みなさま、こんにちは。
今回はワンちゃんとネコちゃんの変形性関節症とその管理についてお話したいと思います。
変形性関節炎ってどんな病気?
まずは、変形性関節症とはどんな病気でしょうか。
変形性関節症は次のように定義されています。
関節の変形に伴い慢性痛が発生します。
変形関節炎になりやすいワンちゃん・ネコちゃんの特徴
この病気は特に10歳以上のワンちゃん、ネコちゃんで認められることが多く、好発種も報告されています。
・ポメラニアン
・シェットランドシープドッグ
・ウエルッシュ・コーギー・ペンブローク
・ラブラドール・レトリバー
・スコティッシュホールド
・アメリカンショートヘア
・ペルシャ
慢性痛については以前も記事にしたのですが、最も重要なことはワンちゃん・ネコちゃんが痛みを抱えていることに気づけるかどうかです。
慢性痛のワンちゃん・ネコちゃんが出すサイン
慢性痛を抱えているワンちゃん・ネコちゃんが出すサインとして、次のようなものが挙げられます。
・散歩に行きたがらなくなった
・散歩中、段差の昇り降りを嫌がる
・ソファーや椅子にのぼらなくなった
・起立に時間がかかるようになった
・オモチャに反応しなくなった
・寝ている時間が多くなった
・歩き方がおかしくなった
・ジャンプをしなくなった
・高いところから降りるのをためらうようになった
・トイレに入るのが大変で排泄を失敗するようになった
・爪研ぎをしなくなった
・グルーミングをしなくなった
・じゃれなくなった、じゃれるけど動き回らずその場でじゃれつくようになった
・気性が荒くなった
・食欲が落ちた
これらのサインを認識する際に、最も注意する必要があるのが『最近動かなくなったけど、年が年だからね』という思い込みです。
もちろん、加齢とともに若い頃よりも活動性が落ちるのは当然ですし、歳をとることで発生した他の疾患が原因で動きが落ちているケースも多々あります。
しかし、『年だからねー』と飼い主さんが考えているワンちゃん・ネコちゃんの関節を触診してみると、変形性関節症による痛みを抱えている子が、実はとても多いです。
変形性関節炎の治療方法は?
さて、続いては治療についてです。
変形性関節症は、多くの場合は原発性で原因については明らかになっていません。
つまり、治療のメインは根本的な原因を取り除くことよりも、痛みが発生している場合、それを軽減し、QOLを改善することになります。
治療は以下の4パートで構成されるイメージです。
治療法①痛みのケア
→最も重要な部分です。基本的には非ステロイド性消炎鎮痛剤をベースとし、補助的に他の鎮痛剤を組み合わせて使用します。投与方法は内服や、長期間作用型の注射剤などがあります。
治療法②運動
→慢性痛を抱えている子の飼い主さんは、『痛みがあるのに運動させていいの?じっとさせておいた方がいいんじゃないの?』と思われる方が非常に多いです。
しかし、変形性関節症の慢性痛に関しては適度な運動を行ない筋肉を発達させることが非常に重要になります。
運動により、筋肉が発達することで関節への負担を筋肉がクッションとして緩和してくれるからです。
逆に、運動をさせないで筋肉が萎縮してしまうと、クッションとしての機能が期待できず、痛みの管理が成立しなくなってしまいます。
適度な運動は痛みの管理をする上でとても重要な因子の一つです。
※ただし、自力で動けないほどの強い疼痛がある場合は必ず受診して獣医師の指示に従ってください。
治療法③体重管理
→変形性関節症の痛みを抱えている子で、肥満の子は関節への負担を強めてしまいます。
鎮痛を進めながら適正体重まで体重を落とせるよう、ダイエットを実施します。
ただし、肥満を生じるような基礎疾患が疑われる場合は、その検査・治療を並行して行ないます。
治療法④関節機能の維持・回復
→変形性関節症は関節の破壊を伴う病気なので、関節機能が低下していきます。
これを補うために関節成分を含むサプリメントや抗炎症効果が期待できるサプリメントを使用するケースがあります。
いかがでしょうか。
今回は変形性関節症についてのお話をしました。
僕が特にお伝えしたいのは、『年だから』で見逃されている変形性関節症の痛みがとてもとても多いということです。
痛みを抱えながら日常生活を送るのはとてもストレスが多いです。
実際に鎮痛を開始して、動きが劇的に改善した子を見た飼い主さんが、
『今まで痛みを抱えていたんだ』
とそこで初めて気づくケースがとても多く感じています。
また、ワンちゃんと比べてネコちゃんは痛みを見つけるのが難しいです。
ネコちゃんの普段の様子、とくに高所に登る・降りる動作や遊んでいる際の動きなどを動画に撮っておいていただくと、痛みの検出に役立ちます。
今回のお話が、変形性関節症の慢性痛を抱える子を、まずは認識することの手助けになれば幸いです。
文責:獣医師 小川