みなさま、こんにちは。
今回は皮膚生検についてのお話をしていきたいと思います。
以前、ワンちゃんとネコちゃんの腫瘍の記事の際、生検についてのお話をしたとき少し触れたのですが、今回は皮膚生検の適用や実施することで何が分かるのか、という点を掘り下げて解説していきます。
皮膚生検ってなに?
まずは、皮膚生検とはなんでしょうか?
病変の存在する皮膚を様々な方法(後ほど詳しく書きます)で採取し、得られたサンプルを病理組織学的に検査する方法です。
皮表の細胞診とは異なり、組織を丸ごと調べるので表皮・真皮・皮下組織の格層でどんなことが起こっているか、どこにどんな病変があってどんなふうに広がっているのか、などが分かります。
皮膚生検はどんなときに行うの?
では、どんなときに皮膚生検を行うのでしょう?
皮膚に病変がある症例に対し、全てで皮膚生検を行うわけではありません。
明確な基準が定められているわけではないのですが、僕は次のような場合に皮膚生検を提案しています。
- 感染症を疑い標準治療を行うが病変に改善がない場合
- 感染症を疑い標準治療を行い、一度は改善したがすぐに再発する場合
- 感染症、アレルギー性皮膚炎などが除外された上で存在する病変がある場合
- 肉眼所見で特定の自己免疫性疾患や腫瘍を疑う場合
また、皮膚疾患の治療を開始する際は、治療方法や受診のスケジュールをお伝えすると同時に、上記に該当する場合は皮膚生検をしましょうね、と必ずお伝えするようにしています。
皮膚生検はどうやって行うの?
次に、実際に皮膚生検とはどんなものかを解説していきます。
まず、皮膚生検を行う際は必ず、鎮静または麻酔が必要になります。
このことが飼い主さんが皮膚生検に対してハードルを感じるポイントになっているのでは、と考えています。
しかし、先述したように皮膚生検によって得られる情報が診断・治療に結びつくと判断した際は、そのことを飼い主さんにお伝えした上で実施します。
方法は次のような手順です。
①鎮静・麻酔をかけ不動化する
②生検をする部分を決定し局所麻酔をする
③生検トレパンという円形の刃がついた道具で皮膚をくり抜き、採取する
④採取部を縫合する
③についてはトレパンを使うことが大半なのですが、場合によってはメスで切り取ることもあります。
皮膚生検を行う際に気を付けておくことは?
また、皮膚生検を行う際の注意点としては、毛刈りや消毒をしないことが挙げられます。
皮膚で今まさに起こっている病変を評価することが目的なので、毛や皮表のフケなども除去せずに採取します。
さらに、内服薬を飲んでいる場合も注意が必要です。
繰り返しますが、皮膚生検は今まさに皮膚で起こっている病変を調べるための検査です。
よって、内服薬の影響下にある状態では正確な評価が出来ません。
ケースバイケースですが、僕は皮膚生検を行う際、飼い主さんに
「1週間前から内服薬を中止し、皮膚症状がある状態で来てください。」
とお伝えしています。
ここで得られた材料を病理組織診断に提出し、その結果をもって診断・治療を進めていきます。
いかがでしょうか。
今回は皮膚生検についてのお話をしました。
皮表細胞診や掻破検査でも一定の情報は得られるのですが、やはり皮膚生検に進まないと診断がつかないケースも存在します。
特に重篤な自己免疫性疾患や腫瘍を見落としていると、みるみる状態が悪くなってしまうこともあります。
今回のお話で、皮膚生検という検査の意味と重要性が伝われば幸いです。
文責:獣医師 小川