てんかんについて

みなさま、こんにちは。

今回はてんかんについてのお話をしようと思います。

ワンちゃん・ネコちゃんのてんかん

まず、てんかんとはどんな病気でしょうか。

みなさんもなんとなくイメージは湧くかと思いますが、説明するのが難しいかもしれません。

てんかんは次のように定義されます。

『種々の病因に起因する脳の慢性疾患であり、大脳神経細胞の過剰な発射に由来する反復性の発作を主徴とし、変化に富んだ臨床・検査所見の表出を伴うもの』

つまり、てんかんとは様々な原因により大脳神経細胞が異常興奮することで生じるてんかん発作を反復する疾患で、様々な臨床所見を伴うもの、と表現することができます。

てんかん発作ってなに?

次に、てんかん発作とはなんでしょうか。

てんかん発作、または単純に発作という言葉を聞いて、多くの人が

発作=けいれん

というイメージを持たれているかと思います。

確かに、発作の中にはけいれんを伴うものも含まれるので間違いではないのですが、正確でもありません。

発作とは、次のように定義されます。

『脳の異常な電気放電の結果生じる突発性の定期的な運動、感覚、行動、情動、記憶あるいは意識の変化を伴うエピソード』

つまり、発作はけいれんだけではなく、例えば幻覚が見える、同じ行動を繰り返す、といった徴候も発作として現れることがあります。

病因によるワンちゃん・ネコちゃんの2種類のてんかん

では、てんかんにはどのような種類があるでしょうか。

まずは、病因による分類です。

①特発性てんかん

脳に器質的病変が存在せず、発作を起こす原因が遺伝的素因以外に認められないてんかん。初発年齢は1-5歳が多い。

②症候性てんかん

脳に発作の原因になる器質的病変(脳腫瘍、脳炎、脳奇形、脳血管障害etc)がみとめられるてんかん。発症年齢は原因疾患によるので多様である。

発作型によるワンちゃん・ネコちゃんの2種類のてんかん

次に発作型による分類です。

①焦点性発作

発作が臨床的・脳波的に脳の局所から起始する発作。発作症状は発生焦点の担う機能に依存する。発作症状としては、ハエ咬み行動(空中にいる見えないハエを咬む行動が続く)や、体の一部のけいれん・不動化などが挙げられる。

②全般性発作

発作が臨床的・脳波的にも脳全域で一斉に発生する発作。動物で最も一般的に認められるのが全般強直間代性発作(初めは全身の筋肉が突っ張り、次に手足をバタバタさせ、数分以内に終息するタイプ)である。

ワンちゃん・ネコちゃんのてんかんの診断・治療について

次に、診断・治療についてです。

発作を起こした子を診察する際、ほぼ100%が自宅で発作を起こした、という主訴で来院されます。

当たり前といえば当たり前なのですが、実際に発作が継続していないので、僕たちは飼い主さんに問診をしたり、他の疾患(代謝性脳症や心原性失神etc)の鑑別を進めていきます。

ここで特発性てんかん、もしくは症候性てんかんを臨床的に診断した際、抗てんかん薬を用いててんかん発作の治療を開始します。

ただし、発作のコントロールが困難な場合や明らかに器質障害を疑う場合は、MRI検査や脳波検査を優先し診断をつけることもあります。

抗てんかん薬を服用することで発作をコントロール

発作のコントロールは抗てんかん薬の服用で行なわれますが、基本的に生涯飲み続けることになります。

抗てんかん薬の血中濃度や長期服用による副作用を定期的にモニタリングし、用量の調整や多剤併用の必要性を考慮していきます。

また、発作のコントロールをする際の目標は発作を0にすることではありません

もちろん0になってくれるのが理想ではありますが、現実的な目標は投与前よりも発作の頻度が下がることです。

これらを最初に飼い主さんにお伝えした上で、診断・治療を進めていきます。

いかがでしょうか。

今回はてんかんのお話をしました。

細かい分類や症状を掘り下げていくとキリがないので、あくまでてんかんの概要がお伝えできていれば幸いです。

また、以前にも記事にしたのですが、自宅での発作を撮影していただけると診断を進める上で大変助かります

オススメ!写真・動画撮影

てんかんに限らず、自宅で気になる症状や病変を見つけた場合、積極的に撮影していただきたいです。

文責:獣医師 小川