1回のお薬をもらっているなー、という飼い主さんが多数いらっしゃるかと思います。
今回は、以下の3つにテーマを絞ってフィラリア症の解説をしていきます。
①フィラリア症ってどんな病気
②なぜ検査が必要なのか
③お薬を飲む期間の設定方法
フィラリア症ってどんな病気?
フィラリア症は蚊が媒介する感染症で、ワンちゃん、そしてネコちゃんも感染する病気です。
フィラリアの幼虫を保有している蚊がワンちゃん・ネコちゃんを吸血することで感染します。そして、体内に侵入したフィラリアの幼虫は血管内で成長し、成虫になると心臓に寄生します。フィラリアが心臓に寄生することで次のような症状を起こします。
・咳が出る
・息切れを起こす
・元気・食欲低下
・血尿
・貧血
・腹水・胸水貯留
また、前述した通りフィラリアはネコちゃんにも感染します。
症状はワンちゃんと同様ですが、ワンちゃんと比べて検査での検出率が低いため早期発見が困難なケースがあります。
なぜ検査をしてから薬を飲むの?
毎年、フィラリア症の薬を処方する際、必ず血液検査を実施し、フィラリア症に感染していないことを確認してから薬を飲んでもらうよう指示しています。
みなさんが1ヶ月に1回与えているお薬はフィラリア幼虫の駆除薬です。
つまり、感染を予防するための薬ではなく、フィラリア幼虫を駆除するためのお薬です。
よって、体内にフィラリア幼虫が存在していれば、お薬を飲むとフィラリア幼虫が死にます。
フィラリア幼虫は生きている間は免疫から逃げるための働きを持っており、感染を続けることが可能なのですが、死ぬとこの働きが無くなります。
すると、フィラリア幼虫の死骸に対して過剰な免疫反応が起こってショックを起こしたり、死骸が血管に詰まってしまうなどの問題を引き起こす可能性があります。
これらを起こさないためにも、投薬前は必ず血液検査を実施し、陰性であることを確認する必要があるのです。
薬を飲む期間の設定方法
当院では5月〜12月の8か月間をフィラリア薬の投薬期間としています。
これは蚊が吸血を行う気温と関連しています。
フィラリア症は蚊が吸血することで移る病気です。
蚊は18℃を超えると吸血することが知られており、20℃以上になると活発に吸血を行います。
近年、冬でも日中は暖かい日があり、最高気温が18℃を超えている日が何日かありました。
前述した通り、フィラリア薬はフィラリア幼虫の駆除薬なので飲み終わりを11月に設定すると、11月後半に暖かい日があり蚊の吸血があった場合、そこでの感染をカバーすることができなくなってしまいます。
よって、飲み終わりを12月にすることで、フィラリア症の感染予防をより確実なものにすることを提案しています。
いかがでしょうか。
今回はフィラリア症についてのお話をしました。
『蚊が関係している病気で・・・』
『毎月薬を飲むやつで・・・』
このようなイメージができる飼い主さんは多いかと思います。
今回のお話で、フィラリア予防の重要性や意義を再認識していただけると幸いです。
文責:獣医師 小川